アジア開銀がアジア太平洋途上国の2024年成長予測を5.0%へ上方修正、しかし中国不安は残る

 

東南アジア株式新聞 2024年9月25日

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

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タイ

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香港

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3583.27

-1.09%

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+0.18%

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アジア開銀がアジア太平洋途上国の2024年成長予測を5.0%へ上方修正、しかし中国不安は残る


アジア開発銀行(ADB)が9月25日に発表したアジア太平洋地域の2024年経済成長予測の中で、途上国の成長予測を5.0%へ上方修正した。

上方修正の理由は、人工知能(AI)ブームなどで輸出が伸びる、インフレ率が低下傾向にある、などだ。

ただ、東南アジア地域については、ミャンマー、タイなどの減速から成長予測が下方修正となった。今年の成長予測は4.5%となった。


ADB予測では中国は今年4.8%成長予想のままだった。

中国は9月24日に大規模金融緩和策を発表し、中国株・香港株は上昇したが、世界的に広がる中国の減速不安は残ったままだ。



ADBの9月25日のニュースリリース:

ADB Raises Economic Growth Forecast for Developing Asia and the Pacific

ADB、アジア太平洋途上国の経済成長予測を上方修正

アジア開発銀行(ADB)は、堅調な国内需要と輸出の継続的な好調を背景に、今年のアジア太平洋発展途上地域の経済成長予測を引き上げました。ADBは地域のインフレ予測も引き下げました。

本日発表された2024年9月のアジア開発見通し(ADO)によると、この地域は今年5.0%の成長が見込まれており、4月の予測4.9%から上昇しています。来年の予測は4.9%に据え置かれています。アジア太平洋開発途上地域のインフレ率は、前回の予測3.2%から2024年にはさらに緩和し2.8%になると見込まれています。


経済見通しの改善は、東アジア、コーカサス、中央アジア、太平洋地域の予想を上回る成長を反映しています。人工知能ブームも一因となり半導体の世界的な需要が高まり輸出が伸びている一方、世界的な食料価格の下落と金融引き締め政策の遅れた効果によりインフレ率はパンデミック前の水準近くまで低下している。

(中略)

アジア太平洋の途上国最大の経済国である中国の成長予測は、今年は4.8%、来年は4.5%のままである。中国の不動産部門の弱さが長引いており、2024年の家計支出にマイナスの影響を与えている。これは、刺激的な金融・財政政策と輸出の増加に支えられた投資の増加によって部分的に相殺されている。

インドはアジア地域で2番目に大きい経済であり、政府支出の増加など国内需要が堅調なことから、2024年は4月から変わらず7.0%の成長が見込まれている。



経済成長予測のうち東南アジアだけを見てみる。

Economic Forecasts: Asian Development Outlook September 2024

東南アジア

政府の設備投資が低迷し、輸出回復が予想より遅いことが、今年の東南アジアの成長の足かせとなるだろう。2024年の地域別成長見通しは、ミャンマー、タイ、東ティモールの下方修正により4.5%に下方修正された。


政府支出が予想より低く、輸出回復が予想より弱いことが、タイの成長見通しを2024年に2.3%、2025年に2.7%に下方修正した背景で、4月の予測から0.3パーセントポイント下がった。また、資本集約型プロジェクトの遅れによる公共支出の減少により、東ティモールの成長率は2024年に3.1%、2025年に3.9%に修正された。ミャンマーでは、紛争が続く中、マクロ経済の不安定性、投入コストの上昇、投資の減少により、成長予測は2024年に0.8%、2025年に1.7%に下方修正された。一方、輸出の伸びが高まったため上方修正されたシンガポールを除き、東南アジアのその他の国では成長予測が維持されている。

   
ADB成長予測の東南アジア、2024年9月25日
ADB成長予測の東南アジア

中国の景気減速懸念、大規模金融緩和で払しょくできず


9月24日の中国の金融緩和策は、一部のメディアは、「バズーカ」と呼ぶほどだった。


日本経済新聞:

中国金融緩和 ついに「バズーカ」市場支援策も - 日本経済新聞

香港サウスチャイナ・モーニング・ポスト:

China rolls out heavyweight policies to support economy, led by mortgage rate cut | South China Morning Post

表に出た見出しは、China fires policy bazooka to boost economy, led by mortgage-rate cut, property measures とバズーカ付きだった。


最近中国が打ち出した主な景気刺激策は以下の通り。

  • 商業銀行から強制的に預かるお金の比率、預金準備率を0.5%引き下げる(1兆元を供給)

  • 主要銀行の資本増強

  • 消費者が住宅を買うときの頭金規制を緩和

  • 既存の住宅ローン金利引き下げ

  • 企業の自社株買い支援へ低利融資

  • 政府系ファンドの投資拡大

  • 上場企業のM&A(合併・買収)を促進


Xなどで中国の新政策に対する評価を見ていたが、あまり芳しくない。

中国の景気大幅減速の懸念は消えていない。


フィナンシャルタイムズの9月24日の社説 The FT View に以下の記事があった。

China’s stimulus is hefty but insufficient

中国の景気刺激策は強力だが不十分

(前略)

結局のところ、火曜日の景気刺激策は、中国の経済課題の現実にまだ対処できていない。国内需要は、高い予防的貯蓄率と民間部門への信頼の低さによって圧迫されている。北京の輸出主導の成長への願望も、米国との貿易戦争の激化によって圧力を受けている。最新の措置はこれらの問題に的を絞ったものではなく、北京の年間5%の経済成長目標を達成するための表面的な取り組みにすぎない可能性がある。


中国に必要なのは、需要を高め、デフレ圧力に打ち勝つための的を絞った財政刺激策だ。世帯、特に最貧困層は、後押しを必要としている。つまり、貯蓄を促す経済的不安を和らげるために、社会保障と医療支援を増やす必要がある。売れ残った住宅在庫の買い取りや企業投資のインセンティブも役立つだろう。そして、中国の投資家や起業家の野心を引き出すには、政策の安定と規制緩和が必要だ。そのためには、北京が巨額支出へ躊躇と民間部門を支配したいという願望を克服する必要がある。




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