企業研究|GLP (GLP Pte Ltd)[更新]

東南アジア株式新聞 2025年6月12日

企業研究|GLP(GLP Pte Ltd) 

  • シンガポール発祥の多国籍不動産投資会社

  • 2009年に日本と中国で物流不動産の投資・開発のため設立

旧社名: Global Logistic Properties Limited

  • 2010年、シンガポール上場

  • 2014年に米国市場へ進出

  • 2018年にMBOにより非上場化

  • 2024年に国際ファンド運用事業をアレス・マネジメントに売却




GLPとアレス、日本でデータセンター特化ファンドをスタート


日本経済新聞の6月11日の記事:

日本GLP、データセンター特化ファンド 3500億円を調達



この記事の元の発表は以下。


アレス・マネジメントの6月11日の発表:

Ares Management Closes Inaugural US$2.4 Billion Data Center Development Fund in Japan


世界有数のオルタナティブ投資運用会社であるアレス・マネジメント・コーポレーション(NYSE: ARES)(アレス)は本日、ジャパンDCパートナーズI LP(JDC I)の最終クローズを発表しました。

これは、アレスにとって初のデータセンター投資・開発に特化した投資ビークルとなります。

総額約24億米ドル(3,500億円)の出資コミットメントを有する本ファンドは、

クラウドおよび人工知能(AI)アプリケーションからの急速に高まる需要に対応できる

十分な資金を有する、日本最大級のデータセンター投資家の一角となります。


JDC Iは、東京・首都圏における3つのデータセンター・キャンパスの開発に投資する計画だ。

これらのキャンパスは、合計で約240MWのIT負荷を供給することが見込まれている。

これらの開発資産は、再生可能エネルギーを活用した電源調達および

主要な節水プロトコルに準拠した冷却システムなど、高度なサステナビリティ基準を導入する。


キャンパスは、Aresのグローバル・データセンター・プラットフォームである、

Ada Infrastructure(Ada)によって開発・運営される。

Adaは、GLPがアレスに売却した事業の一部で、世界中に70名を超える専門家チームを擁している。


このファンドへ出資した主な機関投資家:

  • カナダ年金制度投資委員会(CPP Investments):約13億米ドル(1,930億円)

  • GLP Pte Ltd(GLP)



5月8日の発表:

GLPは2024年度のキャッシュフロー創出と安定した業績を報告

3億米ドルの3年満期シニア無担保債を発行


GLP Pte Ltd(GLP)は、2024年12月31日を期末とする会計年度(2024年度)の監査済み決算を発表しました。決算では、安定した業績、堅調な営業キャッシュフロー、プラスの純投資キャッシュフロー、そして収益化および負債削減戦略の継続的な進展が強調されました。


GLPの最高財務責任者(CFO)であるニコラス・ジョンソンは、「GLPの長年にわたる実績と強固なポートフォリオと慎重な資本管理は、市場の課題を乗り越えるための強固な基盤を提供し、長期的な戦略目標と合致する厳選された質の高い機会を追求することを可能にしています。グループは、物流、デジタルインフラ、エネルギー転換というニューエコノミーの重点分野に強い信念を持ち続け、すべてのステークホルダーへの長期的な価値創造に引き続き尽力します」と述べています。


とはいえ、財務諸表が公開されているわけではなく、

以下のような財務上のポイントとなるデータの発表だ。


  • 2024年度は、グループのリース比率90%、WALE(加重平均リース満期)3.5年の

健全な運用期間、そしてSSNOI(物件の賃貸営業利益)のプラス成長。

  • データセンターの売上高は前年比43%増の1億9,300万米ドルとなり、

EBITDAは5,100万米ドル。

  • 営業活動および投資活動による純キャッシュフローは、4倍以上の23億米ドルに達した。

  • 2024年度に20億米ドルの債券を償還し、借入金を12億米ドル削減。

  • GLP Pte Ltdは、2028年5月満期の3年シニア無担保債3億米ドルをクーポン9.75%で

発行。発行日は2025年5月20日を予定。





2025年3月3日の発表:

GLP、GCPインターナショナルのアレス・マネジメントへの売却を完了


GLPは本日、既に発表済みのGCP InternationalのAres Management Corporation(NYSE: ARES)への売却が

完了したことを発表しました。


2024年10月8日に既に発表済みのこの取引は、

現金とAres Class A普通株式を組み合わせた37億米ドルの初期購入価格に加え、

一定の業績目標の達成を条件として最大15億米ドルの追加アーンアウト条項で構成されています。




2025年4月1日の発表:


GLP、運用資産26億人民元のデータセンターファンドを設立


世界有数のテーマ型事業構築・投資運用会社であるGLPは本日、

運用資産残高26億人民元で、初のデジタルインフラ特化型戦略(GLP China IDC Income Fund I)を

クローズしたことを発表しました。


今回の資金調達は、中国および海外のトップクラスの機関投資家グループからの支援を受けており、

2018年以来、GLPが戦略的注力分野と位置付けている急成長中のニューエコノミー資産クラスにおける

重要な節目となります。

GLPは、物流業界の知見を活かし、技術設計、開発、資産管理、リース/販売、運用まで、

フルスタックのサービスを提供する垂直統合型プラットフォームを構築しました。


本ファンドは、GLPが開発し、大手eコマース企業に完全リースされている、

稼働済みの高性能データセンターを取得します。

北京首都圏に位置するこのシード資産は、環境持続可能性とエネルギー効率を重視し、Tier III+(T3+)基準に基づいて建設されています。




2024年10月8日の発表:


