トランプ氏がBRICS通貨を作るなと脅迫し、市場や政府から反応・反響が相次ぐーーそもそもBRICS通貨って何?
東南アジア株式新聞 2024年12月3日
強気一色になってきた
トランプ氏がBRICS通貨を作るなと脅迫し、市場や政府から反応・反響が相次ぐーーそもそもBRICS通貨って何?
米国の次期大統領トランプ氏は土曜日、BRICS加盟国に対し、新たな通貨を発行したり、米ドルに代わる別の通貨を支持したりしないことを約束するよう要求し、さもなければ100%の関税に直面すると述べた。
日本経済新聞の12月1日の記事:
トランプ氏、BRICSは「新通貨つくるな」 ドル支持要求 - 日本経済新聞
トランプ次期米大統領は11月30日、中国やインドなど有力新興国で構成するBRICSに対し、ドルの基軸通貨の地位を脅かさないよう求めた。ドルの国際的な地位が低下しているとの危機感を反映したものとみられる。
自身のSNSに「BRICSの新通貨をつくらず、強大なドルに代わるほかの通貨を支持しないと約束するよう要求する。さもなくば100%の関税に直面し、素晴らしい米経済に別れを告げることになるだろう」と投稿した。
これに対し、BRICS側から多様な反応・反響があった。
しかし、そもそもBRICS通貨とは何なのだろうか?
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トランプ氏のXへの投稿 |
脅しの影響とBRICS側の反応
The Star の12月2日の記事(中身はバンコク発ロイター通信):
Emerging Markets -Thai baht loses most among Asian currencies on Trump's BRICS warning | The Star
アジア通貨は月曜日、米国に続いてタイバーツが急落したことで、下落した。ドナルド・トランプ次期大統領はBRICS諸国に対し、新通貨の導入に反対を警告し、新興市場のトレーダーを動揺させた。
タイバーツは0.7%も下落し、11月中旬以来最悪の下げとなった。この日のアジア通貨の中では、これまでのところ最悪の値動きとなっている。
タイバーツの弱さの主因は金価格の下落と、BRICS諸国に対するトランプ氏の警告によるアジア通貨へのマイナス影響で、これがバーツにも影響を及ぼしていると、クルンタイ銀行の市場ストラテジスト、プーン・パニチピブール氏は述べている。
BRICSの主導国の1つ、ロシアは反発した。
モスクワ発ロイター通信 12月2日:
Kremlin says Trump threat to BRICS nations over US dollar will backfire | Reuters
ロシア政府は月曜日、ドナルド・トランプ次期米大統領がBRICS諸国が自国通貨を発行すれば関税を課すと警告したことを受け、米国が各国にドルの使用を強制しようとするいかなる試みも裏目に出るだろうと述べた。
(中略)
トランプ氏の発言について問われたクレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフ氏は、ドルは多くの国にとって準備通貨としての魅力を失いつつあり、その傾向は加速していると述べた。
「貿易や対外経済活動において自国通貨の使用に切り替える国が増えている」とペスコフ氏は記者団に語った。
ワシントンが「経済的力」に訴えて各国にドルの使用を強制すれば、裏目に出るだろうと同氏は予測した。
パートナー候補国マレーシアの、国営ベルナマ通信 12月3日の記事:
Malaysia To Closely Monitor Development Of Trump Tariff Threat On BRICS - Tengku Zafrul
ザフルル投資貿易産業相が、トランプ氏のBRICSへの脅しを注視していくと述べた。
そもそもBRICS通貨とは何なのか?トランプ氏の脅しは有効なのか?
ロイター通信が8月24日に記事にしている。
What is a BRICS currency and is the U.S. dollar in trouble? | Reuters
ブラジルの大統領は水曜日、ドル為替レートの変動に対する脆弱性を軽減する手段として、BRICS諸国が相互の貿易と投資のための共通通貨を創設するよう求めた。
ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領はヨハネスブルグでのBRICS首脳会議でこの提案を行った。
当局者や経済学者は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ間の経済的、政治的、地理的格差を考えると、このようなプロジェクトには困難が伴うと指摘している。
BRICS首脳会議で議題になっているのは、BRICS開発銀行、BRICS通貨基金、決済システムのBRICSペイなどだ。
ユーロのような共通通貨を作る話は始まっていない。
トランプ氏は国際通貨基金(IMF)などに米国が資金拠出するのさえ嫌っており、BRICS独自の開発銀行や通貨基金を心配するとは思えない。
ユーロのような「BRICS通貨」のことをトランプ氏が言ったのであれば、時期尚早というか、的はずれな議論だ。
問題の焦点は、BRICS諸国が脱ドル化をめざしていることにある。
貿易・決済に米ドルを使う量を減らしたい、できれば自国通貨を多く使いたいというのは、BRICS諸国だけでなく、米国以外の国が多かれ少なかれ希望していることだ。
ドル中心の金融システムは、米国だけが有利な条件をもたらしている。
借入コストの低減、より大きな財政赤字の維持能力、為替レートの安定性などだ。
たとえば、国際分散投資と言っても、多くの米国人は全然為替レートを気にしない。
ドルの地平の中で、外国の資産価格が上下しているだけだ。
だが、他の国の投資家は常に自国通貨の対ドル・レートを気にしなければならない。外国の資産を売買するときのドル価格で差益や差損が生じるためだ。
石油や金などの国際商品市場の主要通貨がドルであることも、この米国だけ有利状況を補強している。
トランプ氏の脅しは、脱ドル化を志向する国々を一層焚きつけることになりかねない。
少なくとも現時点ではいらない一言だった。
ドイツのDW 12月2日の記事:
BRICS currency: Is Trump's tariff threat justified? – DW – 12/02/2024
(前略)
しかし、BRICS首脳のレトリックにもかかわらず、通貨提案はほとんど進展していないため、次期大統領はいくぶん早計かもしれない。
実際、月曜日(12月2日)南アフリカ政府は、誤った物語を広めたのは「最近の誤報」のせいだとして、BRICS通貨を創設する計画はないと主張した。同国の国際関係協力省(DIRCO)の広報官クリスピン・フィリ氏は、X(旧Twitter)に投稿した声明で、これまでの議論は、自国通貨を使用してブロック内の貿易を促進することに集中していると述べた。
トランプ氏の脅しは、米国の主要な貿易相手国の一部である世界で最も急成長している経済国との関係を緊張させる可能性がある。また、報復措置の脅威を引き起こす可能性もある。
トランプ米国とBRICS陣営の軋轢から今後も目を離せない。
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