日本の製造業の海外展開、有望国ランキング10位以内にASEANから5カ国ーー国際協力銀行の調査

 東南アジア株式新聞 2024年12月14日


日本の製造業の海外展開、有望国ランキング10位以内にASEANから5カ国ーー国際協力銀行の調査


日本の製造業企業が今後の海外展開で有望国と見ている国のランキングで、1位はインド、2位ベトナム、3位米国となった、

インドが3年連続トップ、ベトナムも2年連続2位。

前年3位の中国が6位に後退し、3位は米国、4位インドネシア、5位タイが前年から順位を上げた。


ランキングは、国際協力銀行(JBIC)が毎年実施している調査の2024年度版の一部だ。

10位内に、ASEANから5カ国が入った。

(上に挙げた国以外では、8位マレーシア、9位フィリピン)


JBIC 2024年12月12日発表資料より
JBIC発表資料より

 




国際協力銀行の12月12日の発表:


わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告

2024年度海外直接投資アンケート調査結果(第36回)


https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2024/image/000009460.pdf


2024年度海外直接投資アンケート調査(JBIC)
JBIC調査結果の表紙


調査対象は、日本の製造業企業で海外拠点3か所以上(うち生産拠点が1以上)の936社。

回答社数は495社だった。


JBICが結果のポイントとして述べたのは以下の5点。

(1)海外事業を取り巻く環境が不透明な中、今後の海外展開の強化・拡大姿勢が低下するなど、模索が続く

(2)有望国ランキングではインドが3年連続で首位を維持。中国は6位に順位を落とし、有望国としての中国離れが鮮明に

(3)サプライチェーンの見直しが進む。脱中国の動きがある一方で、調達先を中国に広げる企業の動きも

(4)ビジネスの変革に向けた取り組みは米国を中心に、中国、ASEANにも拡がる

(5)脱炭素・循環経済への取り組みが進展。生物多様性や人権問題への対応は取り組みが限定的


これらの内容に興味がある方は上のURLから調査結果を取り出して読んでもらいたい。

 


この記事では、有望国に入ったASEANの国についての記述をもう少し見ておく。

ベトナム(有計画率29.1%) 2年連続の2位も、引き続き有計画率は低い

 • 2年連続の2位となった。有望理由では「現地マーケットの今後の成長性」への期待が広く認識されている。

 • 有計画率は昨年度比2.0ポイント減、上位10か国中で2番目に低い水準。まだイメージ・期待が先行して いる可能性もある。

 • 課題面では、「法制の運用が不透明」が引き続き認識されている。

インドネシア(有計画率23.6%) 比較的堅調な内需に支えられ、得票率が上昇

 • インドネシアは、昨年度比での得票率を0.8ポイント上げた。得票率の増加は3年連続。 有望理由では、「現地マーケットの今後の成長性」の割合が最も大きく、比較的安定し た内需向けの投資が有望視されている。

 • 課題面では、「法制の運用が不透明」を指摘する割合は低下傾向。

タイ(有計画率40.9%) リスク分散拠点として注目が集まるが、労働コストの上昇が課題

 • 有望理由としては、引き続き「現地マーケットの今後の成長性」や「現地マーケットの現状規 模」を評価している企業が多い。

 • 課題面では、「労働コストの上昇」の割合が最も大きい。

マレーシア(有計画率42.3%) 産業高度化を目標に海外投資を積極的に誘致している点に注目

 • 昨年度と比較し て、有望と回答する企業における「電機・電子」の占める割合が増加している(+3.9ポイ ント)。産業高度化のため、半導体やデータセンター関連の事業に国として注力しているこ とが特徴。

 • 課題面では、「労働コストの上昇」「他社との厳しい競争」を挙げる企業が最も多い。

フィリピン(有計画率40.0%) 「安価な労働力」への高評価と「労働コストの上昇」への課題認識が併存

 • 有望理由について は、「現地マーケットの成長性や規模」「安価な労働力」が挙げられているほか、「供給 拠点」として評価する企業の割合が上昇傾向にある。

 • 課題面では、「労働コストの上昇」、「技術職人材の確保が困難」との回答が、昨年より も多く見られた。



有計画率は、調査の趣旨からして企業は3年以内に直接投資の計画があるかどうかを回答したと思われる。

ASEAN勢では、タイ、マレーシア、フィリピンが40%以上となっている。

だが、インドが38.4%であるほかは、米国60.9%、中国41.0%、メキシコ43.2%、ドイツ55.0%と、ASEAN勢より高めの率となっている。


有望と思っても、ASEAN勢には「法制の運用が不透明」という弱点を抱える国がある。

また、「労働コストの上昇」を懸念する声が多い通り、(円安の進展もあり、)ASEAN主要国はもはや労働コストが安い国ではなくなりつつある。






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