アレス・マネジメント・コーポレーション、GCPインターナショナルを買収


アレス・マネジメント・コーポレーション(NYSE: ARES)(アレス)は本日、

GLPキャピタル・パートナーズ・リミテッド(GCPインターナショナル)および

その関連会社の国際事業(グレーターチャイナを除く)および特定の運用ファンドに対する

既存の資本コミットメントを37億ドルで買収する正式契約を締結したことを発表しました。


買収対価には、約18億ドルの現金と慣例的な調整を条件に約19億ドルのアレスAクラス普通株式が含まれます。

本取引は、GCPインターナショナルのリーダーシップを

ファンド顧客およびアレス株主の利益と一致させるための長期業績インセンティブを含むように

構成されています。


本買収により、アレス・リアル・エステートは世界最大級の垂直統合型プラットフォームとしての地位を

確固たるものにし、運用資産(AUM)は北米、欧州、アジア、ラテンアメリカ全体で約960億ドルと

ほぼ倍増することになります。

この取引は、買収後の最初の暦年において、アレスのクラスA株および無議決権普通株式

1株当たりの税引き後実現利益に若干の増加をもたらすと予想され、将来的には大幅に増加すると予想されます。


アレス・マネジメント・コーポレーション(NYSE:ARES)は、大手のオルタナティブ投資運用会社。

クレジット、不動産、プライベートエクイティ、インフラなどの資産クラスにおいて、

プライマリーおよびセカンダリー投資をしている。



東南アジア株式新聞 2024年6月18日

多国籍不動産会社 GLP、日本のデータセンター投資を本格化


シンガポールの大手不動産(投資・開発)会社と言えば、

キャピタランド、ケッペル、シティ・デベロップメンツなどが有名だ。

シンガポール発祥(2018年までSGXに上場していた)の多国籍不動産会社 GLPも、

これから日本でよく知られるようになるだろう。


この不動産投資・開発会社は、2012年に物流不動産のJ-REITを上場していて、

日本で新顔というわけではない。

物流倉庫という目立たない分野を得意としているだけに、これまで一般には有名ではなかった。

GLPは最近、日本のデータセンターへの投資を本格化しており、これからはいろいろ目立ちそうだ。



日本経済新聞の6月18日の記事:

外資不動産、日本のデータセンター席巻 大和ハウス対抗


不動産外資大手が日本のデータセンタービジネスに押し寄せている。

香港ESRやシンガポールのGLPなどが首都圏や大阪都市部に進出し、日本勢は大和ハウス工業が対抗する。

主要顧客のクラウド大手は4兆円規模の投資を予定する。

生成AI(人工知能)の普及を見越し、巨大産業の陣取り合戦が続く。


記事には他に、米国、豪州の不動産投資・開発会社の名も登場する。

ESRとGLPを強調して取り上げたのは、

<両社は従来、日本では物流倉庫と商業ビルの開発に注力していた>が、

日本でデータセンター需要が盛り上がることにいち早く対応して、投資を始めただめだろう。



ところで、GLPを「シンガポールの」と形容するのは、実態と少し違う。

同社の公式サイトによると、次のように書かれている。

<GLP は、ブラジル、中国、ヨーロッパ、インド、日本、米国、ベトナムなど、

事業を展開するすべての国に本社を置くグローバル企業です。

シンガポールと香港にもオフィスがあります。>


2018年までシンガポール証券取引所(SGX)に上場していたが、今は非上場会社だ。

同じく公式サイトによると、所有者・大株主については次のように書かれている。

<GLP は、経営陣と機関投資家グループによって管理されている GLP Holdings LP によって

所有されています。>


GLP(グローバル・ロジスティックス・プロパティーズ)は

もともとシンガポール政府系資本によって創設された。

2017年に、中国万科(Vanke)など5社連合が約160億シンガポールドル(当時≒1兆3000億円)で

買収し、その後非上場化した。


昨年、資金繰り難に陥った万科が保有株式(GLPの21.4%)の売却方針を表明したが、

今までのところ売却先が見つかっていない。


巨額のAUM(預かり資産残高)はアジア太平洋の代表格


The Edge Singapore の5月29日の記事:

AUM race: ESR Group, GLP Capital Partners, 

and CapitaLand Investment top APAC AUM

(AUM競争:ESRグループ、GLPキャピタル・パートナーズ、

キャピタランド・インベストメントがアジア太平洋の上位に)


5月29日に発表されたANREV/INREV/NCREIFファンドマネージャー調査2024によると、

アジア太平洋地域では、ESRグループ、GLPキャピタル・パートナーズ、キャピタランド・インベストメントが

預かり資産残高(AUM)の点で不動産運用会社ランキングの上位を占めました。

チャーター・ホールとデクサスはそれぞれ4位と5位でトップ5を締めくくりました


記事では、アジア首位不動産運用会社のESR(AUM:1300億米ドル超)を

GLP(同:800億米ドル超)が追っている様子が紹介されている。

どちらも巨額だ。


にわかに顕在化した日本のデータセンター需要に、

両社が目を付けるのが速かったのも当然だったのかもしれない。






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