マレーシア首相のロシア訪問、経済協力強化は合意できたが・・・
東南アジア株式新聞 2025年5月16日
マレーシア首相のロシア訪問、経済協力強化は合意できたが・・・
マレーシアのアンワル首相が13日から15日までの日程でモスクワを公式訪問した。
(その後、5月15日と16日にタタールスタン共和国カザンへ。
第16回国際経済フォーラム「ロシア・イスラム世界:カザンフォーラム」に出席)
同行は外務大臣の他、農業と農産物、教育、航空宇宙、エネルギーなどの分野の大臣たちだ。
これらの分野で経済協力強化を話し合う予定だったとわかる。
実際、ロシアから多くの合意を取り付けた。
しかし、MH17便撃墜事件についてだけは、マレーシアにとって満足な成果は得られなかった。
Malay Mail の5月14日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
モスクワでアンワル首相はロシアをマレーシアの偉大な友人と称賛
In Moscow, PM Anwar hails Russia as a great friend of Malaysia | Malay Mail
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は水曜日、ロシアをマレーシアの偉大な友人と呼び、同国はロシアを尊敬していると述べた。
モスクワ到着後、ロシアの儀仗兵による歓迎を受けたアンワル首相は、マレーシアとロシアの友好関係を強化することを最重視しているように見えた。
5月14日のX投稿では、ロシア産業界の代表者との会合を報告した。
![]() |
| アンワル首相のX投稿(5月14日、ロシア産業界代表団と会合) |
モスクワでの2日目は、食品・農業、小売・物流、石油・ガス、金融、家具、化学製品、建築資材、廃棄物管理など、戦略的セクターを代表するロシアの主要産業界関係者24名との円卓会議への出席から始まりました。
会議は、帝政ロシア時代から数々の歴史的出来事の目撃者であり、世界の著名人を迎え入れてきたモスクワの伝説的なランドマーク、メトロポールホテルで開催されました。
トルストイ、ツルゲーネフ、チェーホフといった偉大な作家にちなんで名付けられた部屋が設けられ、ロシアの文学遺産がいかに誇り高く守られているかに感銘を受けました。
壁には彼らの肖像画が飾られ、物質的な進歩は常に精神、文化、そして人間性に根ざしていなければならないことを私たちに思い出させてくれます。
このような雰囲気の中で、マレーシアとロシア間の持続可能な貿易・投資関係の拡大について意見交換を行いました。
相互利益を約束する機会を模索するとともに、起業、イノベーション、そして包摂的な成長への新たな道を切り開きました。
こうした対話は、より公正で豊かな未来を築くための開放性、相互尊重、そして責任の共有を重視するMADANIの価値観に導かれ、ますます複雑化する世界経済の中でマレーシアの競争力を高め続けると確信しています。
アンワル首相は5月15日、X投稿で、14日のプーチン大統領との会談について報告した。
![]() |
| アンワル首相のX投稿(5月15日、前日のプーチン大統領との会談について) |
(前略)
我々は貿易、教育、エネルギー、デジタル技術、防衛、サイバーセキュリティなどさまざまな分野での協力について包括的に議論しました。
マレーシアは、特に航空宇宙、AI、デジタル経済などの高付加価値分野において、二国間貿易を拡大し、ロシアからの新たな投資を誘致する取り組みを歓迎します。
私はまた、学生交流、奨学金、マレー語研究プログラムの拡大、TVETおよび科学技術協力を含む、国民同士の関係の大きな可能性についても強調しました。
マレーシアは接続性を強化する取り組みの一環として、アエロフロートを含むロシアの航空会社ができるだけ早くマレーシアへの直行便を再開し、観光と文化交流を促進することを望んでいる。
オープンな姿勢と相互尊重の精神に基づき、私はMH17便の悲劇に関してマレーシア人の声も伝えます。
私はこの件をプーチン大統領に直接提起しました。マレーシアは、真実と正義は公正かつ包括的に守られなければならないという原則を引き続き堅持します。
(中略)
私はまた、マレーシアのBRICS加盟への希望を支持してくれたプーチン大統領に感謝の意を表します。我々は、BRICSが開発途上国にとってより公平でバランスのとれた開発協力の新たな経路となり得ると信じています。
