ペトロナス主催の「Energy Asia 2025」【更新】
東南アジア株式新聞 2025年6月20日
ペトロナス主催の「Energy Asia 2025」【更新】日本企業も積極参加
マレーシアは投資誘致をアピール、地域の課題も議論
アジア地域のエネルギーに関する大規模フォーラム「Energy Asia 2025」(ペトロナス主催)が、
6月16日〜18日にクアラルンプール・コンベンションセンター(KLCC)で開催された。
第2回となる Energy Asia のテーマは「アジアのエネルギー転換の実現」。
現地報道によると、世界中から政策立案者、業界のリーダー、エネルギー専門家ら
約4,000人が集まった。
多くのセッションが用意され、登壇者は180人(日本人10数人を含む)を数えた。
地元マレーシアは、アンワル首相らがエネルギー分野での投資誘致の成功をアピールした。
専門家の議論からは、ASEAN地域のエネルギー事情について課題も示された。
日本企業も積極的に参加し、事業提携の発表も相次いだ。
商船三井がペトロナスと液化CO2輸送船の合弁会社
JERA、ペトロナスとLNGバリューチェーンで協業
出光、サラワク州沖で権益獲得
東南アジア株式新聞 2025年6月18日
マレーシアのアンワル首相のX投稿(6月16日):
今朝、私はクアラルンプールでペトロナス、OPEC、アラムコ、トタルエナジーズ、ENI、S&Pグローバル、
PTTEPなど、世界の大手エネルギー企業のトップとの非公開会議を開催しました。
会議後、すぐにEnergy Asia 2025開会式で基調講演を行いました。
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アンワル首相のX投稿 |
マレーシアでエネルギー投資拡大
Malaymail の6月16日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
TNBがAI駆動と蓄電池による電力網アップグレードに430億リンギット投資、アンワル首相
国営電力会社テナガ・ナショナル(TNB)は、全国送電網インフラのアップグレードに430億リンギット
を投じると、アンワル・イブラヒム首相は述べた。
首相は、このアップグレードには人工知能(AI)と蓄電池システムを導入し、
将来に向けたレジリエンスと柔軟性を高めると述べた。
「既存のエネルギーシステムにおける効率性の向上と排出量の削減に投資しなければなりません。
化石燃料が依然として世界の供給量の約80%を占めていることを考えると、これは非常に困難な課題です。
最も重要なのは、この移行が公平性に根ざしていなければならないということです」と、
首相は本日開催された「Energy Asia 2025」会議の基調講演で述べた。
アンワル首相は、マレーシアのエネルギー政策を語る中で、自国の取り組みを紹介した。
国営石油・ガス会社のペトロナスの取り組みに触れた発言もあった。
ペトロナスは、マレーシア沖合海域に3つのCCS(炭素回収・貯留)ハブを建設する計画を
主導している。これは、排出削減が困難な他の産業にも貢献する。
マレーシアのCCSの取り組みには、日本、韓国、そしてトタルやシェルといった
世界的なエネルギー企業を含む10社以上の国際パートナーが関与している。
ペトロナスは、ENEOS、三菱商事、JX石油開発と協力し、東京湾岸地域からマレーシアへの
二酸化炭素の輸送・貯留の可能性を探っている。これは、ASEAN地域にとって有望な
収入源となる可能性もある。
6月17日のロイター電:
シェルがマレーシアへの投資を20億ドル増額:同国首相
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は火曜日、シェル(SHEL.L)が今後2~3年で
マレーシアへの投資を90億リンギ(21億2000万ドル)増やすと発表した。
アンワル首相は、シェルのワエル・サワンCEOとの会談後、フェイスブックへの投稿で、
シェルの投資拡大はマレーシア人に高技能雇用の機会を創出すると述べた。詳細は明らかにしなかった。
シェルはロンドン本拠の国際石油資本。
グローバルCEO ワエル・サワン氏が6月17日にアンワル首相を訪問し、投資計画を伝えた。
The Edge Malaysia の6月18日の記事:
米石油大手コノコフィリップス、サバ州への投資を検討
マレーシアへのコミットメントを再確認
米国の石油大手コノコフィリップス(ConocoPhillips)は、マレーシアへの長期的なコミットメントを
改めて示すとともに、サバ州への潜在的な投資に目を向けていることを明らかにした。
ライアン・ランスCEOは、同社は現在、マレーシアにおける投資機会についてペトロナスと協議中だと述べた。
「今後、サバ州への投資を進め、ペトロナスと多くの機会を模索しています」と、
同CEOは水曜日に当地で行われた「ガスと液化天然ガス(LNG):長期投資」と題した
リーダーシップ・ダイアログ・セッションに参加した後、ベルナマ通信に語った。
コノコフィリップスは米ヒューストンに本社を置く国際石油資本。
最近、マレーシアでの操業でちょっとした話題になった。
同社は4月30日、サラワク州沖のサラム・パタワリ深海油ガス田(ブロックWL4-00)の操業から
撤退したと発表した。
同社は簡潔な声明で、今回の撤退は「国家戦略の見直し」の一環だと述べ、
詳細は明らかにしなかった。
そのコノコフィリップスが今度はサバ州で投資機会を探っているという。
東南アジアの送電網は課題が多い
Energy Asia 2025 では、低炭素化へ向けたアジアのエネルギー政策・事業などの問題点も
議論された。
The Edge Malaysia の6月16日の記事:
