ハラール産業育成競争、マレーシアはトップ営業で中国から投資招く、インドネシアはジャカルタに育成拠点

 

東南アジア株式新聞 2024年9月18日

米国利下げ(予想)前日、東南アジア株式は様子見モード。

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

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ハラール産業育成競争、マレーシアはトップ営業で中国から投資招く、インドネシアはジャカルタに育成拠点


マレーシアとインドネシアがハラール(イスラム法において合法的なもの)産業の育成に一層の力を入れ始めた。


マレーシアは、イスラム教徒であるマレー系が多数派であるものの、中華系・インド系の国民も多いため、ハラールとそうでないものを日常的に意識している。

この文化交流から絶えず新しい産業が生じている。

たとえば、ハラール認証を受けた中華料理、日本料理などが開発され、マレーシア国内で消費されるだけでなく、他のイスラム教国へ売り込まれる。


中国や日本など非イスラム国家の企業から見れば、この商品・サービス開発とハラール認証までのマレーシアの機能が魅力になる。

マレーシア政府は現在、この魅力を活用して、外国から投資を呼び込み、国内産業を発展させる構えだ。

首相や副首相の外遊時にハラール産業を売り込み、最近では中国から投資を呼び込んだ。

そんな中、隣国のインドネシアが、ジャカルタにハラール産業育成拠点を設けた。



   
2024年9月17日のアンワル首相のX投稿、MIHAS 2024でハラール産業育成を約束
9月17日のアンワル首相のX投稿、MIHAS 2024でハラール産業育成を約束

The Star の9月17日の記事(中身は国営ベルナマ通信):

Anwar: Halal industry more comprehensive, can complement Islamic economy | The Star

アンワル首相:ハラール産業は包括的、イスラム経済を補完できる

ハラル産業は包括的であり、より広いコミュニティにプラスの影響を与えるため、イスラム経済を補完することができると、アンワル・イブラヒム首相は述べた。

ハラール産業は、農家、漁師、中小零細企業、小売業者など、コミュニティのあらゆる層を巻き込んでいると同首相は指摘した。

「MADANI経済の目標とマカーシド・シャリアの原則を達成するには、ほぼ全人口を巻き込む必要があります」と、同首相はマレーシア国際ハラル産業展示会(MIHAS 2024)の開会式で語った。


アンワル首相はスピーチの中で、特に最近訪問した国々の複数の外国指導者に対し、ハラール産業への強力な支援と、マレーシアのハラール産業推進への取り組みを認めてくれたことに感謝の意を表した。

同氏は、彼らがハラール産業に大きな関心を示し、その成長を促進する上でのマレーシア政府と当局の役割を認識していることを指摘し、ハラール関連分野を含む貿易と投資を促進するためにマレーシアの協力も求めていると付け加えた。


少し説明を加える。

  • MIHAS 2024は、マレーシア貿易開発公社(MATRADE)と投資貿易産業省(MITI)が共同で主催するハラール産業展示会。9月17日から9月20日まで開催。

  • MADANI経済は、アンワル政権のスローガン。持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやり、を中核的な価値とする。

  • マカーシド・シャリアの原則とは、イスラム教が求める人生の目的や生き方のことで、ひいては、人間の幸福を追求するようにビジネスをすること。



マレーシアは自国のハラール産業の外国への売り込みに熱心だ。

最近では、ハラール開発公社(HDC)が中国・上海でマレーシア・中国ハラルビジネス・フォーラムを開催し、アフマド・ザヒド副首相が中国の企業にマレーシアのハラール産業への投資を呼びかけた。


The Star の9月10日の記事(中身は国営ベルナマ通信):

Malaysia to get RM4b in potential halal industry investments from China — Ahmad Zahid

マレーシアは中国から40億リンギットのハラール産業投資を受ける可能性 — アフマド・ザヒド副首相

マレーシアの(敬称ダトゥク・スリ)アフマド・ザヒド・ハミディ副首相は、中国からのハラール産業への40億リンギット相当の新たな投資の可能性からマレーシアは恩恵を受けるだろうと述べた。

この莫大な投資の可能性は、マレーシア・中国ハラールビジネス・フォーラムに合わせて訪中した同氏とマレーシア代表団が火曜日に中国のハラール産業関係者と会談した結果であると副首相は述べた。


ハラール産業の規模:2030年までにマレーシアGDPの11%の予想も


コンサルタント会社 YCP Hodingsのリポート: 

The Economic Value of Malaysia’s Halal Industry | YCP Professional.


