シンガポール拠点のLCC、ジェットスター・アジアが事業停止
東南アジア株式新聞 2025年6月11日
シンガポール拠点のLCC、ジェットスター・アジアが事業停止
豪州カンタス航空の6月11日の発表:
カンタス・グループ、JETSTAR ASIA の事業停止へ
QANTAS GROUP TO CLOSE ITS INTRA-ASIA AIRLINE JETSTAR ASIA
グループのシンガポールを拠点とする格安航空会社(LCC)子会社のジェットスター・アジアは、近年、
ますます厳しい状況に直面しており、筆頭株主であるウェストブルック・インベストメンツと共同で、
同航空会社の閉鎖を決定しました。
(中略)
ジェットスター・アジアは、2025年7月31日の運航最終日まで、
今後7週間、段階的に減便を行いながら運航を継続します。
カンタス・グループが発表文に記した事業停止の理由は、
「サプライヤーコストの上昇、空港使用料の高騰、そして地域における競争激化の影響」で、
ジェットスター・アジアには、
「グループ内の好調な中核市場と同等の収益性を達成する能力が根本的に損なわれている」
ということだ。
ジェットスター・アジアは、今期中に3,500万ドルの基礎EBIT損失を計上する見込みだという。
オーストラリアとニュージーランドにおけるジェットスター航空(Jetstar Airways)の
国内線および国際線、そしてジェットスター・ジャパンには影響しない、とも言っている。
ジェットスター・ジャパンも同日、以下の発表をした。
ジェットスター・ジャパンの6月11日の発表:
大変残念ながら、シンガポールを拠点とするジェットスター・アジア航空(IATAコード:3K)の事業を、
2025年7月31日をもって終了することを決定いたしました。
(中略)
ジェットスター航空(JQ)のオーストラリアとアジアを結ぶ路線を含む全ての運航便、
およびジェットスター・ジャパン(GK)の全ての運航便においては、本件による影響は全くありません。
ジェットスター・ジャパンには、カンタスのほか、日本航空(JAL)、三菱商事なども出資しており、
カンタスだけの判断で事業停止にはならない。
Google Travel で「シンガポールからの安いフライト」を検索すると、
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Google Travel の画面 |
格安航空会社(LCC)の廃業やM&A(合併・買収)はよく起きる。
ジェットスター・アジアも、2005年にバリューエア(Valuair)を買収したところから
本格的にスタートしている。
バリューエアは前年(2004年)にシンガポールに登場した初のLCCだった。
シンガポール-バンコク間などで格安料金で運航したところ、
当時の大手航空会社から猛烈な反撃をくらった。
シンガポール航空(SIA)や香港キャセイパシフィックは、
同じ路線では、バリューエアとほぼ同じ料金まで下げた。
ジェットスターは2001年にカンタスがグループのLCCとして設立。
シンガポールを拠点とするジェットスター・アジアによって、東南アジア路線を開拓した。
だが、ASEANのLCC市場には多くのエアラインがひしめき、競争がとんでもなく厳しい。
エアアジアはマレーシアをマザー市場としながら、地域内の主要路線で大きなシェアを占めている。
その他にも、インドのIndiGo、インドネシアのライオン・エアなど独立系LCCが多い。
それに、ジェットスター・アジアのように、大手航空会社がLCC子会社を持つケースもある。
SIAのスクート、タイ国際航空のノックエアなどだ。
東南アジア-日本間だと、日本や韓国のLCC、中国のエアラインとも競争しなければならない。
シンガポール拠点のニュースチャネル CNAは、
ジェットスター事業停止のニュースを大きく取り上げていた。
ASEANの航空業界はコロナ禍の落ち込みから本来の水準まで回復してきたところだ。
SIAをはじめ大手エアラインの好決算ニュースが相次いだ。
それなのにLCCは経営難なのか?
そんな疑問に少し答えようとWeb版には以下のような解説記事を掲載した。
CNAの6月11日の記事:
解説:シンガポール航空をはじめとする航空会社は過去最高の利益を上げたが、
空業界の長期的な見通しはそれほど明るくない
筆者:NUSビジネススクールのニティン・パンガーカー氏
航空業界の長期的な見通しはそれほど明るくない
需要サイド:
米国の関税によりアジアの消費者の購買力が低下。アジア諸国における多国籍企業のプレゼンスが低下し、ビジネス旅行に影響を及ぼす可能性も。
多くのテクノロジー企業で大規模なレイオフが行われている。
米国のビザ政策に関する最近の不確実性により、米国との間の旅行需要が減少。
供給サイド:
既存航空会社の収益が堅調に推移する場合、新規航空会社の参入が見込まれる。
既存航空会社が積極的に座席数を増やすことで需要に対応すると収益は徐々に低下する。
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