マレーシア・サラワク州の長期滞在ビザ(S-MM2H)の条件が厳格化へ、いったい何が目的なのか?

 


東南アジア株式新聞 2024年11月2日

マレーシア・サラワク州の長期滞在ビザ(S-MM2H)の条件が厳格化へ、いったい何が目的なのか?


マレーシア国とその一部の州はMM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)という長期滞在ビザを用意している。

文字通りには、マレーシア、またはその一部の州、に別荘(セカンド・ホーム)を持って住め、という制度だ。


サラワク州のビザは、マレーシアのMM2Hより条件が緩かったはずだが、それはクアラルンプールなど半島部ではなく、ボルネオ島サラワク州に多くの対象者を誘致するためではなかったのか。

厳格化すれば、半島部側と差がなくなる。なぜ厳格化を?

州政府の発表では理由は述べられなかった。

  
S-MM2H のサイト画面
S-MM2H のサイト画面


マレーシアのニュースで次のような記事をみつけた。


The Malay Mail の10月31日の記事:

サラワク州、1月1日からS-MM2H入国規制を厳格化へ、定期預金や居住要件を追加、州大臣が発表

Sarawak to tighten S-MM2H entry rules starting Jan 1; adds fixed deposit, residency requirements, says state minister | Malay Mail


内容は州の発表そのままなので、州のサイトを探して以下を見つけた。

少し長いが発表文をそのまま日本語訳した。


News - Ministry of Tourism, Creative Industry and Performing Arts Sarawak


1月1日よりサラワク-MM2Hの新要件

2024年10月31日掲載


来年1月1日より、サラワク-マレーシア マイセカンドホーム (S-MM2H) プログラムの申請は新要件に準拠する必要があると、州の観光・クリエイティブ産業・舞台芸術大臣、(称号ダトゥク・スリ)アブドゥル・カリム・ラーマン・ハムザ氏は述べた。


同氏は、新要件の1つとして、申請者はマレーシアと外交関係のある国の国民で、30歳以上でなければならないと述べた。

「サラワクの地元銀行に定期預金口座(Fixed Deposit Account)を開設することが義務付けられており、配偶者と扶養家族を含めて申請ごとにRM500,000の金額が必要です。

「S-MM2Hパス保有者全員は、ビザの延長または更新の条件の1つとして、サラワク州に年間30日間以上滞在する必要があります。S-MM2Hパスの有効期間は5年間のままで、参加者はさらに5年間申請を更新できます」と彼は述べた。


彼によると、S-MM2Hプログラムに参加している上位10カ国は、中国(391人)、英国(350人)、台湾(262人)、香港(255人)、米国(210人)、シンガポール(207人)、韓国(178人)、日本(138人)、オーストラリア(121人)、インドネシア(117人)である。


アブドゥル・カリム氏は、S-MM2H申請に関する詳細は、州のウェブサイト(https://mtcp.sarawak.gov.my)で入手できると述べた。



整理すると、新要件は以下のようなことらしい。

  • 申請者はマレーシアと外交関係のある国の国民で、30歳以上

  • サラワクの銀行に Fixed Deposit、申請者ごとに50万リンギット

  • 更新のためには、サラワク州に年間30日以上滞在しなければならない 

  • 有効期限は5年間のままだが、さらに5年間更新できる



日本語情報誌『マレーシア 生活 & ビジネスガイドブック 2024』(発行:MEGA GLOBAL MEDIA MALAYSIA SDN. BHD.)によると、

「東マレーシアのサラワク州では、連邦政府の規定と異なる「S-MM2H」パスの発給を行っています。申請者が50歳以上の場合、連邦政府の規定より大幅に条件が緩いことから、一部のMM2H申請希望者がこちらに流れているという状況もあります。」


同誌が2023年11月現在の情報として書いているものから比較できるものとして Fixed Deposit の金額と滞在日数を見てみる。

連邦政府の MM2H:Fixed Deposit 「最低でも100万リンギ」、滞在日数「1年のうち累計で90日以上」

サラワクの S-MM2H:Fixed Deposit 「30万リンギ(夫婦)15万リンギ(単身)」、滞在日数「年間15日以上」


S-MM2Hでは、来年から、「申請者ごとに50万リンギット」「年間30日以上」に跳ね上がる。


とはいえ、連邦政府 MM2Hよりは緩いままだ。


どちらの MM2H も居住ビザで、現地で仕事をすることは許可されない(連邦政府の最上位クラスだけ、現地での労働も許可されるらしい)。

リタイアした人が年に何ヶ月か現地で暮らすことを想定している。

しかし、外国での収入を禁止されているわけではないので、日本など外国で不動産や株式配当などの収入が多くある人、外国で年数ヶ月働く人、リモート仕事で生活費を稼げる人なども、条件をクリアできる可能性はある。


サラワク州政府は厳格化の理由を公表していないので、推測してみる。

この種のビザでは、Fixed Deposit の一部を、不動産の購入や子供の教育などの資金として使うことができる。地元で住居を購入し、子育てをするのは歓迎されているのだ。

30万リンギ=約1000万円なので、その一部では家や教育費の資金として足りないと、不満が出ていた可能j性はあるだろう。

夫婦で100万リンギット=約3500万円なので、現実的な金額に近づく。


滞在日数は15日でも30日でもあまり違いがないような気がする。

年にきっちり半月だけサラワク州に居住する利用者がいたのだろうか?



さて、MM2Hについてこれ以上詳しく語るほどの情報を私は持っていない。

それに、連邦政府も州も必要条件を変更する頻度が高い。


詳しくは、その名も mm2h.com という情報サイトがあるので、参照してください。

Malaysia My Second Home



ところで、マレーシアの銀行での Fixed Deposit は現在、年率3%後半の金利が付く。

いまだに 0%近辺の日本の定期預金よりかなり有利だ。




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