2025年のアジア経済展望を読む、有望市場はベトナム?マレーシア?インドネシア?
東南アジア株式新聞 2024年12月25日
いつも見ている市場はクリスマス休
2025年のアジア経済展望を読む、有望市場はベトナム?マレーシア?インドネシア?
クリスマス休暇シーズンで休みの市場が多いので、今日は、2025年のアジア経済や金融市場を展望するリポートを読んでみることにした。
東南アジア視点で見れば、米国と中国がとても大きな影響を及ぼす。
トランプ政権は予告通り関税を課すのか、中国景気は力強さを取り戻せるか。
そして、東南アジア企業は成長を続けられるか。
同地域では、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどが注目されているようだ。
まずは、ゴールドマン・サックスのアジア展望。
少し古いが、幅広い問題をカバーしている。
とりあえずの焦点は、米国の関税の中身だ。
ゴールドマン・サックスの11月15日のリポート:
アジアの展望:2025年の見通し – 第2次貿易戦争に向けたポジショニング |Andrew Tilton
Asia Views: 2025 Outlook – Positioning for Trade War Two | Goldman Sachs
1. 昨年のアジア見通しでは、「歴史的に、アジアの経済と市場は、中国の成長が好調でFRBの政策が緩和されていたときに恩恵を受けてきた」と指摘しました。
2024年はどちらも当てはまりません。それでも、この年は中国からの幅広く力強い輸出実績、韓国、台湾、マレーシア、ベトナムを通じたハイテク/半導体輸出の急増、いくつかの新興アジア諸国における健全な国内需要の伸びが特徴的でした。
2025年には中国からのさらなる財政緩和とFRBのさらなる利下げが見込まれますが、明らかな逆風もあります。米国でドナルド・トランプが大統領に2期目に選出されたことを受けて貿易/関税の不確実性が高まり、米ドル高が長引くことで新興アジア諸国の金融緩和が抑制される可能性があります。
2. 2025年には、新興アジア諸国の成長は緩やかに鈍化し、中国では内需へのシフトが進むと予想されますが、一部の先進国市場では回復が見込まれます。
輸出の伸びは地域全体で鈍化する可能性がある。特に中国は、トランプ政権が中国製品の平均関税を20ポイント引き上げると見込まれるためだ。インドは、長期的成長見通しは堅調であるものの、大幅な財政引き締めの真っ最中だ。ASEANはより安定するはずで、ベトナムなどの経済は、米国の関税に直面することなく貿易再配分の恩恵を受けることができれば、減速傾向に逆行する可能性がある。
3. インフレ圧力は低下しており、低い水準にとどまるでしょう。
4. 金融緩和は慎重に進められる可能性が高い(日本を除く)。
5. 関税と政策支援の組み合わせにより、2025年には中国の成長は国内需要(住宅以外)にシフトするでしょう。
6. 日本経済はリフレ実験の重要な段階にある。
7. この地域における小規模な輸出志向型経済は、今年、大きく異なる業績を上げている。
重要な商品輸出国(オーストラリアなど)としての役割、またはハイテク製品への特化(韓国/台湾など)を通じて、中国と差別化された輸出国の見通しが比較的良好であると当社は考えています。低/中技術製造品の重複が多い国(ベトナム、フィリピン、そしてある程度はタイ、マレーシア)は、バランスを取る必要に迫られています。中国からの貿易再配分から利益を得られる可能性もあるが、中国からの輸出によるデフレ商品への圧力が強まることで損害を被る可能性もある。特に米国との二国間貿易黒字がさらに拡大した場合、米国から関税を課されるリスクもある。
8. インド、インドネシア、フィリピンは、人口動態の好条件とさらなる追い上げの可能性により、最も高い成長見通し(今後数年間で5~6.5%)を持っています。
9. 米国の関税はいつ、いくら、どの国に課されるのかが、2025年のアジアにとって最も重要な「既知の未知数」となる。
当社の基本予測では、米国からの中国輸入品に平均 20% の追加関税が課されると想定していますが、他のシナリオも容易に想定できます。
中国と米国の交渉による「合意」2025年にこの結果が出る可能性は低いとみている。
貿易摩擦のエスカレーション おそらく、中国の政策立案者の動機は、エスカレーションを阻止するような形で報復することだろうが、誤算の余地は常に存在する。
広範な地域またはグローバルの関税 世界的な関税は大きなリスク(40%の確率)とみていますが、これは当社の基本想定ではありません。いずれにせよ、中国固有のエスカレーションよりも手続き的に実施に時間がかかる可能性が高いでしょう。
10. 当社の基本市場見通しでは、ほとんどのアジア諸国において短期金利は若干低下するが、長期金利は上昇すると予想しています。
次に、野村グループ。
アジアマクロ展望2025:急流を乗り切る
Asia Macro Outlook 2025: Navigating the Rapids | Nomura Connects
このリポートでは、4つの力に注目している。
