マレーシアに第2の半導体ブームの波が来る、政府が英アームと提携で予言
東南アジア株式新聞 2025年3月7日
マレーシアに第2の半導体ブームの波が来る、政府が英アームと提携で予言
マレーシア政府が英半導体設計会社アームと提携した。
アームは、マレーシアで半導体設計ができる企業と人材を育成することに協力する。
米インテルや独インフィニオンが作った第1の半導体の波。
マレーシアは半導体製造のバックエンドである組み立てとパッケージングで高い評価を得るようになった。
アームとの提携により、第2の波が来るとマレーシア政府は期待している。
第2期のテーマは、フロントエンドである半導体設計の技術力を獲得することだ。
アンワル首相はX投稿で期待を表明した。
「この取り組みを通じて、マレーシアは「マレーシア製」マイクロチップの誕生を目撃することになる。これは、ハイテク分野におけるマレーシア人の能力と革新力を反映する成果である。これは単なる飛躍的な前進ではなく、我が国が半導体産業において世界の超大国と肩を並べる力を持っていることの証明です。
![]() |
アンワル首相のX投稿 |
詳しい現地報道を見ておこう。
The Edge Malaysia の3月5日(水)の記事:
アンワル首相:英アームとの11億リンギット提携はマレーシアの第2の半導体ブームの始まり
マレーシア政府と大手半導体設計会社アーム・ホールディングスとの2億5000万ドル(11億1000万リンギット)規模の提携は、マレーシアの第二の半導体ブームの先駆けとなるだろうと、アンワル・イブラヒム首相は語った。
アンワル氏は、マレーシアは数十年にわたりチップのテストと組み立てというバックエンド企業としての地位を確立してきたが、ソフトバンクグループ傘下のアームの支援を受けて独自のチップ設計能力を開発することで、サプライチェーンのフロントエンドへの飛躍を目指していると語った。
「マレーシアとアームの協力は、第2の半導体の波の始まりを表しています。これは半導体とテクノロジーに対する我々のアプローチの根本的な転換を示しており、我々の未来を決定づけることになる」とアンワル氏は水曜日にマレーシアで行われたシリコンビジョン発表式典での基調講演で述べた。
半導体製造のバックエンドからフロントエンドへの進出。
これが、アンワル首相の言う「第2の半導体の波」であり、「根本的なアプローチの転換」だ。
契約に基づき、アームはマレーシア政府に知的財産(IP)ライセンスとコンピューティング・サブシステム(CSS)を11億1,000万リンギット(10年分割払い)の代価で提供する。さらに、アームは販売されたチップに対してロイヤルティ(特許・著作権使用料)を徴収する。ロイヤルティの詳細は明らかにされていない。
具体的には、アームは以下のことに協力することになっている。
1万人の集積回路(IC)設計エンジニアを育成するトレーニングプログラムの設立
マレーシアの選定された企業にアームの最先端技術とIPポートフォリオへのアクセスを提供
地元で設計された半導体製品の開発を促進
アーム側も、マレーシアの半導体産業育成へ参加することに意義を見出しているようだ。
3月5日のアーム公式サイトのBlog(筆者はアームのチーフ・コマーシャル・オフィサー):
アーム・コンピューティング・プラットフォームがマレーシアのシリコン・ビジョンの中心に
Arm Compute Platform at the Heart of Malaysia’s Silicon Vision
(前略)
半導体エコシステムの中心で独自の役割を果たし、世界で最も普及しているコンピューティング ・プラットフォームを擁するアームは、マレーシア政府によって重要な戦略的 AI テクノロジー パートナーに選ばれました。これは、同国が「シリコン・ビジョン」の実現に向けて世界をリードするAIチップ・エコシステムを構築する上での最初の大きな一歩となる。提携の一環として、アームは 10,000 人の半導体人材をトレーニングし、この地域での AI プロジェクトの推進に不可欠な人材の育成に役立つアーム・テクノロジーの専門知識を身につけさせます。
(中略)
広く使われているアーム・コンピューティング・プラットフォームのパフォーマンス、電力効率、AI 機能を活用し、新しい AI とテクノロジーのスキルと人材を実現することは、どちらもマレーシアのシリコン・ビジョンにとって重要です。このため、アームは新しいパートナーシップの一環として、マレーシアに拠点を置く 10,000 人の半導体人材にアーム・ テクノロジーのトレーニングを提供することを約束しました。この組み合わせは、この地域のテクノロジー企業が、急速に成長し、急速に変化する AI 革命から得られる継続的な機会を捉えるための完璧な基盤を提供します。
(以下略)
「シリコン・ビジョン」って?
探してみると、マレーシア経済省がページを作っていた。
マレーシア経済省のシリコン・ビジョンのページ:
あまり具体的なことは書かれていないが、「半導体の進歩を牽引:概念・IP設計からフルサイクルまで、製造を主導」というのがビジョンのようだ。
![]() |
経済省の公式サイトより |
前述のEdgeの記事で、ラフィジ・ラムリ経済相は、マレーシアがフルサイクルの半導体製造技術を持つまで「5年から7年」と予想している。
関連記事:東南アジア版半導体戦争(Chip War)
コメント
コメントを投稿