インドネシア製品の米国の関税率は19%に【更新】
インドネシア製品の米国の関税率は19%に【更新】
東南アジア株式新聞 2025年7月23日
トランプ大統領の個人的なソーシャルメディア投稿ではなく、
ようやく米国政府が貿易協定の合意を正式発表した。
ホワイトハウス(米大統領府)の7月22日の発表:
米国・インドネシア相互貿易協定の枠組みに関する共同声明
本日、アメリカ合衆国(米国)とインドネシア共和国(インドネシア)は、二国間経済関係を強化するため、
相互貿易協定の交渉枠組みに合意しました。
この協定により、両国の輸出業者は、かつてないほど容易に互いの市場にアクセスできるようになります。
この相互貿易協定は、1996年7月16日に署名された米国・インドネシア貿易投資枠組み協定を含む、
両国の長年にわたる経済関係を基盤としています。
相互貿易協定の主な条項は以下のとおり。
インドネシアは、米国産工業製品・食品・農産物全般について、関税障壁の約99%を撤廃する。
米国は、インドネシア原産品に対する相互関税を19%に削減する。
米国とインドネシアは、優先分野における二国間貿易および投資に影響を与える
インドネシアの非関税障壁に対処するために協力する。
インドネシアは、
デジタル貿易、サービス、投資に影響を与える障壁に対処する。
鉄鋼部門における世界的な過剰生産能力とその影響に対処する。
国際的に認められた労働者の権利を保護することを約束する。
違法・無報告・無規制漁業および違法な野生生物取引に対抗するための措置を講じる。
重要鉱物を含む工業製品の米国への輸出制限を撤廃する。
米国とインドネシアは、サプライチェーンの強靭性とイノベーションを強化するため、
経済・国家安全保障協力を強化することにコミットしている。
米国とインドネシアは、企業間で今後締結される以下の商業取引に留意する。
航空機の調達(現在32億米ドル相当)。
大豆、大豆粕、小麦、綿花を含む農産物の購入(推定総額45億米ドル)。
液化石油ガス、原油、ガソリンを含むエネルギー製品の購入(推定総額150億米ドル)。
同時に以下の発表もあった。
ファクトシート:米国とインドネシアが歴史的な貿易協定を締結
さて、関税率だけ見ると、インドネシアから関税障壁99%撤廃の約束を引き出した米国側が一方的に
有利に見える。
7月15日(米国時間)の時点で、インドネシア側は19%への引き下げは獲得していたので、
インドネシア側がさらに粘って得たものは「経済・安全保障協力の強化」ではないだろうか。
東南アジアの大国インドネシアは、最近やや、中国やロシアと接近中だ。
米国は、インドネシアの経済と安全保障が強くする方向で協力することで、
インドネシアの外交・安保政策が中ロ側に傾かないように配慮したい。
一方、インドネシアは先進国入りに向け経済成長を高めたい。
米国が経済・安保のハイテク武装に協力してくれるなら、それもよい、といった感じだろうか。
ちなみに、インドネシアの大統領や政府は7月23日、米国の発表後、
米国との関係で特別な発表はしなかった。
インドネシア製品の米国の関税率は19%に、「大統領の電話会談の成果」
東南アジア株式新聞 2025年7月16日
米国のインドネシアからの輸入関税率が32%から19%に下げられた。
東アジア時間7月16日の未明、トランプ米大統領によるソーシャルメディア投稿によって判明した。
先に合意したことになっているベトナムは20%。
それよりは微妙に低い。
インドネシアが精力的に交渉した成果があった、という形にはなっている。
ただ、インドネシア側の対応を見ると、満足した合意という印象はなかった。
7月16日、貿易協定で合意した趣旨の声明はインドネシア政府から発表されなかった。
同日夕方になって、国営通信社が「大統領の電話会談の成果」として経済関係強化に合意、と書いた。
インドネシアとの貿易協定について、米ホワイトハウスや他の官庁から発表なし。
トランプ大統領のソーシャルメディアへの投稿のみ。
このトランプ投稿を世界中の主要メディアは報道した。
CNAの7月15日(東アジアではほとんど16日)の記事:
Trump sets 19% tariff on Indonesia goods in latest trade deal - CNA
トランプ大統領は、インドネシアとの合意の概要を示した。これは、最近ベトナムと締結した協定に大まかに
似た内容で、米国への輸出には現在の10%の約2倍の均一関税を課し、米国からインドネシアへの輸出には関税を
課さないというものだった。
また、インドネシア経由の中国からのいわゆる積み替え貨物に対するペナルティレートの導入と、
一部の米国製品を購入するという約束も含まれていた。
「彼らは19%の関税を支払うが、我々は何も支払うことはない…我々はインドネシアへの完全なアクセスを得る
。そのような合意がいくつかあり、今後発表する予定だ」とトランプ大統領は大統領執務室の外で述べた。
さらにトランプ大統領はその後、自身のプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」で、インドネシアが
150億ドル相当の米国エネルギー製品、45億ドル相当の米国農産物、ボーイング社製ジェット機50機を購入する
ことに同意したと述べたが、購入時期については明らかにしなかった。
ベトナムが20%だから、19%はそれより低い。
しかし、インドネシア側はそれでほんとに納得して、合意したのだろうか?
