タイ株が8月後半から急復調、政府の景気刺激策や国営ファンドへの期待が支え

 

東南アジア株式新聞 2024年9月10日


シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3512.67

+0.46%

1660.35

+0.54%

7761.39

+0.76%

1428.03

-0.22%

17234.09

+0.22%


タイ株が8月後半から急復調、政府の景気刺激策や国営ファンドへの期待が支え


タイ株式の代表指数であるSET総合指数は、今年前半、弱かった。

近隣のマレーシア、インドネシアと比較してタイは景気に力強さがなく、セター前政権は景気刺激策を打ち出すとともに、中央銀行(BOT)に利下げを求めていた。


ようやく底を打ち、上昇に転じたのは8月6日、1274近辺でのこと。

8月16日にペートンタン新首相が議会で選出されて以降、さらに上昇に勢いがついた。

前政権から引き継いだ刺激策(デジタルウォレット給付金や国営ファンドの国内株投資枠の増額)が実施段階に入ったため、株式市場が活気づいた、ということらしい。

SET総合指数は過去3カ月で+ 7.38%も上昇した。

  
SET指数の6カ月(2024年9月10日、SET公式サイトより)
SET指数の6カ月(SET公式サイトより)

The Nation Thailand の9月9日の記事:

Thai stock market ‘bullish’ thanks to stimulus, political stability

タイ株式市場は景気刺激策と政治の安定により「強気」

投資家は、主に今後の景気刺激策と新首相と内閣による政治的安定により、タイ株式市場が今後3か月で「強気」に転じると予想している。


タイ資本市場組織連盟(the Federation of Thai Capital Market Organisations=FETCO)の会長コブサック・プートラコール氏は、同連盟が8月20日から31日まで月次投資家信頼感指数を実施したが、今後3か月の指数は132.51ポイントで「強気圏」にあることがわかったと述べた。

同氏は、投資家は国内経済の回復と政治的透明性の明るい兆候に加え、新政府の経済刺激策をタイ証券取引所への信頼を高める最も重要な要因と見ていると述べた。


この記事では、8月時点の FETCO 投資家信頼感指数(the FETCO Investor Confidence Index)の注目点を紹介している。


  • FETCO 投資家信頼感指数は、現在から 11 月まで 132.51 の「強気」ゾーンにあります (FETCO ICI 基準では「強気」を 120 ~ 159 に設定)

  • 個人投資家、自己勘定投資家、機関投資家、および外国人投資家の信頼感は「非常に強気」ゾーンにあります

  • 商業 (COMM) は最も魅力的なセクターです

  • 自動車 (AUTO) は最も魅力のないセクターです

  • 政府の景気刺激策は、タイの株式市場を動かす最も影響力のある要因です

  • 政治的不確実性は、タイの株式市場を妨げる最も重要な要因です



同じく The Nation 9月9日の以下の記事では、FETCO会長の意見を詳しく紹介し、2つの政府系ファンドからの株式市場への資金流入に触れている。

FETCO: Thai economy has passed its lowest point

FETCO: タイ経済は最低点を抜けた

バユパック・ファンドとタイESGファンドからの資本流入については、タイの資本市場に約2,600億~3,000億バーツが流入すると予想されており、政治情勢が安定するにつれて投資家の信頼が高まり、後押しとなる。


​​新政府の明確な経済政策により、これらの政策の継続性は安心できる。財務大臣が同じチームに所属し、同じ政策方針を持っているという事実により、バユパック・ファンドはすぐに前進することができる。この継続性は、これらの政策の実施を確実にする上で極めて重要である。


前述のファンドからの新たな資本流入は、間違いなくタイの資本市場をさらに牽引するだろう。当初、投資アナリスト協会(IAA)は、2024年第3四半期末までにタイ株価指数が約1,379ポイントになると予測していた。しかし、すでに1,420ポイントを超えている。当初の予測では、2024年末までに指数は1,462ポイントに達するとされていたが、政治見通しがより明確になったため、修正が必要になるかもしれない。



Bangkok Post の9月5日の記事では、ファンドのほか給付金政策の実行にも期待が高まっている、とを書いている。

Thai stocks and baht jump on cabinet news

タイの株価とバーツが内閣発足で急騰

タイ株は昨年3月以来最大の上昇を記録し、新政権発足後の政策継続に対する楽観論からバーツも上昇した。

(中略)

また、ペートンタン・シナワット首相と閣僚の任命を受けて、政治リスクは緩和されると見られている。

「投資家の信頼は高まっている」とメイバンク証券のプライムブローカー取引責任者、タレック・ホルチャニ氏は述べた。「政府が政策を審議した後、現金給付政策やその他の刺激策を開始できる」。

16歳以上の対象となるタイ人に1万バーツを支給する給付政策は、今月開始される予定。当初は最も困窮している人だけが現金で受け取る可能性がある。デジタルマネーの配布は、後日、さらに数百万人に実施される可能性がある。

投資家はまた、市場を支えるために国内株に投資する政府による新しいバユパック・ファンドの創設についても楽観的である。


バユパック・ファンドとは何なのか?


8月13日のロイター電:

Thailand to expand state equity fund by up to $4.3 bln to invest in local stocks | Reuters

タイ、国内株への投資のため国営株式ファンドを最大43億ドル拡大へ

タイ政府は、今年アジアで最悪のパフォーマンスとなっている株式市場を支援するため、国内株式への投資に充てる国営ミューチュアル・ファンドの規模を1000億~1500億バーツ(28億~43億ドル)拡大すると発表した。

(中略)

財務省事務次官ラバロン・サンスニット氏は、新ファンドの満期は10年で、取引所に登録されると述べた。詳細は後日発表される、と同氏は付け加えた。

同ファンドは主にタイ株式市場に上場されている証券に投資し、収益性が高く、長期安定性があり、コーポレートガバナンスが良好な企業に重点を置くとラバロン氏は述べた。

バユパック・ファンドの現在の資産価値は約3220億バーツで、主要保有銘柄にはタイ最大のエネルギー会社PTT(PTT.BK)、金融グループSCBX(SCB.BK)、クルンタイ銀行(KTB.BK)、などがある、とファンド・データは示している。


バユパック・ファンドという国営ミューチュアル・ファンドはすでに3220億バーツの規模になっているが、1000~1500億バーツを追加するというのが新ファンドだ。

その後の情報では、新バユパック・ファンドは10月1日から1500億バーツ以上が資本市場に流入し、株式市場に好影響を与えると期待されている。



株式市場に活気が戻ったのを受けて、IPO(新規上場)のニュースも出てきた。

Bangkok Post の9月10日の記事:

MR. D.I.Y. kicks off listing process

MR. D.I.Y. が上場プロセスを開始

急成長を遂げている総合住宅リフォームおよびライフスタイル小売業者であるMR. D.I.Y. Holding (Thailand) は、証券取引委員会 (SEC) に新規株式公開 (IPO) を申請した。

Bualuang Securities Plc と CIMB Thai Bank Plc が、タイ証券取引所への上場を進めるための財務アドバイザーに任命された。

MR. D.I.Y. の最高経営責任者である Chin Guangui 氏は、今年、同社がタイで成功を収めて 8 年目を迎えると述べた。



MR. D.I.Y.グループの本部であるMr DIY Group (M) Bhdは、マレーシア発祥の企業で、Bursa Malaysia に上場している。

MR. D.I.Y.の店舗は、住居と自動車関連のDo-It-Yourself(日曜大工)用品を豊富に揃えているだけでなく、食品・衣料なども売る大型小売店だ。



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