東南アジアでも注目:日本で「外国人への恐怖」煽る政党が躍進

 

東南アジアでも注目:日本で「外国人への恐怖」煽る政党が躍進

参院選挙2025

東南アジア株式新聞 2025年7月19日


東南アジアのメディアで、先週後半から突然、日本の選挙のニュースを見かけるようになった。

7月20日の参議院選挙の報道で、「極右」「超保守派」の参政党が躍進していることだ。

外国人への恐怖を煽る点がトランプ大統領の選挙や欧州極右の選挙戦略と共通している

と指摘されている。


とは言うものの、こちらで報道されるニュースの主流は、参院選の与党の苦戦とその影響、

とりわけ日米の関税交渉への影響だ。



私が最初に気づいたのは、 CNA のWeb版に掲載された以下の記事だった。


CNAの7月16日の記事:

「日本人ファースト」政党が外国人への警鐘で選挙を揺さぶる

'Japanese First' party shakes up election with alarm over foreigners - CNA

日本の選挙を前に、新興政党が移民の「静かな侵略」を非難することで支持を集めている。

かつては政界の片隅でしか語られなかった外国人への恐怖を主流のレトリックに持ち込み、

政府に対策を迫っている。

新型コロナウイルスのパンデミック中にYouTubeで誕生し、ワクチン接種や世界のエリートによる陰謀に関する

陰謀論を拡散している参政党は、7月20日の参院選投票を前に「日本人ファースト」キャンペーンを展開し、

支持を拡大している。

(中略)

元スーパーマーケット店長、元英語教師の神谷氏は、ドナルド・トランプ米大統領の「大胆な政治スタイル」に

インスピレーションを得ていると言われる。



この記事の元になったのは、ロイターの以下の記事だ。

'Japanese First' party shakes up election with alarm over foreigners | Reuters

CNA記事が使ったものよりロイター記事は長く、以下の記述もある。


参政党は、日本の堅苦しい政治の中で足場を築こうと苦戦している一連の小規模極右政党の最新の例だが、

オンライン上の支持は持続力を持っている可能性を示唆している。

socialcounts.orgによると、三青党のYouTubeチャンネルのフォロワー数は40万人で、

プラットフォーム上のどの政党よりも多く、自民党の3倍に上る。

まだ課題は残っている。欧米の右派政党と同様に、参政党の支持層は20代、30代の男性に大きく偏っている。



ほぼ同じタイミングで香港でもニュースになった。


香港サウスチャイナ・モーニング・ポストの7月16日の記事:

日本は反移民政策に転じつつあるのか?選挙に向けて極右政党が勢いを増す

Is Japan becoming anti-immigrant? Far-right parties gain momentum in election lead-up 

日本が重要な参議院選挙を迎える中、極右ポピュリスト政党は反移民のレトリックを巧みに利用して

有権者の支持を獲得しようとしている。

これは、ドナルド・トランプ米大統領率いる共和党や欧州の極右運動の戦略に倣っている。

日本では、あらゆる政治的立場の候補者がインフレ、雇用、防衛といった馴染みのある問題を訴えて

選挙活動を行っているが、反移民メッセージの急増は、日曜日に行われる参議院選挙を前に、

国民の議論の枠組みを塗り替えている。

この変化を牽引しているのは、2020年に結党された参政党のような超保守派グループの台頭だ。

参政党は、参議院選挙に出馬する10党中、世論調査で4位につけている。

7月11日のNHK世論調査によると、参政党の支持率はわずか5.9%と依然として低いものの、

有権者の33%以上がまだ決めかねていると回答している。


冷静に見れば、参院で推定4位の政党であり、極端に大きな影響力を持つわけではない。

しかし、将来的に極右政党が議席を伸ばすと、

日本の外国人問題への政策にじわじわと影響を及ぼすことになる。


外国人口撃は、インバウンド観光に熱心な現在の日本政府の姿勢と矛盾する。

今年、タイは誘拐事件多発によって中国人観光客の激減を経験している。

日本の観光立国時代も長続きするとは限らない、と思えてくる。




報道の本筋は、与党の苦戦と物価・関税への対応に注目

東南アジアのニュース報道で扱われる日本の参院選は、与党の苦戦と物価・関税といった

重要問題への対応がどうなるかについて注目されている。



マレーシアの The Star の7月19日の記事(中身はAP通信):

日本の石破首相、参院選で苦戦、物価高騰と米国の関税が課題

日本の石破茂首相は、7月20日(日)に行われる参院選でますます厳しい戦いに直面しており、

物価高騰や米国の高関税といった困難な課題を抱える中で、敗北は政治の不安定化をさらに悪化させる可能性

がある。

首相の党の不振が直ちに政権交代につながるわけではないが、首相の運命と日本の将来に対する不確実性は

深まるだろう。



少し前の石破首相の発言も報じられている。


シンガポールの The Straits Times の7月19日の記事:

「私たちは侮られない」:選挙の圧力の下、日本の首相は米国との貿易に関して断固たる姿勢

石破茂首相は、7月20日の参院選に向けた街頭演説で、米国の貿易関税に反抗的な姿勢を示し、

「なめられてたまるか」と誓った。

国内からの圧力にも直面する石破首相は、7月9日に東京近郊の船橋市で行われた演説で、

「これは国益をかけた戦いだ。同盟国である日本に対し、言うべきことははっきりと、

率直に言わなければならない。軽んじられることはない」と述べた。

石破首相は後に、日本は「侮られない」と強調した。


米国との関税交渉は(シンガポールを除き)東南アジア諸国の共通の課題だ。

ベトナムが20%とインドネシアが19%へ引き下げを米トランプ大統領に認めさせているものの、

満足できる水準ではないため、両国とも交渉を続行している。


日本では「失言」と報じられた石破発言だが、東南アジアの首脳たちも本音の部分では

共感したのではないだろうか。





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