企業研究|CKハチソン(CK Hatchison Hodings Limited、HKEX:1)[更新]

 

東南アジア株式新聞 2025年3月15日

企業研究|CKハチソン(CK Hatchison Hodings Limited、HKEX:1)

  • 香港拠点、ケイマン登記の複合企業

  • 李嘉誠(Li Ka-shing)氏が1971年に長江実業を設立

  • 2015年、長江実業とグループ企業のハチソン・ワンポアが合併


   
CKハチソン株の年初来(2025年3月21日、HKEX公式サイトより)
CKハチソン株の年初来(HKEX公式サイトより)



2024年度は増収減益


3月20日の発表:

2024年12月31日までの会計年度の業績

RESULTS FOR THE YEAR ENDED 31 DECEMBER 2024 HIGHLIGHTS


単位:百万香港ドル

2024年度(12月末まで)

2023年度(12月末まで)

総収益

476,682

461,558

総EBITDA

125,108

127,309

報告利益

17,008

23,500



会長の声明

2024年初頭の経済状況は比較的穏やかで、インフレは緩和し、概ねコンセンサス成長予想の範囲内でした。しかし、英国と欧州ではエネルギーと投入コストが引き続き上昇し、米国では予想されていた金融政策の緩和は実現せず、結果として米ドルは歴史的に見て堅調に推移しました。

当年第3四半期以降、米国および当社の事業が展開するいくつかの主要市場では、株式、通貨、債券、債務市場のボラティリティが高まっています。地政学的および貿易上の緊張も大幅に高まっています。商品市場は大幅に変動し、経済活動の低迷に伴う需要懸念の結果、石油、ガス、精製品の価格は概して低調です。


当年、当グループはベトナムの通信事業で37億香港ドルの一時的な非現金減損およびその他の引当金を認識しましたが、これは事業環境が引き続き大きな圧力にさらされているためです。しかしながら、全体としては、当グループの基礎的な営業成績は比較的安定していました。


IFRS 16 適用前ベースで、上記の一時的損失を除いた基礎 EBITDA は、主に港湾部門の好調な成長、CKHGT の全業務の改善、小売部門とインフラ部門の安定した業績により、2023 年と比較して現地通貨で 2% 増加しましたが、2023 年の非中核資産処分による一定の財務利益が 2024 年には発生しなかったことと、Cenovus Energy からの貢献が減少したことで一部相殺されました。基礎 EBIT は、主に CKHGT と Cenovus Energy の減価償却費の増加により、前年比で現地通貨で 1% 減少しました。


 IFRS 16適用前ベースで普通株主に帰属する基礎利益は207億7,000万香港ドルで、2023年と比較して現地通貨ベースで10%減少しました。これは、2024年の実効税率の上昇による税金の増加を反映しています。ベトナムの通信事業に関する一時的な非現金減損およびその他の引当金を含めると、IFRS 16適用後ベースで、普通株主に帰属する報告利益は170億8,800万香港ドルで、前年比27%減少しました。


2024年12月31日までの1年間の報告1株当たり利益は4.46香港ドル(2023年12月31日-6.14香港ドル)でした。


CKHGT=CK Hutchison Group Telecom Holdings Limited

Cenovus Energy=カナダの石油精製会社



 
CKハチソン株の1年間(2025年3月14日、HKEX公式サイトより)
CKハチソン株の1年間(HKEX公式サイトより)



パナマ運河の港湾事業を売却で株価が上下

2025年3月、普段は大きく動かないCKハチソンの株価が上下に激動した。



日本経済新聞の3月5日の記事:

香港株寄り付き 反発、中国政策に期待 CKハチソンは大幅高 - 日本経済新聞

5日の香港株式相場は反発して始まった。ハンセン指数の始値は前日比258.65ポイント(1.12%)高の2万3200.42だった。中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日に開幕し、中国当局の政策期待から買いが優勢になっている。パナマ運河港湾の運営権を売却する計画を発表した香港複合企業の長江和記実業(CKハチソンホールディングス)が大幅高となり、相場全体を押し上げている。


米国時間4日、米ブラックロックなどの投資家連合がパナマ運河の港湾事業をCKハチソンから買収することで合意した。

買収額 228億米ドル(約3兆4,000億円)。この巨額なキャッシュがCKハチソンに入ることを材料に株が買われた。


この買収の背景には、トランプ大統領が、パナマ運河を米国が取り戻すと発言していることがある。

大統領の意向に沿って投資家連合が動き、CKハチソンは米大統領に事業を妨害される可能性を嫌ったのだろう。


CKハチソン公式サイトの3月4日の発表:

Announcement of “in Principle” Agreements

Regarding Certain Ports

Owned and Operated by Hutchison Port Holdings (“HPH”) (the “Transaction”)

https://www.ckh.com.hk/en/media/press_each.php?id=3431



ところが、この買収話には第2幕があった。


日経の3月14日の記事:

香港CKハチソン、株価一時7%安 パナマ港湾売却に批判 - 日本経済新聞

香港株式市場で14日、大手複合企業の長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の株価が急落し、一時前日比6.8%安となった。中米パナマのパナマ運河周辺2港の運営権の売却を決めたのを巡って13日夜、中国当局系のホームページに批判するコラムが掲載され、中国側との関係悪化懸念が浮上した。

コラムは中国共産党で香港政策を担当する「中央香港マカオ工作弁公室」などのホームページに掲載された。中国政府系香港紙「大公報」による13日付のコラムを転載したもので、香港メディアは中国側によるメッセージとして大きく報じている。


パナマ運河事業を手放したことに対し、中国政府の不快感が伝わったことで、CKハチソン株は大きく売られた。

とは言え、政府上層部が直接メッセージを発しているわけではないし、CKハチソン・グループに何か制裁をしてくるのか不明だ。



3月14日、ブルームバーグ電:

中国政府がパナマ事業売却で脅しても李嘉誠にはほとんど失うものがない

Li Ka-shing Has Little to Lose as China Threatens Panama Deal - Bloomberg


この記事によると、CKハチソン・グループの中国本土と香港での事業は全体収益の15%に過ぎない。


ちなみに李嘉誠氏は現在96歳、CKハチソンのシニア・アドバイザーだ。




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