マレーシアのサラワク州、日本企業・人の誘致に熱(25年6月)[増補]
東南アジア株式新聞 2025年6月3日(7日に追記)
マレーシアのサラワク州、日本企業・人の誘致に熱(25年6月)
東マレーシア(ボルネオ島)のサラワク州が日本企業の誘致に熱心だ。
最近、サラワク関連で2つのニュースがあった。
州副首相が訪日し、同州へ投資する 2つのプロジェクトについて協議
JBICが州営サラワク・エナジーと戦略的提携
サラワクは、マレーシア政府とは別に、エネルギーやデジタル産業を発展させる戦略を遂行している。
その戦略的なパートナーとして日本企業の誘致を重視しているようだ。
3月には、MUFGバンク(マレーシア)がサラワク州系のマレーシアの大手銀行、
アフィン銀行と提携したが、
そのときも、再生可能エネルギーとデジタル化を協力の中心としていた。
同州は今、日本の企業だけでなく日本人も誘致のターゲットにしている。
州副首相が訪日し、同州へ投資する 2つのプロジェクトについて協議
Sarawak Tribune の6月2日の記事:
サラワク、日本企業主導の投資 15億米ドルを確保
大阪発:サラワク州は、先端技術および化学産業分野において、
総額15億米ドル規模の2つの大規模製造プロジェクトが現在進行中であり、
日本企業にとっての主要な投資拠点としての地位を改めて確固たるものにした。
アマル・アワン・テンガ・アリ・ハサン州副首相兼国際貿易産業投資大臣は本日(6月2日)、
主要な日本の投資家およびそのパートナーと会談し、これらの高価値プロジェクトに関する協議を進めた。
会談では、株式会社トクヤマ(日本)がOCI Company Ltd(韓国)と共同で、
サラワク州に建設予定の4億3,500万米ドル規模の最先端半導体グレード多結晶シリコン製造施設について
最新情報を提供しました。
トクヤマはマレーシア、それもサラワクに一度進出していたが、2017年に撤退した経緯がある。
太陽光発電パネルに使用される多結晶シリコンの工場を作ったが、
操業開始時点で太陽光発電パネルの市場が崩れて採算が取れなくなっていたため、
韓国のOCIへ売却したのだった。
そのOCIと組んで、トクヤマはマレーシアで再挑戦する。
今後は半導体用の多結晶シリコンだ。
そのプロジェクト自体はすでに日本でも記事になっているが、
準備に時間をかけている間に投資額が増えたようだ。2023年の時点では約3億ドルだった。
日本経済新聞の 2023年12月13日の記事:
トクヤマ、韓国大手と合弁設立 マレーシアで半導体材料 - 日本経済新聞
トクヤマは13日、半導体ウエハーの原料となる多結晶シリコンの生産で、
同材料で韓国大手のOCIと合弁会社をマレーシアに設立すると発表した。
2社で約3億ドル(約435億円)を投じ、年間約8000トンを生産する。
共同で投資することで資金負担を抑えつつ設備を大型化し、中長期の半導体用需要の増加に備える。
ところで、前述の Sarawak Tribune の記事には、続きがある。
トクヤマおよびOCIとの協議に続き、天然資源・都市開発省第二大臣を兼務するアワン・テンガ氏は、
サラワク州における10億米ドル規模の化学産業への大規模投資を特徴とする、
日本の著名な投資家による別のコンソーシアムとのプロジェクトに関する協議を主導した。
同グループは、プロジェクトの現地評価と実現可能性調査を開始した。
州政府は会議において、プロジェクトの承認を迅速に進めると表明しており、
コンソーシアムは今後、プロジェクトの最終投資決定(FID)を迅速化するために、
主要なマイルストーンの見直しを進める。
化学産業へ大規模投資する「日本の著名な投資家」とは?
同じ内容を記事にした他のメディアも見てみたが、投資家(企業)名はまだ公表されていない。
JBICが州営サラワク・エナジーと戦略的提携
国際協力銀行(JBIC)
JBICの6月2日のプレスリリース:
マレーシア法人Sarawak Energy Berhadとの戦略的業務協力に関する覚書を締結
株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:林 信光)は、5月31日、
マレーシア法人Sarawak Energy Berhad(SEB)との間で、
エネルギートランジションおよびアジア域内での送電網強化に向けた協力推進を目的とする戦略的業務協力
に関する覚書を締結しました。
SEBはマレーシア・サラワク州政府の電力会社であり、マレーシア最大の再エネ開発事業者です。
同州は、水力発電を中心に再生可能エネルギー資源が豊富であり、
同州からの再エネ電力供給に期待が寄せられています。
本覚書は、再エネの電源開発およびASEANにおいて広域な電力融通を可能とする電力網構想である
ASEAN Power Grid(APG)構想に沿った域内の送配電インフラの強化に向けて、
JBICとSEBの協力関係を強化することを目的とするものです。
日本企業が持続可能な脱炭素社会の実現に向けたビジネスに注力する中、SEBとの関係強化は、
日本企業のビジネスの拡大につながることが期待されます。
先日のASEANサミットで、議長国マレーシアのアンワル首相は ASEANパワー・グリッドについて、
強調していた。
その基本構想は、ベトナムの再エネをマレーシアへ送る送電網を作り、
その後、シンガポール、タイ、サラワク州へ送電網を拡大する計画だった。
そこまで進むには時間がかかるだろうが、
サラワク州が独自に送電網を建設する際に、日本企業が参加しておけば、
ASEAN域内での同種のプロジェクトを受注しやすくなる可能性はある。
長期滞在ビザでも日本人をターゲットに
以下の記事の後半に書かれているように、サラワク州は同州の長期滞在ビザ「SMM2H」でも
日本人を誘致ターゲットにしている。
Free Malaysia Today の6月5日の記事:
昨年以来、サラワク州のMM2Hで承認された外国人は800人以上
サラワク州政府は、過去17ヶ月間で「サラワク・マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(SMM2H)」プログラムへ
の申請を800件以上承認した。
サラワク州の観光・クリエイティブ産業・舞台芸術大臣であるアブドゥル・カリム・ラーマン・ハムザ氏は、
先日州議会でこのことを明らかにした。
(中略)
この間、中国人やヨーロッパ人の関心を集めてきたカリム氏だが、
州は今後、日本人申請者へのターゲットを絞っていくことに注力していくと述べた。
これは、日本からサラワク州を訪れる観光客が増加しているためだと、カリム氏は述べた。
「サラワク州が何を提供できるかは彼ら(日本人)次第ですが、私が観察する限りでは、
特にヨーロッパや中国からの申請者からは、サラワク州は医療施設が充実した安全な場所だと見られています」
と、本日クチンで行われたイベントで同氏は述べた。
彼はまた、子どもたちがサラワク州のいくつかのインターナショナルスクールで勉強できるため、
外国人がSMM2Hプログラムに参加する魅力がある要因として教育分野を挙げた。
SMM2Hは、マレーシア政府のMM2Hとは別に、サラワク州独自が設けている長期滞在ビザだ。
現地に預金する金額や最低滞在日数といった要件が、マレーシア政府の制度より少し緩い。
この記事に書かれた情報では、
SMM2Hは、2024年に560件、2025年は5月中旬までで265件が承認された。
これまで同州への移住は、中国と欧州の人からの申請が多かったらしい。
そして今、同州が注目しているのが日本人だ。
関連記事:マレーシア・サラワク州の挑戦【更新】
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