「トランプ・スランプ」懸念高まる中、香港株が一人勝ち

 

東南アジア株式新聞 2025年3月8日


「トランプ・スランプ」懸念高まる中、香港株が一人勝ち

トランプ米大統領が関税政策、不法移民の送還、外交などで世界中を揺さぶっている。

特に関税政策では、小出しで、しかも、部分緩和策を追加するなど、世界中の大企業が将来計画を立てるのに苦心している。

株式市場に関して言えば、「トランプ・スランプ」という言葉で株式市場の低迷を心配する声も出てきた。

そんな中で、香港ハンセン指数が年初来20%超の値上がりを示し、一人勝ちしている。


  
香港ハンセン指数が年初来上昇で突出(Google Financeより)



トランプ大統領の政策と発言により、主要な株式市場を慎重さが支配

米経済は力強く、失業率も低めで、2回目のトランプ大統領時代(トランプ2.0)が始まった。

1月20日の就任前から関税政策を何度も公言していたため、米国への輸出の多い企業はある程度準備はしていた。

しかし、蓋を開けてみると、カナダ・メキシコ・中国と相手国をしぼって小出しにし、しかも、1か月延期や適用除外の追加があり、大変わかりにくい。

当然、企業は事業計画を作るのも実行するのも難しい状態。

これまでに2024年12月期の決算発表があったが、投資家はそれを前提に株価を予想できない。


米国メディアは「トランプ・スランプ」という言葉を使い出した。


US News & World Reportの3月4日の記事:

株式市場のトランプ「バンプ(上昇)」がトランプ・スランプに転じる

The Stock Market's Trump ‘Bump’ Turns Into Trump Slump


米株だけでなく、日本株も欧州株も、そして中国本土市場も、利益確定売りや買い控えといった慎重さが支配している。


香港ハンセン指数は年初来で大きく上昇した

香港ハンセン指数は、3月7日時点で24,231.30。

年初(1月2日)に19,623.32だったので、年初来で、4607.98ポイント、約23%も上昇した。


これまで市場で語られた株価値上がりの要因は主に2つだ。

1.中国政府の景気刺激策への期待

2.中国のAIスタートアップ企業「ディープシーク」に見られるハイテク産業への期待


中国政府は、3月5日に開幕した全人代(全国人民代表大会)でも、(2025年に5%成長)目標を達成するのに必要な景気刺激策を実施していく意向を示している。


中国、内需喚起へ「消費」連呼 活動報告で言及5割増


習近平氏「技術革新で生産力発展を」 全人代分科会で


【全人代】中国「適時に利下げ」、金融緩和強調 人民元安ジレンマ - 日本経済新聞


中国経済にとって大きな不安要素は、(トランプ関税よりも、)不動産業界の不良債権問題と消費の不振という国内問題だ。

政府が適切な手を打てば、景気が良くなる可能性はある。


また、1月に世界中で話題になった安上がりなAI「ディープシーク」が中国ハイテク産業への期待を高めた面もある。


アリババ(Alibaba Group Hodings Ltd、HKEX:9988)は、ディープシーク騒動のすぐ後、自社が実用化したAIプラットフォームが米国の競合相手のAIに比べ優れている面をアピールした。

アリババ株は、3月7日時点で140.000。

1月2日に81.300だったので、年初来では58.7ポイント、72%も上昇した。

  
香港のアリババ株の1年間(2025年3月7日、HKEX公式サイトより)
香港のアリババ株の1年間(HKEX公式サイトより)


EV(電気自動車)のBYD(BYD Co. Ltd.、HKEX:1211)株も大きく上昇した。

3月7日終値が355.200。

1月2日終値が258.200。

年初来で、97.000ポイント、37%上昇した。


  
香港のBYD株の1年間(2025年3月7日、HKEX公式サイトより)
香港のBYD株の1年間(HKEX公式サイトより)

Mixueのデビュー成功で、香港市場はIPOでも期待されている

アジアの株式市場で今年最初の大物IPO(新規上場)は、ミルクティーなど飲料スタンドを展開するMixue(ミーシュエ)だった。


3月3日のシドニー発ロイター電:

中国のタピオカティーチェーン「ミーシュエ」初値47%上昇、香港IPO取引量が回復

China bubble tea chain Mixue pops 47% on debut as Hong Kong IPO volumes rebound | Reuters

中国最大のタピオカティー・ドリンクチェーン、ミーシュエ・グループ(2097.HK)の株価は、月曜日の香港証券取引所への上場デビューで47%以上急騰し、香港での新規上場としては2021年以来最も好調なスタートとなった。

安いドリンクと赤いマントをまとったスノーキングのマスコットで知られるミーシュエは、1株当たり202.5香港ドルの固定価格で1700万株を売り出し、新規株式公開で4億4400万ドルを調達した。


Mixue株は、3月3日終値が290.000、
3月7日時点で355.000。上々の出だしだ。
  
香港のMixue株の上場来(2025年3月7日、HKEX公式サイトより)
香港のMixue株の上場来(HKEX公式サイトより)


2024年も、香港市場のIPOは、大陸企業によって盛り上がった。

Mixueの成功で、2025年も、大陸企業の大型IPOに期待が高まった。



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