東南アジアでもプライベート・クレジット投資が熱くなってきた
東南アジア株式新聞 2024年12月6日
東南アジアでもプライベート・クレジット投資が熱くなってきた
12月6日に東南アジアでプライベート・クレジット専門ファンド設立のニュースが相次いだ。
シンガポールの政府系ファンド、テマセクがプラットフォームを作ったと発表。
また、東南アジアのPEファーム、ナビス・キャピタル・パートナーズの新ファンドも同じ分野のニュースだった。
プライベート・クレジット(良い訳ではないが、私募信用)とほぼ同じ金融活動を指す言葉として、プライベート・デット(私募債権)やダイレクト・レンディング(直接貸付)がある。
ハイイールド債投資やディストレスト(破綻債権)投資も含める場合もある。
事業形態としては、多くの場合、そうした投資活動を行うことを明記した専門ファンドを設定し、投資家から資金コミットメントを集める。
クレジットと言っているからには、ローン(融資)やボンド(債券)と類似の契約(金利と貸付条件)で、大口資金を必要とする企業などに資金を提供する。
プライベート・クレジットの需要が大きいのは、通常の銀行・投資銀行がローンやボンドで対応しない資金需要が増えているため。2008年世界金融危機以降、その需要が拡大していると言われてきた。
銀行が手を出さないほど高リスク・高リターンの世界だとも言える。
東南アジアでもプライベート・クレジット熱が盛り上がってきたようだ。
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テマセクの発表文 |
テマセクの12月6日の発表:
テマセク、自家プライベート・クレジット・プラットフォームを設立
Temasek establishes wholly-owned private credit platform
テマセクは本日、100%所有のプライベート・クレジット・プラットフォームの設立を発表しました。
テマセクは 10 年以上にわたりクレジット ファンドに投資してきました。2016 年、テマセクはクレジットおよびハイブリッド ソリューション チームを編成し、直接投資とファンド投資を拡大してプライベート クレジット分野でより幅広い機会を獲得しました。テマセクは、回復力のある将来を見据えたポートフォリオの構築を継続する中で、クレジットおよびハイブリッド・ソリューション・ポートフォリオの規模を拡大し、グローバルなプライベート・クレジットの機会を獲得する能力を強化するための専用プラットフォームを立ち上げました。これは、アジアでプライベート・クレジット・ソリューションを提供する SeaTown Holdings International を含むテマセクの資産管理事業である Seviora Group に加えて行われます。
このプラットフォームの初期ポートフォリオは、直接投資とクレジット・ファンドで構成され、約 100 億Sドルになります。このポートフォリオは、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールのオフィスに勤務する、テマセクのクレジットおよびハイブリッド・ソリューション・チームから異動した約 15 人の経験豊富なクレジット投資専門家のチームによって管理されます。このプラットフォームは、2016年からテマセクのクレジット&ハイブリッドソリューション部門の責任者を務めているニコラス・デベテンコートCEOが率いる。
これで全文だ。
テマセクの純ポートフォリオ価値は 3月末時点で 389 billion Sドルなので、100億=10billion Sドルはわずかな割合にすぎない。
発表文で述べている通り、これまでもクレジット投資の実績があり、プライベート・クレジット専門プラットフォーム(ファンドとチーム)を作って投資していきますよ、と言っているだけだとも言える。
だが、プライベート・クレジットにこれまでよりも注力していくことは間違いない。
もう1つ、同じ日にプライベート・クレジットのニュースを見た。
Bloomberg の12月6日の記事:
ナビス・キャピタル、初のプライベート・クレジット・ファンドに1億3500万ドルを調達
Navis Capital Raises $135 Million For First Private Credit Fund - Bloomberg
ブルームバーグ・ニュースが閲覧した投資家へのレターによると、ナビス・キャピタル・パートナーズは、最初の投資家コミットメントラウンドを経て、初のプライベート・クレジット・ファンドのために1億3500万ドル以上を調達した。
レターによると、東南アジアのプライベート・クレジットに重点を置くナビス・アジア・クレジット・ファンドは、ナビス・キャピタルの他のファンドの既存投資家や、米国、欧州、アジアの新しいリミテッド・パートナーからの需要があったという。
ナビス・キャピタル・パートナーズは、東南アジア地域を専門領域とするPE(プライベート・エクイティ)ファームだが、2023年からプライベート・クレジットも手がけている。
世界的にプライベート・クレジット投資が人気、ブラックロックは専業会社を買収
世界最大の運用会社である米ブラックロックの12月3日の発表:
ブラックロック、HPSインベストメント・パートナーズを買収し、公的市場と私的市場に統合ソリューションを提供
ブラックロック(NYSE: BLK)と、約1,480億ドルの顧客資産を持つ世界有数のクレジット投資マネージャーであるHPSインベストメント・パートナーズ(HPS)は、ブラックロックがHPSを約120億ドルで買収する正式契約を締結しました。買収対価の100%はブラックロックの株式で支払われます。株式はブラックロックの完全子会社(SubCo Units)によって発行され、ブラックロックの普通株に1対1で交換可能です。
債券(Fixed Income)の未来は、流動性、利回り、および分散を最適化するために、公開および非公開のポートフォリオを構築することです。この取引により、ブラックロックの強力な企業および資産所有者との関係と、HPSの多様なオリジネーションおよび資本の柔軟性が融合されます。統合されたプライベート・クレジット・フランチャイズは、ブラックロックの3兆ドルの公開債券事業と連携して、ポートフォリオ全体にわたってクライアントに公開および非公開の収益ソリューションを提供します。
「HPSとブラックロックが協力してお客様のためにできることにワクワクしており、スコット・カプニック、スコット・フレンチ、マイケル・パターソン、そしてHPSチーム全員をブラックロックに迎えることを楽しみにしています。私たちは常に、お客様のニーズの先を行くよう努めてきました。HPSチームの規模、能力、専門知識を合わせ、ブラックロックは公的機関と私的機関をシームレスに融合したソリューションをお客様に提供していきます」とブラックロック会長兼CEOのローレンス・D・フィンクは述べています。
大口投資なら何でもラインナップしている感のあるブラックロックが専門ファンド会社を傘下に入れたがるほど、プライベート・クレジット投資は、(主に機関投資家から)需要があるということを意味する。
それは、その分野の市場が大きく伸びる予想があるため。
たとえば、投資銀行モルガン・スタンレーの予想だと、プライベート・クレジットは、2028年までに2.8兆ドル市場になる可能性がある。
https://www.morganstanley.com/ideas/private-credit-outlook-considerations
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