アジアPE、2024年は資金調達に依然苦戦:ベインのアジア太平洋PEリポート 2025年版

 

東南アジア株式新聞 2025年3月25日

アジアPE、2024年は資金調達に依然苦戦:ベインのアジア太平洋PEリポート 2025年版


ベイン&カンパニーが3月25日、PEリポートのアジア太平洋版「Asia-Pacific Private Equity Report 2025」を発表した。

アジア太平洋のプライベート・エクイティ・ファンドは、昨年も前年に引き続き、資金調達とエグジット(投資の出口)に苦労していた。

     
ベインのアジア太平洋PEリポート2025年版の表紙(2025年3月25日)
ベインのアジア太平洋PEリポート2025年版の表紙



3月25日発表:

Asia-Pacific Private Equity Report 2025 | Bain & Company

ほとんどの市場は回復の兆しを見せたが、資金調達は依然として急落したまま


  • アジア太平洋地域の取引額は2024年に11%増加し、中国を除くすべての国でエグジット額は上昇したが、資金調達は急激に減少した。

  • 2024年にこの地域で最も好成績を収めたのはインドで、取引額と件数の両方で2桁の成長を遂げた唯一の国だった。

  • 世界的なプライベートエクイティファンドは、価値創造に重点を置くために、アジア太平洋地域でポートフォリオ管理チームを拡大している。

  • カーブアウトは増加しているが、高いリターンをもたらすことは困難だ。大手GPは、カーブアウトを強力なパフォーマンスに変えるため、確固とした価値創造計画に依存している。





2024年PE市場で最も悪いニュースは、「資金調達が急激に減少した」ことだろう。


資金調達:10年ぶりの低水準

3年連続で、新規にファンド(人民元ファンドを除く)レイズする投資家は引き続き大きな課題に直面しています。2024年に調達されたアジア太平洋地域に焦点を当てたファンドの価値は、10年ぶりの低水準となる740億ドルに落ち込み、前年比20%以上減少し、過去5年間の平均より43%低下しました。


アジア太平洋への配分を縮小しているLP投資家は、実績のあるグローバルファンドと地域ファンドを選ぶけいこうが強まった。

グローバルファンドのCVCのアジアVIファンド(68億ドル)、TPGのアジアVIIIファンド(53億ドル)、アジア専門ファンドであるPAGのアジアIVファンド(40億ドル)がファンドレイズの代表例となった。


資金集めの最大の障害は、エグジットの減少だ。

良いエグジットがなければ、良い投資リターンがないわけで、機関投資家からさらに投資を集めるのが難しいのは当然のこと。


エグジット:多様なトレンド

アジア太平洋地域の投資家は、エグジット環境を2024年の最大の課題として挙げ、前年の3位から上昇しました。この地域のエグジット総額と件数はほぼ横ばいで、2年間の急激な減少に終止符を打ちました。しかし、グレーターチャイナのエグジット額の急落により、他の国での上昇が覆い隠されました。全体として、アジア太平洋地域のエグジット額は2023年と比較して1%低下しました。


エグジット総額・件数は「急激な減少に終止符」を打ったらしい。大中華圏(中国・香港・台湾)を除くと、「上昇」した。

とはいえ、地域によって、底打ち感の強弱があるようだ。

調子が良かった地域別のコメントを抜き出すと、以下のようになる。

   ☆

インドは、2024年に金額と件数の両面で地域最大のエグジット市場となった。インドのIPOエグジット金額は、活気ある株式市場に支えられ、前年比78%増となった。

   ☆

オーストラリア・ニュージーランドは、160億ドルのAirTrunkのエグジットに支えられ、この地域のエグジット価値で第2位となった。しかし、エグジット数は2023年と比較して5%減少した。

   ☆

韓国と東南アジアは、エグジット数と価値の両方で前年比2桁の成長を達成した。韓国の急成長は、Ecorbit(20億ドル)とGeo-Young(14億ドル)という2つのセカンダリーメガエグジット、つまり10億ドル以上のエグジットによって推進された。東南アジアでは2024年にIPOはなかったが、同じくセカンダリーであったPropertyGuruのエグジットによってエグジット価値が押し上げられた。

   ☆

日本は、アコーディア・ゴルフ、アリナミン製薬、国際電気など、最も多くのメガエグジットを生み出しました。

   ☆

 2024年にこの地域でIPOによる大規模なエグジットが生まれたのは、国際電気の公開市場売却(20億ドル)とSwiggy(14億ドル)のわずか2件で、前年よりも大幅に少ない。




大型案件 2024

上記、地域別コメントに現れた大型案件について振り返っておこう。


  • エアトランク(AirTrunk):データセンター・プラットフォーム会社。ブラックストーン・グループとカナダのCPPインベストメンツが豪州のマッコーリーなどから買収した(9月4日発表)

  • スウィギー(Swiggy):ソフトバンクが支援したインドの料理宅配。11月13日にムンバイのNSE市場に上場した

  • プロパティグル(PropertyGuru):シンガポール拠点の不動産情報アプリ会社で、NYSEに上場していた。EQTが買収して非上場化した(8月16日発表)

  • 国際電気:日本の半導体製造機器メーカー。KKRが43%所有していたが、半分ほど市場で売却した(7月9日報道)

  • アコーディア・ゴルフ:日本のゴルフ場運営の最大手。パチンコ機器の平和がフォートレスから買収した(12月18日発表)

  • アリナミン製薬:日本の製薬会社(元は武田薬品工業の大衆薬子会社)。MBKパートナーズがブラックストーン・グループから買収(7月2日報道)



日本やインドの上場株市場は、2024年は比較的上昇トレンドの時期が長かったため、エグジットの選択肢に恵まれたと言える。

だが、2025年に入ってこれまでのところ、アジアの株式市場は、トランプ関税の影響が読めないことなどから、ぱっとしない(例外的に香港市場がこれまでのところ比較的強気だ)。

良いエグジットのための市場環境が今年現れるかは不明だ。


それでもファンドに集めた資金がある以上、GPはいつかは投資をし、エグジットをしなければならない。


ベインのリポートは大型ファンドが価値創造に注力していることを指摘している。


アジア太平洋地域のポートフォリオの老朽化という課題に対処するため、一部のグローバルファンドマネージャーはポートフォリオ運用チームを拡大しています。アジア太平洋市場で強力なプレゼンスを持つ大手グローバルファンドマネージャーを対象としたベインの調査では、同グループは2024年に同地域のポートフォリオチームの人員を約10%増やすと示されました。

例えば、カーライルは2024年4月、チームを拡大し、日本とアジア太平洋地域におけるカーライルのポートフォリオ運用による価値創造の取り組みを強化するために、新設された日本のグローバルポートフォリオソリューションの責任者に深沢政彦を任命しました。






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