ベトナムのときも、ホワイトハウスから公式発表はなく、トランプ投稿のみ。
ベトナム政府は寝耳に水だったというニュースもあった。
Vietnam Surprised by Trump Tariff Decision, Seeks Lower Rate - Bloomberg
トランプ投稿のニュースが伝わる前の段階では、インドネシアでは違う内容のニュースが流れていた。
インドネシアに対する32%課税が8月1日より延期されたことを強調していた。
国営アンタラ通信の7月15日(火)の記事:
トランプ大統領のインドネシアに対する32%の関税は更なる協議のため延期に:大臣
インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整大臣は、ドナルド・トランプ米大統領による
インドネシア製品への32%の関税の発動が延期されたことを確認した。
トランプ大統領は7月7日、関税は8月1日に発効すると発表した。
ハルタルト大臣は月曜日に視聴されたビデオ声明で、「(関税の)発動を延期するのは、
進行中の交渉の最終決定を待つためです」と述べた。
この記事では、以下のようなことを書いている。
両国は今後3週間、関税政策に関するインドネシアの提案について協議を継続することで合意
インドネシアのニッケル、銅、コバルトなどの鉱物分野に米国が関心
関税率が32%からどのくらい引き下げられるか、については、何も書かれなかった。
インドネシアの交渉担当大臣の発言は協議を続けることを強調している。
それから数時間で妥結した、というのは、ありそうにない。
16日午前7時半ごろ、インドネシアの英字紙Jakarta Globeは以下のような記事を書いた。
Indonesia to Pay 19% US Tariffs in Exchange for Full Market Access, Boeing Jets
同記事では、トランプ投稿を伝えた後、
「インドネシア政府は、今回の合意についてまだ公式声明を発表していない。」と書いた。
16日正午前、アンタラ通信がようやく書いた。
トランプ大統領、協議後にインドネシア製品への関税を19%に引き下げ
ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領との直接会談後、
米国へのインドネシアからの輸入品すべてに19%の関税を課すと発表した。
トランプ氏はTruth Socialに、「インドネシアは米国に輸出するすべての製品に19%の関税を支払うことになる」
と投稿した。
新たな関税は、トランプ大統領が4月に発表した当初の32%から引き下げられたものであり、
インドネシアによる条件再交渉の努力が少なくとも部分的に成功したことを示唆している。
この記事は、トランプ投稿を紹介するにとどめ、インドネシア側の声明や高官コメントを使っていない。
ただ、欧州訪問中のプラボウォ大統領が米大統領と電話会談したことが明らかにされた。
アンタラ通信は同日夕方になって、合意した趣旨の記事を掲載した。
プラボウォ大統領とトランプ大統領、インドネシアと米国の貿易関係強化で合意
インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は、ドナルド・トランプ米大統領との電話会談で、
両国間の貿易関係を強化することで合意したことを明らかにした。
プラボウォ大統領は、トランプ大統領が米国へのインドネシア製品の輸入関税を32%から19%に引き下げると
発表したわずか数時間後、自身のインスタグラムアカウント(@prabowo)で会談の様子を撮影した写真を
共有した。
水曜日にジャカルタで撮影された写真のキャプションには、
「ドナルド・トランプ大統領と非常に良い電話会談ができました。
インドネシアと米国の貿易関係を相互利益の新たな時代へと導くことで合意し、合意に至りました」
と記されていた。
国営通信社がソーシャルメディア投稿を報道した形だ。
大統領や政府の声明はない。
しかも、(関税を含む)貿易協定で、ではなく、「貿易関係強化で合意」と書いた。
関連記事:フィリピン製品の米国関税率19%に、交渉で合意
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