番外編)ドル円が161円突破し38年ぶりの円安水準に

東南アジア株式新聞 2024年6月28日

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3332.80

-0.32%

1590.09

+0.32%

7063.58

+1.37%

1300.96

-0.65%

17718.61

+0.01%

  • 6月締めの取引日、インドネシアとマレーシアが健闘した。

ドル円が161円突破し38年ぶりの円安水準に、日本円の沈没は新時代に入った


6月28日午前、ドル円レートは161.24円まで到達、38年ぶりの円安水準となった。

もはや、このあたりで安定するだろうという目安はなくなり、日本円の価値が際限なく沈没する可能性がある新時代に入った。


日本経済にとって円安のメリットはインバウンド観光客の増加や(少数派の)輸出企業の海外からの受け取り額が(円で見れば)大きくなることくらい。

輸入品の値上がりから物価上昇が続く、多数派の企業は経営が苦しくなる(賃金を上げないと人材が確保できない)、海外旅行が贅沢イベントになったなど、デメリットが圧倒的に大きくなった。


最も怖い話は、日本政府には円安を反転させる手段がほとんどないことだ。

やり過ぎた金融緩和を続ければ長期の円安要因であり、引き締めに転じれば、即、大不況の引き金になりかねない。

経済力が衰えた今、大不況になれば、さらに円安が進む。

   
対ドル為替レートの5年間(2024年6月28日、Google Financeより)
対ドル為替レートの5年間(Google Financeより)

前にも使った図だが、米ドル・ペッグのシンガポール・ドル以外は価値低下の流れにある。

日本円は、マレーシア・リンギットやタイ・バーツの2倍速で価値低下している。

1986年以来38年ぶりの水準


当時、大学生だった私の記憶は、1985年9月のプラザ合意(NYプラザホテルでのG5蔵相・中央銀行総裁会合で米ドル高の修正に合意 )以降、円高が進んでいたことだ。

プラザ合意前のドル円レートは235円で、1年後には150円台まで円高となった。

その過程での160円だったということになる。


日本にとって最大の経済問題は日米経済摩擦であり、米国から「自動車・電機製品のダンピングをするな」「もっと米国製品を買え」などと文句を言われていた。

日本のメーカーが国際競争力を向上させていたことが主因だった。だから、日本国内でも外国でも日本製品が売れた。


さて、そこから円高時代が30年ほど続いたことになる。

もっとも、ピークが2回あり、1995年と2010-11年に80円近辺まで到達していた。

2013年にアベノミクスとか黒田バズーカとか呼ばれた政策変更があり、その後は、大規模な金融緩和政策で円安方向へ引っ張ってきた。

未来の世界史の教科書に載りそうな愚かな話だ。


円安で日本経済復活はない


円高になる過程こそ日本経済・産業が強くなっていた時代だった。

貿易摩擦回避のため、メーカーは現地生産を進めてきたのであり、大規模な生産拠点の国内回帰はありえない。


前回の円安時代は、先進国の中で低賃金・長時間労働で国民は頑張っていた。

国民ほぼ全員が豊かになる道だったから頑張れた。


今度は国民全員が豊かになる道はない。

そのうえ人口減少・高齢化という悪い条件が数十年の間つきまとう。

外国からの観光客は多く来てくれるだろうが、円安メリットを得ている輸出大企業がいつまでも縮小する市場・日本を中心拠点にしている保証はない。


通常の発想や努力で、再び日本が強い経済力を取り戻すことはないだろう。

危機の新時代でもある。



以下、Geminiに円安のメリット・デメリット、円安の流れを止める方法についてまとめてもらった。

一般論としてはよくまとまっている。


円安の現状とメリット・デメリット

2024年6月28日現在、ドル円相場は1ドル161円台と、37年半ぶりの円安水準となっています。 円安は、輸出企業にとっては追い風となる一方、輸入品や海外旅行の費用上昇など、家計には負担となる側面があります。

以下、円安の現状と、主なメリット・デメリットをまとめます。

■ 円安の現状

  • ドル円相場: 1ドル161円台(2024年6月28日現在)

  • 主な要因:

    • 日米金利差拡大(米国:利上げ、日本:金融緩和)

    • 米国経済の堅調性

    • 中国景気減速懸念

  • 過去の為替介入水準や心理的な節目: 1ドル160円台後半から162円台前半

■ 円安のメリット

  • 輸出企業の業績向上: 円安になると、輸出企業が海外で稼いだ外貨を円に換算した際の売上高が増加するため、業績が向上しやすくなる。

    • 特に、自動車、電機、精密機械などの輸出主体の企業にとって恩恵が大きい。

  • インバウンド観光客の増加: 円安になると、海外から日本への旅行が割安になるため、インバウンド観光客の増加が期待できる。

    • 観光業や飲食業などのサービス業にとっては追い風となる。

  • 海外投資の利回り向上: 円安になると、海外資産の価格が円換算で高騰するため、海外投資の利回りが向上する。

    • すでに海外投資を行っている個人や、今後海外投資を検討している人にとってメリットとなる。

■ 円安のデメリット

  • 輸入品価格の上昇: 円安になると、輸入品の価格が円換算で高騰するため、家計の負担が大きくなる。

    • 特に、エネルギーや食料品などの生活必需品の価格上昇は、家計を直撃する。

  • 企業業績の悪化: 輸入品を多く使用する企業にとっては、円安による原材料価格の高騰が業績悪化につながる可能性がある。

    • 中小企業を中心に、業績悪化が懸念される。

  • 金融緩和政策の限界: 長期化が懸念される円安は、日銀の金融緩和政策の限界を露呈する可能性がある。

    • 金融政策の効果が薄れることで、更なる経済悪化を招く恐れもある。


円安への流れを止める:専門家の意見まとめ

2024年6月28日現在、ドル円相場は1ドル161円台と、37年半ぶりの円安水準となっています。 日米金利差拡大や米経済の堅調性などから、当面は円安基調が続くと予想されています。

しかし、専門家の中には、円安への流れを止めるための様々な政策提言を行っている人もいます。 以下に、代表的な意見を3つご紹介します。

1. 日銀による金融政策の修正

  • 金融緩和の程度を縮小することで、日米金利差を縮小し、円買い・ドル売りの動きを促す。

    • 具体的には、短期金利の引き上げ、国債買入量の削減などが考えられる。

  • ただし、金融政策の修正は、景気後退リスクを伴うため、慎重な検討が必要となる。

2. 財政政策による景気浮揚

  • 政府による積極的な財政出動を行い、景気の下支えを行うことで、円高圧力を高める。

    • 具体的には、公共事業への投資拡大、減税などの政策が考えられる。

  • 財政出動には、財政赤字の拡大という課題があるため、財源確保が重要となる。

3. 構造改革による輸出競争力強化

  • 日本の企業が海外市場で競争力を高め、輸出を増加させることで、円買い・ドル売りの動きを促す。

    • 具体的には、規制緩和、労働市場改革、イノベーション促進などが考えられる。

  • 構造改革は、時間がかかり、国民の理解を得ることも容易ではないため、長期的な視点が必要となる。

上記以外にも、様々な政策提言が行われています。

円安への流れを止めるためには、単一の政策ではなく、様々な政策を組み合わせた総合的な対策が必要となるでしょう。

また、政策の効果が出るまでに時間がかかる可能性があるため、国民一人一人が円安への理解を深め、節度ある消費や投資を心がけることも重要です。

なお、為替市場は変動が大きいため、投資には必ず損失のリスクが伴います。 十分な調査を行い、余裕資金で投資するようにしましょう。



関連記事:番外編:『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』唐鎌大輔著を読んで

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