ラオスは危険な国?米国の入国制限リストに登場
東南アジア株式新聞 2025年6月5日
ラオスは危険な国?米国の入国制限リストに登場
日本経済新聞の6月5日の記事:
トランプ氏、イランなど12カ国からの入国原則禁止 7カ国にも制限
トランプ米大統領は4日、国家安全保障を理由にアフガニスタンやミャンマーなど12カ国
からの入国を原則禁止する大統領令に署名した。
キューバなど7カ国からの入国も制限する。
トランプ氏は大統領令で
「大統領として、私は米国と米国民の国家安全保障と国益を守るために行動しなくてはならない」
と表明した。
東南アジアからは、ミャンマーとラオスが入国禁止国リストに入った。
ミャンマーは内戦中で軍事政権に統治されていない土地がある、
だから反米テロリストが隠れている可能性がある、ということかもしれない。
だが、ラオスの何が、米国の安全保障にとって脅威なのだろうか?
アジアからは、ミャンマーとラオスの国民が入国禁止に
米ホワイトハウスの6月4日発表の大統領令に付属した文書を見てみる。
ファクトシート
ファクトシート:ドナルド・J・トランプ大統領、外国人の入国を制限
外国のテロリストやその他の国家安全保障および公共の安全を脅かす脅威から米国を守るため
このファクトシートには、入国禁止または制限の理由として以下の項目が述べられている。
審査および身元確認のプロセスが不十分な国
ビザのオーバーステイ率が高く、米国の負担が増大
身元情報や脅威に関する情報の共有における協力が不足
テロリストの存在や国家支援テロが顕著
歴史的に、強制送還された国民の受け入れをしなかった
9日の発効後、これらの国の国民が米国へ入国する場合、米司法省や国務省が特別に認める必要がある。
さて、東南アジアからは、ミャンマーとラオスが入国禁止となった。
発表文のファクトシートで国別の理由を見ると以下の通り。
ミャンマー(Burma)
オーバーステイ報告書によると、
ビルマのB1/B2ビザのオーバーステイ率は27.07%、
F、M、Jビザのオーバーステイ率は42.17%。
さらに、ビルマは歴史的に、米国が強制送還対象としている自国民の受け入れに非協力だ。
ラオス(Laos)
オーバーステイ報告書によると、
ラオスのB1/B2ビザのオーバーステイ率は34.77%、
F、M、Jビザのオーバーステイ率は6.49%。
ラオスは歴史的に、国外退去対象国民の受け入れを怠ってきた。
これらを見る限りでは、ミャンマーとラオスは、
期限切れビザで滞在する者が多いとか、米国からの強制送還に協力しないことが、
入国禁止の理由となった。
ミャンマーとラオスについては、
米国を害するテロリストが含まれる可能性から入国禁止にする、とは明言されていない。
イランに対する入国禁止の理由は、「Iran is a state sponsor of terrorism. 」と書かれている。
米国務省の海外渡航情報を見ると、渡航アドバイスが4段階で表示されている。
レベル 1(通常の注意を持って行動)からレベル4(渡航禁止)まで。
現時点(2025年6月5日)ではどうだろうか。
ミャンマーに対する米国民への渡航アドバイス
Burma (Myanmar) Travel Advisory
全体としては、Level 4: Do Not Travel(渡航禁止)
武力紛争、社会不安の可能性、現地法の恣意的な施行、劣悪な医療インフラ、地雷や不発弾、
犯罪、不当拘留などの理由から、ビルマへの渡航は避けてください。
(中略)
国務省は、米国民が軍事政権当局による不当拘禁の重大なリスクにさらされていると判断しています。
不当に拘禁された米国民は、長年にわたり劣悪な環境下で、公正かつ透明性のある待遇を受けず、
米国大使館職員やその家族との継続的な面会も認められないまま、拘禁されています。
ラオスに対する米国民への渡航アドバイス
全体としては、Level 2: Exercise Increased Caution(より慎重に行動)。
ただし、いくつかのエリアについて説明書きがある。
Xaisomboun Province – Level 3: Reconsider Travel(渡航を再考)
サイソムブーン県では暴力の脅威が続いている。
ミャンマーとの国境エリア – Level 2: Exercise Increased Caution(より慎重に行動)
これらの地域では、盗賊、麻薬密売人、その他違法行為を働く人々が活動しているほか、
ミャンマー政府に反対する武装集団も活動している。
サワンナケート県、シェンクアン県、サラワン県、カムムアン県、セコン県、チャンパーサック県、
フアパン県、アッタプー県、ルアンパバーン県、ビエンチャン県、および国道7号線沿いの地域
– Level 2: Exercise Increased Caution
この地域にはインドシナ戦争時に残された不発弾が多数存在する。
ラオスの場合、
ミャンマーとの国境エリアが犯罪者・武装集団の巣窟になっているのが問題視される。
ラオス国民として米国へ入国ビザ申請してくる者に「犯罪者・武装集団」が紛れ込む可能性はある。
そして、それをラオス政府はきちんと排除しない(または、できない)、
と米トランプ政権は考えたのかもしれない。
今のところ、ラオス政府は今回の米国の発表について反応していない(少なくとも英語で読める情報には、ない)。
トランプ政権が一方的に設定した相互関税もラオスは48%と高い税率を課される予定であり、
ラオスは今後、いろいろ対米交渉に苦労することになりそうだ。
コメント
コメントを投稿