タイが新しい金融ビジネス法を作成中、金融センターをめざして

東南アジア株式新聞 2024年7月23日

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

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香港

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タイが新しい金融ビジネス法を作成中、金融センターをめざして


タイが世界的な金融センターになることを目指して、新たな金融ビジネス法を作ろうとしている。

同国の金融ビジネスに外資を誘致するのが狙いだ。

東南アジアで「世界の金融センター」と聞けば、シンガポールと香港の競争を多くの人が思い浮かべるだろう。

範囲をアジアまで広げれば、東京や上海もその競争に参加している。

他にもライバルは多く、タイ・バンコクがどこまで健闘できるか。課題は多い。



マレーシア The Star の7月21日の記事(中身はロイター電):

Thailand plans new financial business law to attract funds, official says(タイは外資を誘致するため新しい金融ビジネス法を作成中、政府高官)


タイは、外資を誘致し、金融分野への投資を促進するため、新たな金融ビジネス法を導入する予定であると、財務副大臣が金曜日(7月19日)に語った。

この法律は、タイが世界金融センターになるという目標を支援するため、主要な金融分野の規制設定とライセンス発行を担当する「ワンストップ機関」を創設すると、パオプーム・ロジャナサクル氏はビジネスイベントで述べた。

主要分野は銀行部門、証券、デリバティブ、デジタル資産、保険であり、政府は今年後半に議会に法案を提出する予定だ、と言う。



同じイベントを取材したシンガポールの保険業界メディア、Asia Insurance Review の7月23日の記事:

Government launches initiative to develop Thailand into global financial hub

(政府はタイを世界金融の中心地に発展させる計画を開始)


パオプーム・ロジャナサクル財務副大臣は、採用される戦略は金融事業の規制制度を改革し、新しい形のインセンティブを導入し、事業運営に有利な金融エコシステムを強化することを目指していると述べた。

この取り組みは、次の3つの重要な要素によって支えられる。

1) 将来を見据えた規制: 財務省は、柔軟で透明性があり、事業運営に有利な法律を導入する必要性を強調している。

2) 次世代のインセンティブ: 目的は、タイを金融機関にとって魅力的な目的地として発展させ、就労ビザ、税制優遇措置、助成金などのその他のインセンティブプログラムによって外国企業の事業運営を促進することである。

3) 将来のエコシステム: 金融ビジネスを促進するために高度で透明性の高い法的枠組みが開発されるとともに、ビジネスの成長と生活の質の向上を支援する近代的なインフラにも重点が置かれます。



前の記事にある通り「今年後半に法案提出」ということなので、詳細が発表されれば、この記事を更新したい。



東南アジア地域だけでも金融センター競争は激しい

外資の金融事業者を引きつける金融センターを作る試みはタイの周囲に多い。


隣国のマレーシアは、クアラルンプール中心部に TRX(トゥン・ラザク・エクスチェンジ)という国際金融センター特区を設けている。

TRXには、証券取引所のほか、HSBCやプルデンシャルなどのマレーシア本社が入居しており、金融センター地区の形にはなっている。


インドネシアの国営アンタラ通信の7月17日の記事:Jokowi, MBZ discuss financial center in Indonesia's Nusantara(ジョコウィ、MBZ、インドネシア諸島の金融センターについて協議)によると、インドネシアは建設中の新都ヌサンタラに金融センターを設けるつもりだ。

ジョコ大統領が、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザイド・アル・ナヒヤーン大統領と話し、この件で両国が協力することで合意した、という記事だ。


東南アジアにあまり関心のない人なら、「タイばかりか、マレーシア、インドネシアまで金融センター構想? シンガポールに勝てるわけない」という感想を持つかもしれない。

しかし、地域最大にならなくても金融センターとして認知され、ある程度の外資金融を誘致することは可能だ。

それに、これら3カ国の首都(インドネシアは現首都ジャカルタ)はすでに世界的な大都市で、グローバル大企業が進出している。



キプロスに拠点を置く外為投資メディア Forexlive は7月3日に、Top 5 Financial Centers in Southeast Asia(東南アジア金融センターの5大都市)と題した教育目的の記事を投稿している。

5大都市には、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタも含まれている。


5大都市の特徴をその記事から抜き出すと以下の通り。


  1. シンガポール:「東南アジアと世界を代表する金融ハブ」「政策と優れた教育システムのおかげで、シンガポールには熟練した労働人口、起業家、外国為替ブローカーが集まっている」

  2. 香港:「香港は東南アジアと多くの経済的交流があり、地域の活動に大きな影響を与えている。香港証券取引所(HKEX)は世界最大の株式市場の1つであることを誇り、東南アジアの経済と金融の能力を高めている」

  3. クアラルンプール:「クアラルンプールはイスラム金融が主流であり、さまざまなシャリア準拠の金融商品を提供している。政府は、経済成長を促進する支援的な規制環境を提供している」

  4. ジャカルタ:「ジャカルタの金融市場は、中流階級の住宅の繁栄と経済政策の恩恵を受けている。人口の多さがインドネシアの金融成功の基盤だ」

  5. バンコク:「観光地としての魅力は、多額の外国投資と収益を引き付け、それが金融部門の成長を促す。安定した金融政策と財政政策は、企業と投資家にとって好ましい環境を促進する上で重要な役割を果たしてきた。」



金融ビジネスを誘致するには、その国の金融市場の規模だけでなく、都市の魅力も重要になる。金融ビジネスのプロたちが住みたくない街では、彼らが働く企業も引き寄せることができない。

駐在や観光に人気のあるバンコクも金融センターとして成長する可能性はある。


その一方で、国や都市が金融センターとしての実力と評価を上げていく道のりは楽ではないのも事実だ。

日本政府や東京都は、東京を世界的な国際金融都市にするべく長年に渡って努力してきており、そこそこ上位と評価されていが、トップ争いをするほどの評価を得たことはない。


ロンドン本拠のシンクタンク、Z/Yen が作成している金融センターのランキング「グローバル金融センター・インデックス(GFCI)」では現在、バンコクは93位だ。

GFCI 35 Rank - Long Finance


東南アジア都市と香港を抜き出すと以下の通り。()内は Ratings。


3位.シンガポール(742)

4位.香港(741)

77位.クアラルンプール(667)

93位.バンコク(648)

102位.ジャカルタ(630)


他の都市を見ると、

1位.ニューヨーク(764)

2位.ロンドン(747)

ちなみに東京は、2020年に3位になったこともあるが、現在は19位(725)だ。


Ratings(点数)は、通信インフラや政府の効率・透明性などについての145種類の比較可能なデータとオンラインのアンケート調査から算出されている。

今回のタイの試みのように、政府が金融事業者が活動しやすい法規制を作ることも(参照データの改善やアンケートの高評価を通じて)点数アップの一助となると見られる。


(補足:GFCIについて)私が知る限り、金融センターを対象にランキングを算出し続けているのはGFCIだけだ。

ランキング上位については、(厳密な順位はともかく)その都市の金融ビジネスが繁栄しているかどうかの指標にはなっていると思う。




関連記事:マレーシアとタイがBRICS加盟へ、どんな狙いがあるのか?

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