東南アジアは地域送電網の推進にインフラと政策ギャップに直面、と業界リーダーたち
東南アジアには電力取引に関する統一的な規制と市場の枠組みが欠如しており、
協力に向けた強い政治的意思があるにもかかわらず、これが地域電力網の発展を阻む大きなボトルネック
となっていると、月曜日に開催された「Energy Asia 2025」会議で業界リーダーたちは述べた。
地域相互接続に関するパネルセッションで講演した
Asean Centre for Energy(ACE)、インドネシアのプルタミナ、UAEのマスダール(Masdar)の代表者は、
地域全体で再生可能エネルギーの統合を拡大する上での大きな課題として、
国境を越えた調整、規制の明確化、そして送電網インフラにおけるギャップを強調した。
この記事の中から専門家の発言をまとめてみた。
ACEの発電・相互接続担当マネージャー、ナディラ・シャニ氏:
インドネシア、タイ、シンガポールなどが強力な二国間コミットメントを示しているが、地域的なエネルギー計画プラットフォームがないことが拡張性を制限している。
ACEは現在、ASEAN電力網構想に基づく18の優先相互接続プロジェクトを追跡しているが、進捗状況は依然としてまちまちである。
マスダールのアジア太平洋地域事業開発責任者であるファティマ・アル・スワイディ氏:
東南アジアの送電網インフラは遅れている。
東南アジア地域における許可手続きの断片化と開発期間の長さが投資家の阻害要因になっている。
エネルギー需要の増大に対応が必要
NST Online の6月17日の記事:
ペトロナスCEO:マレーシアは5年以内にエネルギー純輸入国になる可能性がある
ペトロナス社長兼グループCEOの(称号 トゥンク・タン・スリ)ムハンマド・タウフィク氏は、
電力需要の増加に伴い、マレーシアは今後5年以内にエネルギー純輸入国になる可能性があると述べた。
タウフィク氏は、この需要急増は急速な経済発展、中流階級の拡大、
そして人工知能(AI)などの技術への依存度の高まりによって引き起こされていると述べた。
「Energy Asia 2025」で行われた記者会見で、タウフィク氏は、
現在の電力供給インフラでは、年間6.5%の伸びを見せている需要の急増に対応しきれない可能性がある
と警告した。
タウフィク氏は、同社は既にこのシナリオに備えており、
マラッカとジョホールに続く3番目の再ガス化ターミナルの建設に取り組んでいると述べた。
マレーシアがエネルギー輸入国に、というのはちょっとびっくりした。
Energy Asia 2025 に合わせて行われた日本企業の発表
商船三井の6月17日の発表:
株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区)は、マレーシア国営エネルギー事業会社
Petroliam Nasional Berhad グループの2社、
PETRONAS CCS Ventures Sdn. Bhd.(本社:マレーシア、PCCSV)
およびMISC BERHAD(本社:マレーシア、MISC)と、
液化CO2輸送船(LCO2船)の開発・保有を目的とした船主合弁会社(社名: Jules Nautica Sdn. Bhd.)を
設立しました。
CO2の排出事業者および貯留事業者との戦略的なパートナーシップを通じて、環境問題の解決などの多様なニーズに対応するため国境を越えたソリューションを提供します。
Jeraの6月17日の発表:
LNGの安定供給などに向けたマレーシアのペトロナス社との
LNGバリューチェーン協業の強化に関する覚書締結について
株式会社JERAは、※昨日、マレーシアの国営石油・天然ガス会社である
Petroliam Nasional Berhad(ペトロナス社)との間で、LNGバリューチェーン協業の強化に関する覚書を
締結しました。
当社とペトロナス社は、約40年の間、LNGの売買を通じて良好な関係を築いてきました。
当社は、マレーシアをはじめとする各国からLNGを安定的に調達し、日本国内への安定的なエネルギー供給の
確保に努めており、世界有数の燃料生産者であるペトロナス社と当社の間の協力関係を強化することは、
お互いの事業機会の拡大のみならず、国際的なエネルギーの安定供給にも寄与できるものと考えております。
このたび締結した覚書は、日本への安定的なLNG供給などに向けて、LNGバリューチェーン全体への
更なる両社の連携の可能性を協議することを定めたものです。
同社とともにLNGバリューチェーン事業機会を追求していくことで、市場のニーズに合致したクリーンエネルギーソリューションの提供に貢献できる可能性があると考えております。
6月20日追記
マレーシアでの油ガス田探鉱開発事業に参入
サラワク州沖 2 鉱区の権益を取得
出光興産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:酒井則明)は、
マレーシア・サラワク州沖合に位置する 2 鉱区(SK427 および Ketapu Cluster)の権益を、
韓国の SK earthon Co., Ltd. から取得し、当 該鉱区に関する生産物分与契約を、
マレーシアの国営石油会社である Petroliam Nasional Berhad(PETRONAS)、
サラワク州営石油・ガス会社 Petroleum Sarawak Exploration and Production Sdn. Bhd.、SK earthon との
4 社 間で締結しました。
当社が取得した当該鉱区の権益は 40%であり、生産物分与契約の締結に より、
当該鉱区における 40%分の石油および天然ガスの探鉱・開発・生産権を有することに なります。
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