タイ政権、景気浮揚のため中央銀行(BOT)に圧力強める、BOTは通貨不安を抑止
タイ政権、景気浮揚のため中央銀行に圧力強める
セター首相の政策でSET指数の低迷を止められるか
東南アジア株式新聞 2024年5月6日
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SETのこの1年(Yahoo Financeより) |
最近、タイのセター政権が中央銀行(BOT)に利下げするよう圧力を強めている。
景気に力強さがない。タイ経済は2023年に1.9%成長にとどまった。
2024年は3%台成長の予想もあるが、SET指数が示している通り、景気の先行指標とも言われる株価が上昇軌道に乗るモメンタムがなかなか現れない。
BOTは、2022年8月から政策金利を0.5%ずつ段階的に引き上げており、現在2.5%となっている。
4月10日の金融政策委員会でも2.5%維持を決めた。
「委員会の大多数は、現在の政策金利はマクロ金融の安定を守るのに役立っており、構造的障害の解決に対する金融政策の有効性は限定的であると考えている。」
Monetary Policy Committee’s Decision 2/2024
近頃見つけたニュース記事を2つほど。
The Nation Thailandの5月3日の記事:
PM takes swipe at BOT, as commercial banks reduce lending rates
「セター・タビシン首相は金曜日、タイ貢献党のイベントで中央銀行総裁を激しく非難し、中央銀行は国民に対する責任を忘れるべきではないと述べた。
10カ月前の政権発足以来の政府の成果を列挙する演説の中で、借り手の負担を軽減するために国内の大手商業銀行4行に貸出金利の引き下げを促すことに政権が成功したと指摘した。
首相は与党本部で<タイ中銀総裁は政府からの独立を主張しているが、国民の苦しみ(に対する責任)から解放されているわけではない>と述べた。」
CNAの5月3日の記事:
Daughter of Thai ex-PM Thaksin calls central bank independence an 'obstacle'
「タイ政界で影響力のあるタクシン元首相の娘は5月3日、経済問題を解決する上で中央銀行の独立性が<障害>になっていると述べた。金利を巡る論争の最新の射撃だ。
与党タイ貢献党のペトンターン・チナワット党首は、昨年以来、セター・タビシン首相と利下げ圧力に屈することを拒否している中央銀行との間の意見の相違について意見を述べていた。」
ところで、タイの政策金利2.5%が適正かどうか。
周辺の経済を見ても、(シンガポールに政策金利はなく、)マレーシアが3.0%、ベトナムがディスカウントレート3.0%などだ。
2023年のGDP成長率が、マレーシア 3.7%成長、ベトナム5.0%成長と、タイ(1.9%)より高かったのに加え、現在のインフレもこれらの国の方がタイより高めになっている。
これだけだと、首相や与党党首の主張のほうが説得力があるように見える。
セター首相の給付金政策は株価も上げるか?
5月6日 The Star の記事(元はロイター電)
Thai inflation rate positive in April, still well below central bank target
「公式データによると、タイの総合インフレ率は4月に7カ月ぶりに上昇したが、依然として中銀の目標範囲である1─3%を12カ月連続で下回っている。
商務省によると、4月の消費者物価指数(CPI)は前月の前年同月比0.47%低下の後、前年同月比0.19%上昇した。」
利下げをしないBOTが重視しているのは、目の前のインフレ抑制ではない。
少し将来のことのようだ。
4月23日のロイター電:
Thailand's $13.5 bln household stimulus plan gets cabinet approval
(タイの135億ドルの家計刺激策が閣議承認)
「セター・タビシン首相は、タイの5,000億バーツ(135億1,000万ドル)の景気刺激政策が火曜日に閣議の承認を得たと述べた。与党タイ貢献党の看板政策に対するハードルをクリアした。
この給付金は、5,000万人のタイ人に1万バーツ(2億7,020ドル)を6か月間にわたって地元コミュニティで使えるようにするものである。 家計債務の高騰に苦しむ東南アジア第2位の経済圏の成長を促すことを目指している。」
「同政策は財政的に無責任だという元中央銀行総裁2人を含むエコノミストや専門家からの批判を、政権は拒否したことになる。」
同記事によれば、計画の実施時期は2024年後半となっている。
給付金がバラまかれれば、景気浮揚の効果はあるだろう。
SET指数も上昇するかもしれない。
しかし、財政悪化も伴う。
最近、インドネシア、ベトナム、日本などが自国の通貨の価値を守るためドル売り介入をした。
タイバーツは今のところ安定を失っていないが、バラまき政策が為替・金融市場の不安定期にぶつかれば、通貨弱体国に仲間入りする可能性もある。
そのとき、SET指数は再び低迷するかもしれない。
BOTの慎重姿勢にも理由はあるのだ。
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