会談の最後に、私はプーチン大統領に対し、近い将来、あるいは今年10月に開催される第47回ASEAN首脳会議に合わせてマレーシアを訪問するよう呼びかけました。彼の存在は二国間関係の強化と地域協力に向けた重要な触媒となるでしょう。
モスクワ訪問の第一の目的は、貿易・投資の誘致を中心とした経済協力だ。
マレーシアの首相はどこの国へ行っても、その話は欠かさない。
それに加えて、ロシア訪問では2点加えた。
マレーシアのBRICS入への支持をロシアから得た
10月のASEAN首脳会議にプーチン大統領を招待した
もう1点、マレーシア首相のロシア訪問では特別なミッションがあった。
The Star の5月15日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
アンワル首相、モスクワ訪問中にプーチン大統領にMH17問題を提起
Anwar raises MH17 issue with Putin during Moscow visit | The Star
アンワル・イブラヒム首相は、5月14日(水)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談で、2014年にウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空MH17便の問題を取り上げた。
アンワル首相によると、この問題は、この悲劇の犠牲者の遺族を代表して、クレムリンで行われたロシア大統領との二国間協議の中で取り上げられたとのことだ。
「マレーシア国民、特に犠牲者の遺族の代表として、二国間協議の中で、ウラジーミル・プーチン大統領にこの問題を提起する機会を得ました」と、アンワル首相は今夜のロシア公式訪問を報じるマレーシアメディアに語った。
マレーシア航空 MH17便は、2014年にウクライナ上空でロシアのミサイルによって撃墜された。
この結果、乗員・乗客合わせて約300人が全員死亡した。
ちょうどアンワル首相がモスクワへ出発する直前のタイミングで、MH17に関するニュースが流れた。
5月12日、国際連合の機関であるICAOが、マレーシア航空 MH17便の撃墜について、ロシアに責任があるとの結論を出したのだ。
ICAO Council vote on Flight MH17 case
国際民間航空機関(ICAO)理事会は本日、2014年のマレーシア航空MH17便撃墜事件においてロシア連邦が国際航空法上の義務を遵守しなかったと投票で結論を出した。
(中略)
理事会の結論に至った事実と法律上の理由を記載した正式な決定文書は、今後の会議で発行される予定だ。
マレーシア首相は当然、この問題を無視することはできなかった。
現地からの報道をいろいろ見たが、プーチン大統領は、ICAOの判断ではなく、もっと確かな証拠が必要だという姿勢を示したようだ。
謝罪や賠償の話までは遠い。
マレーシア側からすると満足できる反応ではなかっただろう。
共同声明の会見の映像を見ると、マレーシア側の出席者(首相と外相など同行の閣僚)の表情は硬かった。
最後に、プーチン氏がアンワル氏との会話を公開し、マレーシア側出席者の笑顔を拾ったけれども。
Press Statement Following Russian-Malaysian Talks
余計な話を1つ。
笑いを拾った部分は、以下のような感じだった。
プーチン大統領:
「首相にクレムリンの聖アンデレ・ホールについて説明していたんです。そこには玉座が3つあって、私は首相に『首相、玉座の一つは国王のもので、もう一つは妻のものです。3つ目の玉座は誰のものでしょうか?』と尋ねました。首相はほとんど考えもせずに『2番目の妻のものです』と答えたんです。やはり首相は真のイスラム教徒であり、イスラム教徒の考え方をするのだと理解しました」
3つ目は国王の母のための玉座らしい。
アンワル首相:
「まさに正しい情報を伝える事が重要ですので、言わせてください。私には妻は1人しかいません」
イスラム教徒だから夫人が複数いるのを当然だと思ったわけではなく、歴史上の国王という階級の人だから複数夫人がいると思っただけだと、アンワル氏は訂正したかったようだ。


コメント
コメントを投稿