トランプの変化球はアジアの経済成長に重し、相対的にはインドとマレーシアに恩恵:野村グループのリポート

 


東南アジア株式新聞 2024年11月23日


トランプの変化球はアジアの経済成長に重し、相対的にはインドとマレーシアに恩恵:野村グループのリポート

野村グループがアジア向けに公表しているアジア経済月報(Asia Economic Monthly)で、米国のトランプ次期政権の関税などの政策がアジア地域に及ぼす影響を書いた。

経済月報11月版『Asia Economic Monthly: The Trump curveball for Asia』によると、予想されるトランプ政策は全体としてアジアの経済成長の重しであり、ディスインフレのリスクがあると予想している。

特にネガティブな影響を受けるのは中国と韓国で、比較的ポジティブな影響を受けるのはインドとマレーシアだ、と野村のリポートは書いている。


中国と韓国への悪影響は他のリポートでもよく見る。

米中対立の激化で漁夫の利を得る可能性が高いのが(第2のアジアの大国)インドというのも想像の範囲内だろう。

マレーシアに強気なリポートはめずらしい、と個人的には思う。

  
野村の2024年11月版アジア経済月報の表紙
野村の11月版アジア経済月報の表紙



野村の2024年11月のアジア・エコノミック・マンスリー(データは11月15日時点):

アジア経済月報:アジアにとってのトランプのカーブボール

Asia Economic Monthly: The Trump curveball for Asia | Nomura Connects

  • 関税の上昇、世界的な需要の弱まり、政策の不確実性の高まりが、アジアの経済成長の重しとなるだろう

  • 成長の鈍化、エネルギー価格の低下、そして中国からアジア諸国への輸出増加の見通しを考えると、ディスインフレはアジアにとってより大きなリスクである

  • より広範な経済的、地政学的影響はアジア、特に中国と韓国にとってマイナスであるが、進行中のサプライチェーンのシフトにより、インドとマレーシアは相対的に恩恵を受けると見ている



トランプ 2.0 はアジアにとって何を意味するか


今回はアジア側は準備ができている。トランプ氏の政策に対する理解が深まったため、トランプ氏の再選はそれほど衝撃的ではない。また、米中デカップリング、グローバル サプライ チェーンの変化、中国へのアジア輸出の減少という継続的な傾向により、アジアはより回復力がある。しかし、トランプ 2.0 は政策の不確実性が高まる可能性が高く、アジアにとってマイナスとなる可能性がある。


また、成長の鈍化、経済の余剰、エネルギー価格の低下、中国からの輸出がアジアに殺到するリスクにより、アジアでは今後さらなるデインフレが起こる可能性もある。野村の現在のベースライン予測と比較して、2025年のインフレ率は0.1~0.2パーセントポイント低下する可能性がある。


一部の経済はサプライチェーンの恩恵を受ける可能性がある。米国への中国からの輸出に60%の関税を課すことで輸入代替が起こり、東南アジアの経済が有利になる可能性がある。また、中国が輸出を他の国に回す貿易転換につながる可能性もあるが、トランプ2.0の下ではこれがより厳しい監視を招くリスクがある。中期的にはサプライチェーンの多様化が続き、インドとマレーシアが電子機器と半導体セクターで大きな恩恵を受ける可能性が高い。


(以下、略)



さて、上記ポイント3点のうち2点目までは多くの人が同意するのではないか。

まず、対米貿易縮小はアジア経済の成長の重しになるだろう。

それに、(対米輸出の縮小で在庫を抱える)中国企業の低価格攻勢が他のアジア地域にはディスインフレ(物価上昇を押し下げる)効果がありそうだ。


興味深いのは3点目。それに言及している箇所を抜き出すと以下のように書かれている。


中国はトランプ大統領の攻撃の真っ只中にある。韓国は成長の鈍化と韓国の電気自動車およびバッテリー産業への逆風により悪影響を受ける可能性が高い。一方、インドと米国は深い経済的および戦略的利益を共有しており、これはアジアの国にとって良い前兆となるかもしれない。同様に、マレーシアは、サプライチェーンの多様化を目指す多国籍企業からの外国直接投資の流入増加から、長期的に恩恵を受ける可能性がある。


同リポートに掲載されている野村グループの予想では、GDP成長率は以下のように推移する。


中国:2024年に4.8% ➜ 2025年に4.0%

韓国:2.2% ➜ 1.7%


インド:7.0% ➜ 6.9%

マレーシア:5.5% ➜ 4.5%


相対的に恩恵を受けるインドとマレーシアでも、来年は景気減速感を少し感じることになりそうだ。


このほか、興味深い指摘は、以下。


トランプ大統領の保護主義的姿勢は、米国対中国の対立軸を中心とする地域ブロックをさらに強化するだろう。トランプ2.0の下では、中国とASEANの貿易・投資統合が強化される一方、インド、オーストラリア、日本、韓国は米国とより緊密に連携するようになると思われる。




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