タイ憲法裁判所がセター首相に解任判決、国民は給付金の行方に不安
東南アジア株式新聞 2024年8月15日
タイ憲法裁判所がセター首相に解任判決、国民は給付金の行方に不安
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| 首相でなくなったセター氏が15日にX投稿した「新プロフィール写真」 |
タイの（国軍の影響下にある）憲法裁判所は14日、セター・タヴィシン首相に解職命令を下した。セター氏は同日、失職した。
首相府相に任命したピチット氏には犯罪歴があり、セター氏に任命責任があると判断された。判決は、（セター氏の背後にいる）タクシン元首相の影響力を抑えたい国軍の意向が働いたと見られている。
14日、ニュースが伝わった後、タイ証券取引所のSET指数は下落。
SET指数は15日も下落から始まり、後半盛り返したものの、前日比マイナスで取引を終えた。
セター氏の首相任期は2023年8月23日に始まったため、もう少しで1年となるはずだった。
その間、景気は若干弱めで推移し、セター氏は積極策を打ち出していたが、実現したものは少なかった。
国民の間では、特に、デジタルウォレット給付金政策の行方に不安が広がっている。
タイの英字紙 Bangkok Post は、8月15日の社説：Srettha out, what’s next?（セター去り、次は何が？）で、次のように書いた。
首相の不適格判決は、投資家がタイの政治的安定性を考慮する可能性が高いため、タイの評判にとって良い兆候ではない。仕事中毒で精力的でビジネスセンスのあるセター氏がいなければ、疑問が生じる。
そして、疑問が生じている問題として、以下のような項目を挙げた。
5000億バーツのデジタルウォレット計画
海外で外国人投資家に約束したサザンランドブリッジのプロジェクト
最低賃金の方向性
カジノ構想
（注：サザンランドブリッジは、タイ領マレー半島部に東西に抜ける90キロメートルの巨大陸橋を建設し、シンガポール・マレーシアを経由しない交易路とする構想だ）
デジタルウォレット給付金計画を継続すると貢献党は言うけれど
特に話題になっているのは、多くの国民から待望されているデジタルウォレットを使った給付金の計画だ。
セター氏が属している貢献党の議員たちは、新政権でもこの計画を継続すると口約束していると、15日に報じられている。
デジタルウォレット計画では、全国で推定5,000万人に1万バーツを配布する。
1万バーツは、日本円（今日のレート）で4万2000円ほどだ。
7月31日、下院がデジタルウォレット給付金の一部に充てる1220億バーツの予算増額を求める補足法案を多数決で可決した。
しかし、政府内の委員会や経営者団体から反対の声が上がっている。
財政が悪化する可能性は、アジア新興国では通貨危機の悪夢が蘇る。
14日の Bangkok Post は、Handout could trigger fiscal crisis（給付金は財政危機のトリガーとなりうる）と題した記事を書き、反対意見や懸念の声を紹介している。
たとえば、タイ貿易産業雇用者連盟の副会長タニット・ソラット氏の意見を書いている。
「政府が国庫を補充するためにどのように収入を生み出すのか、私にはわからない」
「当局は受給者にお金を配る方法を再考すべきだ。徐々にお金を分配し、受給資格のある受給者の数を減らすべきだ」
また、この記事では、公的債務のGDP比率にも言及している。
2024年から2029年までの中期財政枠組みによると、公的債務対GDP比は2024年度に65.7%、2027年に68.9%でピークを迎え、2029年には68.1%に達すると予想されている。
タイでは、この数字が70％を超さないように財政運営がなされている。
タイ経済は2024年前半、景気拡大に勢いがないが悪いわけでもない、ぱっとしない状態が続いている。
タイ中央銀行（BOT）のデータによると、
製造業生産指数（MPI）は第1四半期 -3.6％、第2四半期 -0.3％と、少し改善傾向にある。
国際観光客数は、第1四半期 937万人（前年比43.5％増）、第2四半期 813万人（前年比26.3％増）と、やや増加速度が減速したものの、前年比増加が続いている。
株式市場のSET指数はこの１年、なだらかに下落している。
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| SET指数の1年間（SET公式サイトより） |
8月16日追記：
新首相に、タクシン元首相の次女、ぺートンタン・チナワット氏（37歳）が選出された。
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