米中関税合意の余波、東南アジアでは先行き不安が消えず
東南アジア株式新聞 2025年5月13日
米中関税合意の余波、東南アジアでは先行き不安が消えず
5月12日に米国と中国が関税戦争の一時停止に合意したことを受け、金融市場は激動した。
まずは米国株の急騰。
NYダウ「相互関税前」回復、米中合意で強気 一段高に金利上昇の壁 - 日本経済新聞
米中両政府が高関税の引き下げで合意したことを受け、12日の米欧の金融市場では株式などリスク資産の買いが広がった。ダウ工業株30種平均は相互関税の発表直前の水準を回復した。
米国株へ資金が戻ったせいもあって、12日のNY市場で、前週145円近辺だったドル円相場は一時148円台の円安へ。
13日、リスクオン相場はアジア株式に波及した。
日経平均株価は、1.43%高の3万8183円26銭で取引を終えた。およそ2カ月半ぶりの高値だ。
しかし、日本や東南アジア諸国を含めて多くの国がまだ米国と交渉中で、どんな条件で決着し、自国の産業や経済全体にどんな影響があるのか、まだ不明だ。
楽観ムードがどこにでも戻ってきたわけではない。
米中合意
12日の合意で、米国と中国は、90日間、最近相互にかけた関税の停止期間を設けた。この一時的な休戦の下、米国は先月中国からの輸入品に課した追加関税を今後3か月間、145%から30%に引き下げ、中国側の米国からの輸入品に対する関税も125%から10%に引き下げる。
とは言え、中国からの輸入品に対する米国の残りの関税は以前のままだ。中国にはトランプ大統領が最初の任期中に多くの工業製品に課した25%の米国関税の負荷がかかっている。バイデン前大統領が課した電気自動車への100%の関税と太陽光発電製品への50%の関税も残っている。
今後も米中間で関税や貿易条件についての交渉をする必要がある。
ベッセント米財務長官が13日、「エスカレーションを回避するメカニズムができた」と発言したと報じられている。
米中政府間で交渉可能な相手だと認めあったことが大きな成果なのだろう。
13日、香港株は下落
東南アジア株も上昇した市場が多かったが、13日の香港株式は9営業日ぶりに反落した。ハンセン指数の終値は前日比1.87%安の2万3108.27だった。利益確定の売りが優勢で、アリババやシャオミなど主要ハイテク銘柄が急落した。
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| ハンセン指数の年初来(HKEX公式サイトより) |
South China Morning Post の5月13日の記事:
香港株、米中貿易合意による上昇ムードから撤退
Hong Kong stocks retreat from gains sparked by China-US trade breakthrough
(前略)
「これは、2大経済大国の避けられない衝突の始まりに過ぎないかもしれない」と、香港の野村証券の中国担当チーフエコノミスト、ルー・ティン氏は述べた。「株価は持ち直したが、市場は中長期的なリスクについて熟考する必要があるかもしれない。米国は依然として攻勢を続けているが、中国は将来の攻撃に備えるための備えをはるかにうまく学ぶかもしれない」
今週、ハンセン指数構成銘柄の主要企業による一連の決算発表にトレーダーが備えていたため、警戒感が広がっている。アリババ・グループ・ホールディング、テンセント・ホールディングス、メイトゥアン(美団点火)、ネットイース(網易)は、週を通して四半期決算を発表する予定だ。これら4銘柄は、ハンセン指数の4分の1を占めている。
(以下略)
タイは米国との交渉へ
The Bangkok Post の5月13日の記事:
タイ首相、米国に貿易提案を送付したと発表
Thailand has sent trade proposal to United States, PM says
タイは米国に対し貿易提案を提出したと、ペートンタン・シナワット首相が火曜日に発表した。政府は米国の高関税引き下げに向けた交渉を求めている。
タイに対するトランプ相互関税は36%と高い。(比較のため、日本とマレーシアは24%)
タイ政府は、米国から、トウモロコシ、大豆粕、原油、エタン、液化天然ガス(LNG)、自動車、電子機器など、米国製品の輸入を増やす方針だ。
タイを経由して米国に輸出される製品の原産地偽装を取り締まるとも表明している。
マレーシアの不安
13日、証券取引所(Bursa Malaysia)では代表指数 FBM KLCI が2.32%も上昇した。
少し上がり過ぎな気もするが、米国が新関税を引き下げる可能性が見えたことと、(対米輸出できない)中国からの輸出攻勢が緩和されることなども含めて、好感したのだろう。
だが、先行き不安は消えていない。
CNAの5月13日の記事:
関税をめぐる緊張の中、マレーシアの半導体産業への投資は依然不透明、専門家が指摘
(前略)
トランプ大統領はその後すぐに90日間関税を停止したが、この猶予期間は2か月足らずで終了する。
対米輸出の60%が半導体と電子機器であるマレーシアは、この期間中にトランプ政権と貿易協定を交渉しなければならない。
専門家らは、この課題に対処するには、東南アジア諸国は、より高度なチップ設計と生産への移行を含め、自国の地位向上に積極的に取り組む必要があると述べている。
(以下略)
この記事は、いろんな立場の専門家の意見を集めていて、マレーシアの半導体産業の現在の状況を知るのに良い。
多くの意見に共通する要素は、タイトルにある通り、不透明感だ。
半導体および電子機器がマレーシアの対米輸出の60%を占めているだけに、米国との関税交渉の行方は同国経済全体にとって大きな不安要素だ。
マレーシア半導体産業協会は、これらの半導体メーカーがマレーシアで事業を継続することを期待している。
「インテル、AMD、HPがここに。TI、IBM、Dellなど、あらゆる企業がここに。そして、私たちは彼らの成長に大きく貢献しました。これは大きな意味を持つと感じています」と、同協会のウォン・シューハイ会長は述べた。
さらに同会長は、協会はこれらの企業の米国事業に働きかけ、マレーシアが彼らの成長にどのように貢献してきたか、そして今後10年間もどのように貢献し続けていくかをトランプ政権に説明する必要があると付け加えた。

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