マレーシアのハラール経済価値は、総人口の63.5%を占める2,080万人のイスラム教徒人口によって牽引されています。マレーシアのハラール産業のGDPへの貢献は、2018年には7.8%を占め、2030年までに11%まで大幅に増加すると予想されています。2018年に280億米ドルであったハラールGDP価値は、2030年までに585億米ドルに達すると予測されており、5.8%の堅調なCAGRを反映しています。


さらに、マレーシアのハラール製品の年間輸出額は80億米ドルで、同国の総輸出額の約5.1%を占めています。今後、マレーシアのハラール産業の予測価値は2030年までに1,132億米ドルに達し、予測される世界市場価値の2%を占めると見込まれています。



このリポートでは、ハラール産業がマレーシア経済の幅広い分野をカバーしていることを説明している。

対象産業は、ハラール食品だけでなく、製薬、化粧品、モデストファッション、イスラム金融まで。

冒頭の記事でアンワル首相が強調しているように、ハラール産業は「包括的」なのだ。


強力なライバル登場?インドネシアがハラール市場に意欲

  

2024年9月17日のジョコ大統領のX投稿、イスラム金融センター設立について
9月17日のジョコ大統領のX投稿、イスラム金融センター設立について


インドネシア国営アンタラ通信の英語ニュース記事、9月17日:

Indonesia Islamic Financial Center for integrated sharia economy: Govt - ANTARA News

インドネシア、統合シャリア経済のためのイスラム金融センター:政府

新たに開設されたインドネシア・イスラム金融センターは、インドネシアのイスラム経済またはシャリア経済エコシステムに関連するすべての側面を統合することを目指していると、国営企業(SOE)大臣のエリック・トヒル氏は述べた。

火曜日、ジャカルタの国立記念碑(モナス)近くのセンター開設式でトヒル氏は、ジョコ・ウィドド大統領の10年にわたるリーダーシップの下、インドネシアはイスラム経済の分野で進歩を目の当たりにしてきたと強調した。

(中略)

この機会に、ジョコ大統領はインドネシアイスラム金融センターがインドネシア、特に銀行部門に進歩をもたらすことに楽観的な見方を示した。

大統領はまた、2億3600万人のイスラム教徒を抱えるインドネシアはイスラム経済を発展させる大きな可能性を秘めていると強調した。

この点で、大統領はインドネシアイスラム金融センターがインドネシアの広大なハラール産業市場をフルに活用するのに役立つと期待していると述べた。

大統領は「我々の巨大な市場が他の国々に利用されるのを許すわけにはいかない」と断言した。


大統領の言う「他の国々」の中にマレーシアが入っているのは確実だ。


同9月18日:

Indonesia should harness its vast halal industry market: Jokowi - ANTARA News

インドネシアは広大なハラール産業市場を活用すべき:ジョコ大統領

ジョコ・ウィドド大統領(ジョコウィ)は、約2億3600万人のイスラム教徒を抱えるインドネシアが、世界的なハラール産業市場としての巨大な潜在力を活用する必要性を強調した。

「インドネシアには2億3600万人のイスラム教徒がおり、巨大な市場となっていることは承知しています。これは他の国に奪われないように最大限に活用する必要がある大きな潜在力です」と同大統領は述べた。

同大統領は火曜日、ジャカルタのダナレクサタワーにあるインドネシア・イスラムセンター地区の開所式での演説でこの発言を行った。


マレーシアの隣国にして地域大国のインドネシアが、ハラール産業を明確に意識し始めた。

ジャカルタのシンボル、モナスの南側にある Danareksa Towerに、イスラム金融センターとイスラムセンター地区が開設された。

イスラム金融センターには、国営のイスラム銀行であるPT Bank Syariah Indonesiaが入居した。 

イスラムセンター地区(the Indonesia Islamic Center Area)には、モデストファッション、ハラール観光、ハラール料理の分野を含むハラール産業を集め、政府が産業発展を支援する予定だ。


ハラールが当然のことである中東イスラム諸国では、ハラール産業は意識されにくい。

インドネシアは、イスラム教徒が9割だが、マレーシアと同様に他のアジアや米国・欧州の文化も取り入れてきた。

同国は将来、マレーシアにとって強力なライバルになる可能性がある。




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