カンボジアの eウォレット「バコン」(Bakong)を使ってみた
カンボジアの eウォレット「バコン」(Bakong)を使ってみた
東南アジア株式新聞 2025年7月11日
少し前にこんなニュースがあった。
日本経済新聞の7月4日の記事:
キャッシュレス推進協議会は4日、開発・運営するQRコード決済の国内統一規格「JPQR」について、
カンボジアの統一規格「KHQR」との連携を始めると発表した。
5日から大阪・関西万博の一部店舗などに限り、現地のQRコード決済が使えるようになる。
2025年内をめどに日本のQRコード決済をカンボジアでも使えるようにしたい考えだ。
JPQRが海外の統一規格と連携するのは初めて。
同日に大阪市内で連携を祝う式典が開かれ、登壇したカンボジア国立銀行(中央銀行)のチア・セレイ総裁は
「観光と文化的な交流の活性化や、さらなる経済の発展につながることが期待される」と話した。
このカンボジアのQR決済規格「KHQR」は、カンボジア国立銀行(同国の中央銀行)が2020年に
導入したeウォレット「バコン」(Bakong)で使われている。
バコンは、日本のソラミツのブロックチェーン技術で作られ、
中央銀行デジタル通貨(CBDC)としても知られる。
筆者は、2025年7月9日〜7月12日の日程でカンボジアの首都プノンペンに滞在し、
バコン・ウォレットを使ってみた。
Bakong Tourists アプリの機能
バコンには、カンボジア国民や居住者が使うアプリのほか、
外国人旅行者向けアプリ「Bakong Tourists」がある。
![]() |
Bakong Tourists アプリ |
画面を見てわかる通り、カンボジアの通貨リエルと米ドルが使用できる。
実際には、まず、クレジットカード/デビットカードを登録し、そこからリエルで引き落とす。
ドルを使う場合、リエルからバコン・アプリ上でドルに転換する。
その後の機能は以下のとおり:
Send(送金)
Receive(受取)
QR Pay(QR支払い)
Deposit(カンボジアの銀行への預金)
SendとReceiveもQR支払い機能で、
Sendは相手のQRコードを読み取り、Receiveは自分のQRコードを示すことでお金のやり取りをする。
使える店は7〜8割くらいだった
プノンペン市内で観光しながらバコン・アプリを使ってみた。
バコンのQR支払いが使えたのは:
トゥクトゥク(Tuk Tuk)の運転手
(空港でGrabアプリでトゥクトゥクを呼ぼうとしたら、運転手が覗き込んできて、
「そのレートでいいから自分の車に乗れ」と言ってきた。
降車時にバコンで運転手のQRコードを読み取り、金額を入力して送信することで支払った。
他の運転手もQRコードを車内に付けているため、同じことが可能だと思う)
多くのカフェ、レストラン
一部の博物館の売店
使えなかったのは:
一部のカフェ、レストラン
これらの店では、マスターのデビットカードで支払った。
QR支払い自体はたいていの店が採用している。
たまたま通信事情が悪いなどの理由から、QRを読み取れなかったのだと思う。
プノンペン市内で生活するなら、ほぼキャッシュレスが可能のように思う。
ただし、博物館などでは、入場料に米ドル(現金)を要求されることが多かった。
Bakong Tourists アプリを外国人観光客に使わせたいなら、
中銀は政府と協力して観光スポットでのバコン導入を徹底させるべきだろう。
スマホにバコン・アプリを入れればいいだけなのだから。
カンボジアのお金の現状
いろんな場所で観察してみたが、まだ紙幣がかなり使われているようだ。
しかも、米ドル札とリエル札がともに有効だ。
(店側は、米ドル料金を大きく表示していることが多い)
これでは、外国人観光客にとって、わかりにくい。
キリングフィールド博物館で入場料金7ドル(外国人・大人)を20ドル札で支払ったところ、
10ドル札と端数リエル札で返された。
これではお釣りが正しいかわからなかった。
おまけ:カンボジアの銀行で預金口座を作ってみた
その口座にバコンから預金もできた
カンボジアのいくつかの銀行では、外国人旅行者(超短期滞在者)でも預金口座を開くことができる。
大手銀行のカナディア銀行(Canadia Bank)の本店へ行ってみた。
担当の行員(窓口担当は全員女性だった)は英語がうまく、スムーズに会話ができた。
1時間ほどで口座が作れた(アプリ登録+VISAデビットカード発行)。
次のように手続きが進んだ。
入口の機械で「オープン・アカウント」を選択し、整理券をもらう
指定の窓口で、「日本人の旅行者だが、口座を開きたい」と告げる
パスポートとビザを渡し、申請書類に必要事項を記入する
カンボジアの携帯電話番号・メールアドレス・氏名・住所・勤務先など記入
口座開設の最低額(ドルとリエルの現金)を渡す
顔写真を撮影+書類にサイン
アプリ登録を手伝ってもらう
専用の刻印機でデビットカードを作成してもらう
注意が必要なのは、携帯電話番号を手に入れておくことだ。
現地の電話会社のショップで電話番号付きSIMを買った。
(通信料払いを継続しないと、銀行アプリが使えなくなる)
口座が有効になったあと、バコンからカナディア銀行の自分の口座に預金をしてみた。
すぐに銀行口座の残高が増えた。
バコンのDeposit(カンボジアの銀行への預金)機能は使えることがわかった。
余談ながら、バコンの実験のために口座を作ったわけではない。
口座開設は、つい最近までカンボジアの銀行の12ヶ月固定預金には5%超の金利があったためだ。
今は、少し下がって4%台半ばだ。
(注意)
- カンボジアでの口座には、口座の維持手数料、電話料金など維持にコストがかかる。
- 同国のカントリーリスク(法規制変更など)、為替リスクなどは避けられない。
コメント
コメントを投稿