報道の自由度ランキング WPFI2025 年版、東南アジアは改善中

 

東南アジア株式新聞 2025年5月3日

報道の自由度ランキング2025年版、東南アジアは改善中

5月2日、3日のニュースで「報道の自由度ランキング」を見かけた。

報道の自由、日本は66位 順位改善するもG7で9年連続最下位:朝日新聞

報道自由度ランキング 米国は57位にダウン「トランプ氏が悪化させている」日本は66位


報道の自由度ランキングとは、国境なき記者団(RWB)がまとめている「World Press Freedom Index」のこと。その2025年版が5月2日に発表された。


日本のニュースのタイトルだけで、報道の自由度が米国で低下、日本はG7最下位、ということはわかる。


東南アジア諸国はどうだろうか?

(地図の色は、茶色が濃くなるほど自由度が低いことを示す)

    
2025 World Press Freedom Indexのマップの一部
2025 World Press Freedom Indexのマップの一部

https://rsf.org/en



この指標は、定量的には記者への虐待(殺害・拘束)、定性的には記者や研究者の意見を集め、点数化し、順位を付けている。

上位の国と、日本、米国、中国の順位は以下の通り。


1.ノルウェー

2.エストニア

3.オランダ

ーーー

57.米国

ーーー

66.日本

ーーー

178.中国

(全 180国・地域)


米国、日本、中国とも今年に入ってから記者殺害はゼロだが、中国には現時点で拘束されている記者が113人いる。米国と日本は拘束もゼロ。



ASEAN10を見てみよう。

()内は2024年版の順位。記者拘束がある国には人数を付けた。


タイ:85(87)

マレーシア:88(107)

ブルネイ:97(117)

フィリピン:116(134)

シンガポール:123(126)

インドネシア:127(111)

ラオス:150(153)拘束3人

カンボジア:161(151)拘束4人

ミャンマー:169(171)拘束61人

ベトナム:173(174)拘束37人


10か国中8か国が前年より順位を上げた。ASEAN全体では報道の自由度が改善中と言ってよさそうだ。


この地域でタイとマレーシアが自由度が高いのは大方の人の印象通りだろう。

内戦状態を抱えているミャンマーだけでなく、インドシナ3国も残念な状態だ。



主な国のメディア産業の現状

さて、このインデックスの調査結果には、政治、法、経済、社会文化、安全の各面で現状レポートも付いている。


経済面のレポートには、メディア産業の現状が書かれている。

ASEANのいくつかの国の様子を見てみよう。


タイ:

タイの主要メディアは政府から独立しているように見えるものの、王室や軍と直接的な繋がりを持つ少数の寡頭政治家によって所有されている。タイ貢献党が政権を樹立した1年後、シナワット家が設立したボイスTVは財政難により閉鎖された。これは、与党が公的メディアを積極的に活用するようになり、民間メディアへの依存度が低下していることを示唆していると考えられる。


言うまでもないことだろうが、現首相ペートンタン氏は、シナワット家の人、タイ貢献党に所属だ。


マレーシア:

マレーシアでは、メディアの設立はリスクの高い事業です。特に、政府がライセンスを統制し、編集方針を押し付けるシステムがあるためです。メディアの所有権は高度に集中しており、複数のメディア王が業界全体の独立性と多様性を脅かしています。オンラインメディアの設立は、政府が定める暗黙のルールを破らない限り、はるかに容易です。


シンガポール:

2つの大手メディアグループが、主要な印刷メディア、ラジオメディア、放送メディアのすべてを所有しています。1つはメディアコープで、国営投資会社が所有しています。もう1つはSPHメディアトラストで、シンガポール・プレス・ホールディングスがメディア関連事業を分離して設立されました。SPHメディアトラストは非営利組織であり、政府から直接資金提供を受けています。SPHメディアトラストの会長は、人民行動党(PAP)政権の元大臣です。独立系メディアを含む多くのメディアにおいて、自己検閲が蔓延しており、代替的な資金調達手段があるにもかかわらず、政府による組織的な司法的・経済的嫌がらせを受けています。


インドネシア:

グローバル・メディアコム(MCM)、ジャワ・ポス・グループ(JPG)、コンパス・グラメディア・グループ(KGG)など、約10の大手メディアグループが主流メディア市場の大部分を占めています。多くのメディア、特に従来型のメディアは、持続可能な経済モデルを見つけるのに苦労しており、広告収入の減少に直面しています。コーラン・シンドやハリアン・レプブリカなど、多くの新聞社は廃刊を余儀なくされたり、デジタル版への移行を余儀なくされたりしています。さらに、オンラインメディアは、ソーシャルメディア・プラットフォームから得られる広告収入の不均衡に大きく依存しています。この財政的不安定さは、ジャーナリストの解雇や給与削減の波を引き起こしています。さらに、メディア関係者への経済的保護は依然として不十分であり、労働組合の設立も依然として困難です。






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