米関税交渉の期限(7/9)目前、東南アジア諸国はわりと楽観

 

米関税交渉の期限(7/9)目前、東南アジア諸国はわりと楽観

東南アジア株式新聞 2025年7月2日



7月2日の日本経済新聞のトップ記事:

トランプ氏「日本との合意疑わしい」 関税30〜35%に引き上げ示唆 - 日本経済新聞

トランプ米大統領は1日、日本との関税交渉について「合意が実現できるか疑わしい」と述べた。

日本を念頭に、近く交渉結果を通告する手紙を送ったうえで

「30%か35%か我々が決める数値に応じて(関税を)支払ってもらう」と話した。


原則24%、自動車など25%の関税率を突きつけられている日本は、米国との交渉が不調で、

今や、35%に引き上げるぞ、とトランプ大統領から脅されている。

このニュースは、東南アジアのニュースメディアも大きく扱っていた。


米政府の言う相互関税の停止期限は7月9日。


東南アジアには、日本より高い関税率を設定されかけている国が多い。

しかし日本とは違って、最近の現地報道を見てみると、わりと楽観的なムードがただよっている。


マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、カンボジアの最近の記事を紹介する。



マレーシア(相互関税24%予定)「米国からポジティブな反応」


The Edge Malaysia の7月1日の記事(中身は国営ベルナマ通信):

関税に対するマレーシアのアプローチに米国からポジティブな反応ー第2財務相

アミール・ハムザ第2財務相(II Datuk Seri Amir Hamzah Azizan)は、米国は関税問題および提案に関する

マレーシアのアプローチと関与に前向きな反応を示していると述べた。

第2財務相は、マレーシアが米国と積極的に関与し、アプローチしているのは、関連する問題を理解し、

双方に利益のある道筋を見出すために協力していくことだと述べた。

米国はマレーシアのアプローチに前向きな反応を示し、両国の貿易チームが今後の進め方について協議した

と述べた。



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インドネシア(相互関税34%予定)「米国は提案に原則的に同意」


国営アンタラ通信の6月30日の記事:

関税交渉:政府は米国からの重要な鉱物投資を招請

経済担当調整大臣アイルランガ・ハルタルト氏は、相互関税に関する次善の策として、

インドネシアが米国に対し、インドネシア投資管理会社ダナンタラと重要鉱物分野での投資協力を要請した

ことを明らかにした。

「インドネシアは、米国とダナンタラに対し、(国内の)重要鉱物資源エコシステムへの投資を呼びかけます」

と、ハルタルト氏は月曜日に述べた。

重要鉱物には、銅、ニッケル、そして電気自動車(EV)産業、軍事装備、電子機器産業に必要な鉱物が含まれる。


インドネシアは政府系ファンドのダナンタラを使って、いくつかの国と共同投資プロジェクトを

進めている。

米国に対しては、米国がほしがりそうな鉱物資源を投資テーマに選んで提案した、ということのようだ。


この記事はもっと興味深いことを書いている。ハルタルト大臣が以下のことを述べたと伝えているのだ。

2025年7月8日の交渉期限を前に、インドネシア政府は米国政府から提出された関税と貿易障壁の両面に関する要請に同意した

ハルタルト大臣がスコット・ベッセント米国財務長官と直接連絡を取り、ベッセント長官はインドネシアが提出した複数の提案を原則的に受け入れることに同意した


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タイ(相互関税36%予定)は今週、米国で協議


The Nation Thailand の6月30日の記事:

タイ財務省、米国に相互関税の上限を10%にするよう要請

ピチャイ・チュンハワジラ財務大臣は、米国が今週タイと協議を行うことに合意したと述べた。

彼はタイの交渉団長として米国に渡航する予定だ。

財務大臣は、米国が商務省、米国通商代表部(USTR)、さらには財務長官を含む様々なレベルに

交渉担当者を派遣しているため、ここ数ヶ月、交渉環境は絶えず変化していると指摘した。

「タイ政府は、米国がどのようなアプローチをとろうとも、それに対応する準備ができている。

だからこそ、交渉があらゆるレベルで行われ、タイが不利にならないよう、

財政政策局(FPO)と通商交渉局(DTN)が並行して連携することが極めて重要だ」と、同大臣は述べた。


タイは、米国からの輸入拡大策などをすでに米国側に伝えている。

タイ政府からは楽観的なコメントは出ていないが、10%までの引き下げ目標の達成に

自信があるようだ。


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ベトナム(相互関税46%予定)「期限前にポジティブな結果を」


South China Morning Post の6月25日の記事:

米関税交渉の期限前にポジティブな結果が可能だ、とベトナム首相

ベトナムのファム・ミン・チン首相は、2週間後の米国との貿易協定締結期限を前に

「前向きな」結果に自信を示し、米中間の「良好なバランス」を維持することを誓った。

「2週間より早く結果が出ることを期待しています」と、ファム首相は水曜日、

中国・天津市で開催された世界経済フォーラム夏季会議で述べた。

「私たちは自信を持っています。前向きな結果が得られ、それは米国、米国の消費者、そして私たち自身、

そして世界中のすべての国々に利益をもたらすでしょう。」


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カンボジア(相互関税49%予定)「追加提案を提示」


Cambodianess の6月26日の記事:

カンボジアと米国の関税交渉、さらなる提案を盛り込む

カンボジア政府報道官室は6月26日、両国はこれまでの協議で大きな進展があったと認識していると述べた。

カンボジア開発評議会のスン・チャントール第一副議長は、チャム・ニムル商務大臣と共にカンボジア代表団

を率いて、6月25日に米国通商代表部(USTA)のサラ・エラーマン東南アジア太平洋担当次官と

オンライン協議を行った。

報道官室は、「両国はこれまでの交渉で得られた大きな進展を称賛し、更なる検討のための追加提案を提示した」

と述べた。


政府から楽観的なコメントはないが、米国からの輸入拡大策を積極的に提案している様子がある。



米国の国別の物品貿易収支、USTR(米通商代表部)のデータ

貿易赤字の金額を見る限り、「相互関税」の税率の根拠がまったくわからない。

米国の赤字が日本より大きいのはベトナムだけだ。

想像できるのは、ASEANの国の輸出企業が実は中国企業が多いことを考慮したことくらいだ。


  • 対日本:米国の物品貿易赤字は2024年に685億ドル、2023年より4.3%(31億ドル)減少


  • 対マレーシア:米国の物品貿易赤字は2024年に248億ドル、2023年より7.6%(21億ドル)減少

  • 対インドネシア:米国の物品貿易赤字は2024年に179億ドル、2023年より5.4%(9億2,300万

ドル)増加

  • 対タイ:米国の物品貿易赤字は2024年に456億ドル、2023年より11.7%(48億ドル)増加

  • 対ベトナム:米国の物品貿易赤字は2024年に1235億ドル、2023年より18.1%(189億ドル)増加

  • 対カンボジア:米国の物品貿易赤字は2024年に123億ドル、2023年より9.4%(11億ドル)増加














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