東南アジア版半導体戦争(Chip War)、半導体産業の上流方向への進出めざして激化
東南アジア株式新聞 2024年8月7日
前夜の米国株、今日の日本株が上昇したため、安心感が広がった。
東南アジア版半導体戦争(Chip War)、半導体産業の上流方向への進出めざして激化
(この記事は、4月13日に書いた「東南アジアの半導体産業」に情報を追加したもの)
東南アジア版の半導体戦争(Chip Wars)が激化している。
マレーシアが8月6日、首都近郊に半導体設計ハブを開業した。
マレーシアばかりでなく、東南アジア諸国は、半導体産業の中~下流の工程の企業誘致・育成に力を入れてきた。
日本経済新聞の8月6日の記事:
マレーシア、半導体設計拠点を開業 英アームなど協力
マレーシア政府は6日、首都クアラルンプール近郊に半導体設計の企業やファンドが集積する拠点を開いた。ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームなどが協力する。集積回路(IC)設計に特化して企業を誘致し、東南アジアの半導体設計ハブに育てる。
セランゴール州に「マレーシア半導体ICデザインパーク」を開業した。
「半導体 IC デザイン パーク」はクアラルンプールの南西方向、セランゴール州プチョンにあり、敷地面積は6万平方フィート(約5570平方メートル)だ。
当初の主要テナントは、マレーシアの Maistorage、Skyechip、AppAsia ChipsBank、SensoremTek Sdn Bhdのほか、仏 Weeroc など。
マレーシアの半導体産業育成プロジェクトはこれにとどまらない。
同国北西部のペナン島は「東南アジアのシリコンバレー」と称して、半導体関連企業を誘致している。
プチョンと同じセランゴール州内でも、さらなる産業育成プロジェクトを計画中だ。
The Edge Malaysia の8月6日の記事:
Selangor eyes another chip design park as Puchong site fully occupied(セランゴール州、プチョンの敷地が満床、新たなチップ設計パークを検討)
セランゴール州政府は、東南アジア最大のプチョンに新たに開設された施設が満床になったため、サイバージャヤに2つ目のチップ設計パークを開発することを検討している。
セランゴール情報技術デジタル経済公社(Sidec)の最高経営責任者であるヨン・カイ・ピン氏は、セランゴールのエンジニアを増やすためにサイバージャヤにもう1つの集積回路設計パークを開発する計画だと述べた。
(中略)
「来年のおそらく半ばまでに(第2パークを)オープンしたい」とヨン氏は火曜日のプチョンパークの開所式で The Edge に語った。
シンガポールの The Business Times が「Chip Wars」と題して、東南アジア諸国の半導体産業の記事を掲載している。
その1つ、The Business Times の8月6日の記事:
Chip Wars: South-east Asia’s semiconductor surge amid US-China rift(チップ戦争:米中対立の中、東南アジアの半導体が急増)
この記事では、各国の半導体産業のデータも紹介している。それによると、グローバルの IC 輸出シェアは以下の通り。
シンガポール:8.5%
マレーシア:8.2%
ベトナム:1.8%
タイ:1.5%
フィリピン:3.4%
インドネシア:0.06%
東南アジアの半導体産業(暫定版)
東南アジア株式新聞 2024年4月13日
東南アジア株式のニュースを見ていると、半導体がテーマになることが多い。
AIブームにひっかけてとか、サプライチェーンの問題が出たとき、などだ。
さしあたって、シンガポールとマレーシアの半導体関連銘柄についてまとめてみようとしてみたが、簡単にはいかなかった。
ネット検索した。わりと新しい記事として、よくまとまっていたのは:
The 5 local semiconductor players in Singapore and Malaysia
2023年11月2日付けで、Kevin Khaw Khai Sheng さんが書いている。
そのリポートによると、半導体産業を上・中・下流に分けた場合、シンガポールとマレーシアはほとんど下流(downstream)に集中しているそうだ。
下流工程の例は、ATE(Automatic Test Equipment)とOSAT(Outsourced Semiconductor Asembly and Test)。
ATE プレーヤー:
UMS Holdings(SGX:558)
ViTrox(Bursa:0097)
OSAT プレーヤー:
Inari Amerton(Bursa:0166)
MPI(Bursa:3867)
AEM Holdings(SGX:AWX)
これらの銘柄の値動きを見ると、過去1年は上昇基調のものが多かった。
SGXとBursaでは、半導体がテーマに基づく買いがよく入っていると見てよいだろう。
シンガポールとマレーシアにとって、半導体テーマは上場銘柄だけに影響するわけではない。むしろ、それぞれの国のマクロ景気への影響が意識される。
両国とも、外国の半導体メーカーの誘致に熱心で、かなり成功しているからだ。
以下、Gemini に両国政府の外国半導体メーカー誘致についてまとめてもらった。
シンガポールとマレーシアにおける外国半導体メーカー誘致
シンガポール
シンガポール政府は、外国半導体メーカーの誘致に積極的に取り組んでおり、一定の成功を収めています。主な誘致策は以下の通りです。
財政支援:政府は、投資家に対して税制優遇や助成金などの財政支援を提供しています。
インフラ整備:政府は、半導体製造に必要なインフラ、 such as 水道や電力、を整備しています。
人材育成:政府は、大学や専門学校で半導体関連の人材を育成しています。
これらの誘致策により、近年、シンガポールには多くの外国半導体メーカーが進出しています。代表的な企業としては、インテル、グローバルファウンドリーズ、TSMCなどがあります。
マレーシア
マレーシア政府も、外国半導体メーカーの誘致に力を入れています。主な誘致策は以下の通りです。
特別経済区:政府は、半導体製造に特化した特別経済区を設置しています。
低廉な労働力:マレーシアは、比較的低廉な労働力を持っています。
安定した政治情勢:マレーシアは、東南アジアの中では比較的政治情勢が安定しています。
これらの誘致策により、近年、マレーシアにも多くの外国半導体メーカーが進出しています。代表的な企業としては、ローム、マイクロンテクノロジー、JABIL、ルネサスなどがあります。
課題
シンガポールとマレーシアは、外国半導体メーカーの誘致に成功しているものの、いくつかの課題も抱えています。
人材不足:半導体製造には高度な技術が必要とされますが、両国共に人材不足が課題となっています。
競争激化:中国やベトナムなど、他の東南アジア諸国も半導体産業への誘致を積極的に進めており、競争が激化しています。
コスト上昇:原材料価格や人件費の上昇により、製造コストが上昇しています。
シンガポールとマレーシア以外にも、東南アジア諸国では半導体産業の育成に力を入れている国が増えています。以下に、代表的な国の政策を紹介します。
ベトナム
政府は、2020年に「国家半導体戦略」を策定し、2030年までに半導体産業の売上高を100億米ドルに達することを目標としています。
主な政策は以下の通りです。
外国企業への投資優遇措置
研究開発への支援
人材育成
タイ
政府は、2021年に「東部経済回廊開発計画」を策定し、東部経済回廊に半導体産業クラスターを形成することを目指しています。
主な政策は以下の通りです。
特別経済区の設置
税制優遇措置
インフラ整備
インドネシア
政府は、2022年に「国家半導体戦略」を策定し、2025年までに国内に半導体製造工場を誘致することを目標としています。
主な政策は以下の通りです。
外国企業への投資優遇措置
研究開発への支援
人材育成
これらの国々は、シンガポールやマレーシアと比べて、人件費が低廉であること、豊富な労働力があることなどの強みを持っています。
一方、課題としては、インフラ整備が遅れていること、人材不足が深刻であることなどが挙げられます。
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