AI 関連投資を引き寄せるマレーシア

AI 関連投資を引き寄せるマレーシア

東南アジア株式新聞 2024年6月8日



「バイトダンスがマレーシアをAI拠点に」

昨日、マレーシアのメディアが騒いでいたので調べたところ、情報源は投資貿易産業大臣の投稿だった。

  
テンク・ザフルル大臣のXへの投稿(2024年6月7日)
テンク・ザフルル大臣のXへの投稿

マレーシアの投資貿易産業大臣、(敬称 テンク・ダトゥク・スリ)ザフルル・アブドゥル・アジズ氏は、X(旧Twitter)の投稿で、シンガポールで6月7日に行われたTikTok副社長ヘレナ・レルシュ氏との会談中に伝えられた話を披露した。


(全文の日本語訳)

TikTokはマレーシアへの投資を増やし続けています!


TikTok副社長のヘレナ・レルシュ氏と会談し、マレーシアにおけるTikTokの事業展開について話し合いました。


これまでのところ、TikTokはバイトダンス・システムを通じてジョホール州クライのセデナック・テック・パークにデータセンターを建設しました。バイトダンスは将来のニーズを考慮し、15億リンギットの追加投資でデータセンター施設を拡張する予定です。


それだけでなく、バイトダンスはAIに投資し、約100億リンギットの予定投資額で、マレーシアを地域のAIハブにすることも計画しています。


バイトダンスによるこの追加投資は、マレーシアが2025年までにデジタル経済を国内総生産(GDP)の22.6%に成長させる目標を達成するのに間違いなく貢献するでしょう。




TikTokと親会社バイトダンスが混じっているので、整理すると:

  • TikTokがジョホール州クライにデータセンターを建設したが、15億リンギット追加投資して拡張する予定だ。

  • バイトダンスがマレーシアをAIの地域ハブにする計画だ。約100億リンギットの投資。


100億リンギットというと、近頃のレートで、3300億円くらい。大きい金額だ。


最後にマレーシアの目標と言っているのは、マレーシア 国家AI戦略2020年-2025年(National AI Strategy 2020-2025)のことだ。

この戦略の主要な目標は以下の通り。

  • 2025年までにAI関連産業の売上高を300億リンギットにする

  • 2025年までに1万人のAI人材を育成する

  • 2025年までに100のAI駆動ソリューションを政府機関で導入する

  • マレーシアをASEANにおけるAIハブにする

大臣の発言を見る限り、金額面では、目標達成へ向け順調に進んでいるようだ。



このところ、IT大手によるマレーシアでの投資が活発だ。

マレーシアでのAI関連の投資

  • Google: Googleは、マレーシアでデータセンターの建設などに20億ドル投資すると発表した。クラウドやAI事業を強化する。(5月30日発表)

  • マイクロソフト: マイクロソフトは、マレーシアに22億ドルを投資し、AIとクラウドサービスのデータセンターを建設することを発表した。データセンターは、東南アジア地域の企業や政府機関にAIサービスを提供する予定。(5月3日発表)

  • NVIDIA: NVIDIAは、マレーシアにAIチップの製造工場を建設することを発表した。東南アジア地域のAI需要の増加に対応する。(2023年12月8日発表)


ただし、IT大手企業は、マレーシアだけに投資しているわけではない。いろんな国に投資しており、東南アジアではマレーシアが目立つということだ。



日本も似たような投資の誘致に熱心だ。

6月8日の日本経済新聞の記事:

海外のAI関連企業、なぜ日本に進出するの? ニッキィの大疑問


記事では、以下のような理由を挙げている。

  • 日本にAIニーズが多い(労働人口の高齢化、医療)

  • 産業データを収集できる製造業が多い

  • 日本国内でデータ管理したい企業ニーズ

  • AI法規制が緩い


差し迫ったAI利用のニーズ以外は、マレーシアにも当てはまりそうではある。

この記事でも重視しているが、法規制の緩さが大きいように思う。

たとえば、開発段階で厳密に著作権の侵害を適用されると、大量の文章を読み込んで学習する生成AIの開発が格段に厳しくなる(コスト高になる)。


マレーシアと日本の条件はかなり似ているのかもしれない。この数年の円安で、賃金や物価の水準も似てきた。


あえて言えば、日本語を重視するなら日本、英語・中国語を重視するならマレーシアを選ぶということだろうか。



6月11日追記

  
2024年6月11日のザフルル大臣のX投稿
6月11日のザフルル大臣のX投稿


ザフルル大臣がまたX投稿でニュース提供

マレーシア、AIデーターセンター向けに特別インセンティブ

(投稿の全文の日本語訳)
MITI(貿易産業省) は AI データ センター向けの特別インセンティブを設けます。

AI データ センターは、非常に明確で刺激的な経済的波及効果をもたらします。先進技術インフラと AI データ センターへの投資は、MADANI 政府のあらゆる面での国のデジタル変革アジェンダの加速化への取り組みをサポートし、高所得経済への移行をさらに推進することができます。

2021 年から 2023 年にかけて、マレーシアはデータ センターとクラウド サービスへの投資を承認し、その総額は 1,147 億リンギットに達し、データ サイエンティスト、データ アナリスト、データ エンジニア、サイバー セキュリティ アナリスト、ネットワーク エンジニアなど、特定の専門分野で 2,325 件の新しい高価値雇用機会が創出されました。

これを受けて、国家投資評議会は、MITI が機関である #MIDA を通じて、エネルギーと水を効率的に利用する機器の使用メカニズムや、マレーシアでの AI データ センターへの投資を促進するための十分な再生可能エネルギーの提供など、インセンティブ枠組みを制定することに合意しました。

MITI は、マレーシアが AI データ センターの優先投資先であり続けるよう努めます。
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