タイ、インバウンド観光が不調(25年第1四半期)

東南アジア株式新聞 2025年6月4日

タイ、インバウンド観光が不調(25年第1四半期)

アジアの観光大国、タイが今年は外国人観光客の誘致に苦労している。

特に、1月の中国俳優誘拐事件をきっかけに、

中国人がタイの安全性に不安を持ったのが大きな痛手だった。


タイ政府は、外国人(特に中国人)観光客誘致策を次々に打ち出している。

だが、効果は今のところあまり大きくない。


タイは東南アジアの観光大国であり続けられるのだろうか?



東南アジアの観光大国が入れ替わる?


VnExpress International の6月3日の記事:

マレーシアがタイを破り東南アジアの観光王者に

マレーシアは今年第1四半期に1,010万人の外国人観光客を受け入れた。

ビザ緩和政策の恩恵を受け、東南アジアで最も多くの観光客が訪れる国となった。

公式データによると、長年首位を維持してきたタイは955万人で2位、

ベトナム(600万人)、シンガポール(431万人)と続いた。


ビザ緩和策というのは、マレーシアが最近、中国人旅行者に対するビザ免除を5年間延長したこと。


タイは長年、東南アジアでナンバーワンのインバウンド観光大国だった。

日本が近年インバウンド観光に力を入れるまでは、アジアで断トツの観光大国だった。


隣国マレーシアが台頭してきたのも確かだが、

タイの観光産業は今年、不振にあえいでいると言わざるを得ない。

きっかけは、1月に起きた中国人俳優の誘拐事件。


中国人俳優の星星(シン・シン)がタイで拉致され、ミャンマーに連行され、

詐欺の拠点に監禁されたという事件があった(後に救出された)。

この事件は、タイを訪れる中国人観光客の安全に対する懸念を引き起こし、

イベントや旅行計画のキャンセルにつながった。


タイ政府は状況改善のため行動しているが、現在までのところ、あまり改善していない。

中国人は旅行先としてタイより、日本やマレーシアを選ぶようになった。


ちなみに、第1四半期(1-3月)の数字を比較すると、日本がマレーシアを上回っている。

同四半期に、日本が受け入れた外国人観光客(訪日外客数)は、1,053万人(JINTO統計より)。

4月も、304万人と日本のインバウンド観光は絶好調だ。




タイ政府の外国人観光客誘致策は実を結ぶか?  

タイ政府観光庁(TAT)の5月の国際旅客到着数データ

https://marketingdb.tat.or.th/en/web/guest/tatwebportallink

中国人観光客の誘致のため、タイ政府はいろんな手を打ってきた。

まず、1月のシンシン事件後、大規模な詐欺グループを摘発し、安全性をアピールした。

ペートンタン首相のAI画像が中国語で話すという催しもあった。

2月には、ペートンタン首相が訪中し、タイへの観光旅行を検討してくれるよう呼びかけた。


最新版は以下。


The Nation Thailand の5月29日の記事:

首相が「サワディー・ニーハオ」イベントを開始、タイの安全への信頼を強化

首相は、両国の観光振興政策の成果として、観光はタイと中国をより深く結びつける重要な架け橋の一つ

となっていると述べた。

  

首相の2025年5月29日のX投稿
首相の5月29日のX投稿

ハロー・ニーハオ 🇹🇭🇨🇳🤝

タイと中国の外交関係樹立50周年を記念して


タイと中国の外交関係樹立50周年と両国国民の深い友情を祝うイベント

「ハロー・ニーハオ」#SAWASDEENIHAO のオープニングにぜひご参加ください。


#観光は、タイと中国を深く結びつける重要な架け橋の一つです。

なぜなら、この旅は単なる観光のためではなく、友情と文化の旅であり、

双方の人々が笑顔と温かさを持って互いを訪れることができるからです。


昨年、670万人の中国人観光客がタイを訪れ、タイで最大の観光客グループとなりました。

これは両国の観光支援政策、特に今年はタイ政府が

「アメイジング・タイランド・グランド・ツーリズム・アンド・スポーツ・イヤー」と宣言し、

あらゆる面で観光の質を向上させた成果です。

(以下略)


タイ政府は、中国人以外へのマーケティング強化もしている。


The Nation Thailand の5月30日の記事:

TATは観光促進のため日本の3都市でロードショーを実施

2025年には550億バーツの収益を目指す

タイ政府観光庁(TAT)は、日本の主要3都市で

「アメイジング・タイランド・ロードショー・トゥ・ジャパン2025」を開催しました。

これは、日本からタイへの旅行を促進し、観光収入を550億バーツに引き上げることを目指しています。

このロードショーでは、タイの観光事業者が一堂に会し、商談を行い、

タイを人気の旅行先としてPRします。


3都市は、東京、名古屋、福岡。


このようにタイ政府の努力は目立っている。

だが、タイの観光産業界は、観光客数の回復という成果を見ないことには不安が消えない。


The Bangkok Post の6月3日の記事: 

タイの観光セクターの大幅な向上を求める声

観光業界の団体、タイ観光協議会(TCT)が、ペートンタン首相宛てに書簡を提出する、という記事だ。


バンコク・ポストに取材に対し、TCT会長のチャイ・アルナーノンチャイ氏は、

「タイは持続可能で質の高い観光地となるために、そのレベルアップを図らなければなりません」

と述べたという。


同会長は以下のような提案をしている。

  • 政府は、観光客が直面する詐欺や悪質な行為を早急に解決すべきだ

  • 政府は、効果的な事例監視・評価システムを構築し、関係当局間の連携を確保する必要がある

  • 持続可能な観光の推進、事業者への教育、そして様々なステークホルダーとの調整を専門とする

新たな組織の設立が不可欠だ































































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