マレーシア航空機ビジネス育成計画に米関税の暗雲
東南アジア株式新聞 2025年5月10日
マレーシア航空機ビジネス育成計画に米関税の暗雲
丸紅と現地企業の合弁MROが始動で盛り上がる地元産業だが
航空宇宙産業は、マレーシアの産業政策の重要分野の1つだ。
といっても、最先端技術を一気に獲得しようとしているわけではない。
電機・電子産業でやってきたように、部品製造や下流工程などを確実に任されるステージからスタートしているところだ。
5月8日に開所式を行った丸紅とDviation Groupの合弁MRO(整備・修理・オーバーホール)会社はその代表格として期待されている。
マレーシア政府はこうした産業が順調に育っていくよう、関税からの除外を求めて米国と交渉している。
そんな折、(マレーシアに限らないことだが)航空宇宙産業にとって良い話と悪い話が報道された。
米英ディールでは、航空機部品(ロールスロイスのエンジン)が米関税から免除された
米国はこれから航空機部品について関税化に向け調査する
The Edge Malaysia の5月8日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
マレーシア、主要航空宇宙産業に対する米国関税の軽減を求める — MITI
Malaysia seeking tariff relief from US for key aerospace industries — Miti
マレーシアは、整備・修理・オーバーホール(MRO)などの主要航空宇宙産業を米国の関税から除外するため交渉している。
投資・貿易・産業省(MITI)のハナフィ・サクリ副次官(産業担当)は、関税の導入はマレーシアと米国の航空宇宙企業の両方に影響を与えると述べた。
「我々は、主要航空宇宙産業が米国の関税から除外されるよう交渉している。理想的には全ての産業が除外されることを望んでいるが、この重要なセクターの競争力を維持することが最優先事項である」
マレーシアMITIのハナフィ氏の発言は、8日、スバン空港のスカイパーク地域航空センター内の、KarbonMRO Services Sdn Bhdの航空機およびエンジン整備施設の開所式で行われた。
カルボンMROサービス社は、日本の大手商社・丸紅とマレーシアのDviation Groupの合弁会社だ。
マレーシアは「航空宇宙産業のブループリント」(the Malaysian Aerospace Industry Blueprint)で、2030年までに550億リンギットの売上高規模を目標としている。
現在、同国の航空宇宙産業の売上高は、約250億リンギットなので、数年で倍増以上を狙っていることになる。
マ航空宇宙産業の加速に向けて KarbonMRO HangarとKarbon Engine Servicesが始動
マレーシア、シャー・アラム、2025年5月8日 – マレーシアのDviationグループと日本の丸紅株式会社の合弁会社であるKarbonMRO Services Sdn Bhdは本日、商用航空機およびエンジン整備施設を正式に開設しました。これは、同社の成長と、マレーシアの航空宇宙整備・修理・オーバーホール(MRO)産業の発展に向けたコミットメントにおいて、大きな節目となるものです。開設式には、投資貿易産業省のダトゥク・ハナフィ・サクリ副次官(産業担当)をはじめとする著名な業界リーダーやパートナーが出席しました。
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KMROサイトの発表文の画像 |
5月8日、トランプ大統領が「画期的」と称した米英合意があった。
トランプ米大統領とスターマー英首相が電話で会談した後、二国間貿易協定での合意を発表した。
米国は、英国からの輸入品に対する10%の基本税率を維持するが、英国は米製品に対する関税率を5.1%から1.8%に引き下げる。
英国側は、英国製自動車に対する27.5%の米関税は10%に引き下げられるなど、いくつかの品目で米関税引き下げを勝ち取った。
この中に航空機関連もあった。
ロイター通信の5月9日の記事:
米、英と貿易巡り合意 関税交渉で初 自動車税引き下げ・10%関税維持 | ロイター
ラトニック米商務長官によると、英国は100億ドル相当の米ボーイング製の航空機を購入する見込み。ただ、ホワイトハウスが発表した資料には「航空機部品」と記載されている。この見返りとして、米国は英航空機エンジン大手ロールスロイス製のジェットエンジンの無関税輸入を許可するという。
米国との交渉で「航空機部品」分野でのディール(取引)に可能性があることが判明した。
しかし、1日経つと発言や政策が変わる可能性があるのがトランプ時代の米国だ。
日本経済新聞の5月10日の記事:
トランプ米政権は9日、輸入する航空機やエンジンなどへの追加関税を視野に入れた調査を始めたことを明らかにした。自動車や鉄鋼・アルミニウム製品などに続き、日本企業に影響を与える新たな分野別関税が導入される可能性がある。
連邦官報によると調査は通商拡大法232条に基づくもので、米商務省が1日から開始した。商用の航空機と航空機エンジンだけでなく、それらの部品も含めて輸入依存度などの実態調査を進める。
航空機部品を対象にした新関税を米国は近い将来設けるかもしれない。
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