米国の対中関税・対ロ制裁でとばっちりを受ける東南アジア

 

東南アジア株式新聞 2024年11月4日

  • 11月5日の米大統領選が間近に迫り、投資家は様子見姿勢を強めた

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3572.04

+0.47%

1616.43

+0.78%

7479.50

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1462.95

-0.08%

20567.52

+0.30%

米国の対中関税・対ロ制裁でとばっちりを受ける東南アジア

米国が対ロシア制裁のリストに第三国の企業を追加し、東南アジア企業も制裁対象となった。

これまでのロシア制裁の結果、第三国を迂回したロシアの兵器製造・調達が増えたため。

制裁の詳細はよく分からないが、米国とその同盟国の市場や金融システムから排除されるものと見られる。

米国の対中貿易戦争では、東南アジアはすでに、明白なとばっちりを受けている。

たとえば、ソーラーパネルでは、東南アジアの企業も高関税の対象となっている。


次の米国大統領が誰であっても、東南アジアにとっては難しい時代が来る。





米国務省の10月30日の発表

ロシアのウクライナへの戦争を可能にしている第三国への制裁

Sanctioning Third-Country Enablers of Russia’s War Against Ukraine - United States Department of State

米国は、同盟国やパートナーと連携してすでに実施している前例のない措置に基づき、本日、ロシアのウクライナに対する違法な戦争を可能にしたとして、約 400 の団体および個人に制裁を課す。この措置は、ロシアの戦争活動に不可欠な複数の分野を標的としている。


対象の企業名と制裁理由は以下のページに。

New Measures Targeting Third-Country Enablers Supporting Russia’s Military-Industrial Base - United States Department of State

   
国務省の発表文 Fact Sheet(2024年10月30日)
国務省の発表文 Fact Sheet




もちろん、対象となったシンガポールやマレーシアでは現地報道もあった。


CNA の11月1日の記事:

Five Singapore-based firms sanctioned by the US for enabling Russia's war effort - CNA

米国政府は水曜日(10月30日)、進行中のウクライナ戦争でロシアの取り組みを支援したとして、シンガポールに拠点を置く5つの企業に米国による制裁措置を課したと発表した。

また、これらの企業は米国財務省の外国資産管理局(OFAC)によって特別指定国民リストに追加された。


Malay Mail の11月3日の記事:

US sanctions six Malaysian firms for breaching embargo on Russia | Malay Mail

ロシアの製造業部門で事業を行っている、または過去に事業を行っていた、あるいはロシアの製造業部門を支援したとして米国務省から制裁を受けた約 400 の団体および個人の中には、マレーシアに拠点を置く 6 つの企業が含まれています。

リストに挙げられている 6 つの企業は、Zeolite Mansford Sdn Bhd (Zeolite)、Maxtrum Capital Sdn Bhd (Maxtrum)、Centrina United Sdn Bhd (Centrina)、Gyntec Carbon Sdn Bhd (Gyntec)、Moralability Industrial Sdn Bhd (Moralability)、および Melix Global Sdn Bhd (Melix Global) 。


この件については今までのところ、大騒ぎになっているわけではない。

だが、東南アジアの一部の国での米国に対する警戒感・嫌悪感は増大していると見ておいた方が良い。

というのも、同地域の企業は、米国の対中関税の拡大で、すでに影響を受けているからだ。


対中のとばっちりで高関税を課された東南アジアのソーラーパネル


CNA の11月2日の分析記事:

大統領選で誰が勝っても米国の中国製品に対する厳しい姿勢は不変、東南アジアの企業に打撃

US’ tough stance against Chinese products to stay regardless of who wins presidential race, hitting firms in Southeast Asia - CNA

(前略)

専門家らによると、11月5日の大統領選でドナルド・トランプ前米大統領が勝利した場合、マレーシアはより厳しい関税に備える必要があるかもしれない。次期リーダーが誰になろうと、米国の保護主義は今後も続くだろう。

東南アジアの4カ国は、企業がサプライチェーンを多様化して中国製品への関税を回避する「チャイナ・プラス・ワン」戦略から恩恵を受けている国々だ。米中貿易戦争は、米国が中国の不公正な貿易慣行と名付けた行為をめぐって2018年に始まった。

この現象は「東南アジア・ウォッシング」とも呼ばれ、中国企業が事業を同地域の国に移転することで製品の原産地を隠そうとする行為を指す。

今月、米国はジンコ・ソーラーやトリナ・ソーラーなどの中国企業が工場を構える4カ国からの太陽光発電製品の輸入に関税を課し始めた。

新しい関税制度では、米国に輸出されるマレーシアの太陽光発電設備には9.13%の関税がかかる。タイ製には23.06%の関税が課せられ、ベトナム製は2.85%、カンボジア製は8.25%となる。

この税率は暫定的で、一部の専門家が予想していたよりも低いが、米国商務省が生産に対する補助比率として計算した額である。

業界関係者によると、米国の関税はマレーシアの太陽光発電業界に暗い影を落としており、ブルームバーグは8月下旬、少なくとも3社の中国太陽光発電会社がタイ、ベトナム、マレーシアでの事業を縮小したと報じた。


この記事では、「半導体とデータセンターは関税の影響を受けるのか?」と題して、米国の対中関税が半導体やデータセンターにも打撃を与えるのではないか、との地元産業界の懸念も伝えている。


マレーシア半導体産業協会のウォン・シューハイ会長は、米国の規制により同産業が「まもなく」行き詰まるのではないかと懸念している。

米国は5月、国内での半導体製造能力を高める措置の一環として、中国製半導体への関税を2025年までに25%から50%に引き上げると発表した。

「中国企業は、自社製品が確実に売れるようにしたいという野心を持っており、それを世界中に売りたいと考えている。しかし、現在(米国では)『中国恐怖症』が蔓延しており、これはもはや国家安全保障とは何の関係もない」とウォン氏は語った。



とはいえ、中国企業は米国から高関税を課されれば、迂回先・手段を追求する。

これまでは、中国とほぼ地続きの東南アジアは、その第一候補だった。


一方で、東南アジアの主要国は、中国にも米国にも政治・軍事の深い関係には立ち入らず、両国と貿易を拡大することで経済成長してきた。

そろそろその成長戦略は危うい地点に到達しつつあるのかもしれない。





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