[番外編] 8月19日に高速で進んだ円高の謎(ドル円が147円台から145円台へ)

 

東南アジア株式新聞 2024年8月19日


シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3355.56

+0.08%

1648.70

+1.53%

7466.83

+0.47%

1323.38

+1.56%

17569.57

+0.80%

[番外編] 8月19日に高速で進んだ円高の謎(ドル円が147円台から145円台へ)

週明け月曜日の8月19日、東南アジア株は好調だった

シンガポール STI指数は5日続伸、マレーシア KLCI指数は44カ月ぶりの高値となった。

タイSET指数はぺートンタン新首相へのご祝儀相場だろうか。

同じ日、アジアで断トツに目立ったのは、円と日本株だった。



日本経済新聞 8月19日14時台の記事:

外為14時 円相場、145円台に上昇 米雇用の大幅下方修正観測


19日午後の東京外国為替市場で円相場が上げ幅を拡大した。14時時点は1ドル=146円26〜28銭と前週末17時時点と比べて2円77銭の円高・ドル安で、14時前には一時145円87銭近辺まで買われた。14日以来の高値となった。過去の米雇用統計が改定により大幅に下方修正となるとの観測が一部で伝わり、ドル売りが膨らんだ。

  
ドル円の土日を挟んだ5日間(2024年8月19日、Google Financeより)
ドル円の土日を挟んだ5日間(Google Financeより)

この影響は日本株に大きく出た。

日経の同日、市場クローズ後の記事:

日経平均6日ぶり反落 終値674円安の3万7388円


19日の東京株式市場で日経平均株価は6営業日ぶりに反落し、終値は前週末に比べ674円05銭(1.77%)安の3万7388円62銭だった。外国為替市場での円高・ドル安進行を背景に海外短期筋などからリスク回避目的の売りが出て、日経平均の下げ幅は一時700円を超えた。東証プライム市場の値下がり銘柄数は8割を超えるなど、幅広い銘柄で売りが優勢となった。




しかし、「過去の米雇用統計が改定により大幅に下方修正となるとの観測が一部で伝わり、ドル売りが膨らんだ」が円高の主な原因だっただろうか?

日米金利差が縮小しても、直接、円高につながるロジックはない


米雇用統計が下方修正➡米国に景気後退懸念➡米利下げ早まる➡日米金利差が縮小

そんな連想からドル売り・円買いが進んだという説明だ。


金利差がある場合、高金利通貨側に投資して運用益を稼ぐ。

金利差が縮まると、両側の金融機関に支払う手数料によって利益が出なくなるため、円➔ドルの流れは止まる。

しかし、その後も、円よりドルのほうが金利が高いのだから、ドル保有者が円資産へ投資する動きは生じない。

ドル円レートは安定するかも、と期待できるが、日米金利差縮小は別に積極的に円を買う理由にはならない。


円キャリー解消が進んでいるのだとすると、円売りが進む可能性がある


円キャリーは、外国人投資家が低金利の円を借りて、何かに高い利回りが取れる資産に投資することだ。

日本株市場が高い利回りを取れると予想する投資家であれば、日本株が投資先のこともある。


円キャリーを解消する、すなわち、借りた円を返済する。

外国人投資家がそうした行動を取ると、たとえば、日本株投資でかせいだ日本円から返済し、残りを外貨に戻す、と考えるのが自然だ。

この結果、円売りが起きる。

円安に向かってもおかしくない。


儲からないで日本市場から撤退するなら、余分に日本円を作って返済する必要がある。

また、円を借りて日本以外の資産に投資していたら、事態は複雑だ。

米株に投資していたのを手仕舞って、もうけたドルから円の借金を返済(ドル売り・円買い)のパターンもある。

円キャリー解消で円買い需要が盛り上がるというロジックの裏には、このパターンがある。

セブン買収提案ニュースの影響である説


Xでおもしろい説を見つけた。

外為どっとこむ総研の神田卓也氏が「円高材料としてはこちらかな」と次の日経の記事をRTした。


日本経済新聞8月19日13時台の記事:

セブン&アイに買収提案 カナダのコンビニ大手


神田氏はさらに、「5兆円規模らしいので介入1個分の円買い」とコメント追加して、上記投稿をRTした。


(これは、カナダの会社が買収費用の円買いをしたという意味ではない。やがて5兆円規模の円買いが起きると予想して、安い円を仕入れた投資家が多かっただろうということだ。)


実際の外為市場参加者の行動の理由は不明だが、日米金利差縮小よりよほど説得力がある。



関連記事:マレーシア、インドネシアの好調な株式市場に脚光、経済成長と対ドルレート復調が支え

コメント

このブログの人気の投稿

建設途上で破産したニセコ高級ホテル La Plume、アジア系資本とは

2025年 ASEAN議長国としてのマレーシア

ペイシャンス・キャピタル・グループ(Patience Capital Group)、妙高でリゾート開発を進めるシンガポールの投資会社