トランプノミクス。貿易・関税政策はすぐに実施される可能性が高く、第2四半期から中国からの輸入品に60%、一律10%の関税が課される。アジアにとって、関税と貿易障壁の上昇は輸出の弱まりを意味する。不確実性の高まりと報復合戦は企業投資を遅らせる可能性がある。アジアはまた、米国のターミナルレートの上昇とドル高により、世界的に金融環境が厳しくなる中で乗り切らなければならない。
トランプが米国の二国間貿易赤字の削減に注力する場合、中国、ベトナム、日本、台湾、韓国、インドは米国の貿易赤字の上位10カ国に含まれるため、アジアは攻撃の標的となる。
中国の景気刺激策と過剰生産能力。中国の国内需要の安定化は中立的ですが、米国と欧州からの中国輸入品に対する関税の引き上げは、これらの輸出がアジアの他の地域に向けられる可能性が高いため、マイナスになるでしょう。
半導体景気回復の持続性。中国は半導体の自給自足を強化するよう促されています。半導体輸出の減速と非技術輸出の低迷を考えると、アジアの輸出成長は2025年に減速する可能性が高い。
国内需要によるバッファー。世界貿易の見通しが弱まる中、国内需要のバッファーが強いアジア経済が優位に立つ可能性がある。マレーシアはデータセンター建設ブーム、サプライチェーンの転換、公共インフラプロジェクトが期待でき、フィリピンはインフラ支出が2025年5月に予定されている中間選挙の恩恵を受ける可能性がある。
対照的に、インドでは金融引き締め政策と信用状況の遅れた影響により国内需要が期待外れになる可能性がある。タイと韓国も国内需要の弱さに直面する可能性が高い。
最後にバイサイド、日興アセットマネジメントのリポートでアジア株式市場の見通しを読んでおこう。
アジア株式市場2025年の見通し 「トランプ2.0」だけではない、ファンダメンタルズの変化を促すカタリスト
(本稿は2024年12月5日発行の英語レポート「Asian equity outlook 2025」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。)と書かれているが、もう一つ日本語訳を作るのも時間の無駄なので、日本語版を読むこととする。
といっても、アジアの小型株とASEANの部分だけ。
アジアの小型株:世界の主な成長トレンドの恩恵を受ける見込み
(前略)
世界的にみても、日本を除くアジア地域は小型株における投資機会の中心地となり続けている。過去5年間において新規上場企業の割合が最も高い地域となっており、持続的なリターンをもたらすと期待される長期投資機会が存在することを示している。ただし、アジアの小型株がマクロ経済の先行き不透明感や市場センチメントの低迷などの短期的な逆風に直面していることには注意しておくべきだろう。
アジアの小型株は、高い成長期待と適応力を特徴とする魅力的な投資機会をもたらしている。顕在化しつつあるトレンドを活かせるとともに、先行き不透明な経済情勢を乗り切ることができ、市場において優位な立場にある。苦境に直面する可能性もあるが、長期的に良好なパフォーマンスを達成してきた歴史があることに加え、足元の環境も追い風となっていることから、アジアの小型株は今後も引き続き成長を遂げていくとみられる。2000年以降のアジア小型株のパフォーマンスをざっとみてみると、同期間の半分以上において大型株をアウトパフォームしてきたことがわかる。
分散投資と高成長セクターへのエクスポージャーを求める投資家は、今後のアジア地域の経済環境を形作っていく上で重要な役割を果たすと見込まれるアジア小型株に注目していくとよいだろう。
アセアン地域:各国内の政策がファンダメンタルズのポジティブな変化の原動力に
(前略)
トランプ政権下では、中国企業を含め製造業企業が低コストかつ低関税の生産拠点を求める動きが続き、チャイナ・プラス・ワンの流れが加速することになり、それによってアセアン諸国の大部分、特にベトナムとマレーシアが恩恵を受けるとみられる。
アセアン地域はAIのテーマにも組み込まれている。特にマレーシアでは、データセンター・ブームが進行中だ。これは、発電事業者、建設業者、工業用地所有者、データセンター運営事業者に好影響を及ぼしており、持続的なリターンをもたらすと期待される長期投資機会の範囲が広がっている。
前述のファクターに加え、複数のアセアン諸国の国内政策運営においてもファンダメンタルズの好ましい変化が見受けられる。
マレーシアでは、連立政権の下で政治情勢が比較的安定しており、現政権の任期後半にはより経済成長重視の政策運営が行われると予想される。加えて、シンガポールとの経済連携の強化は、マレーシアの製造業、テクノロジー産業、観光業などの分野にとって追い風になるとみられる。
インドネシアでは、プラボウォ・スビアント政権が、経済成長を押し上げていくために意欲的な計画を打ち出している。主要な政策としては、電気自動車(EV)やコモディティのサプライチェーン川下分野における経済活動の推進継続や、バイオディーゼル混合率の引き上げによる燃料輸入の削減などが挙げられる。
ベトナムでは、新たに就任したトー・ラム共産党書記長がより実利的で景気重視の政策を実施していくと期待されており、前任者によるイデオロギーを重視した中央集権的な統治体制からの脱却が大きく進むとみられる。
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