BRICSサミット 2025(リオ)、米関税への対策などで結束固め

 

BRICSサミット 2025(リオ)、米関税への対策などで結束固め

ASEANの国も積極参加

東南アジア株式新聞 2025年7月7日


BRICSサミットが7月6日〜7日、ブラジルのリオデジャネイロで開催された。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とロシアのプーチン大統領が欠席したが、

その他の加盟国の首脳は「グローバルサウス」の首脳会議に参加した。


サミット共同声明では、米国の関税引き上げやイラン攻撃を非難したが、名指ししない遠回しの言い方に留めた。


ASEANの国も積極的に参加した。

東南アジアの国として初の正加盟国であるインドネシアのプラボウォ大統領がサミットに参加した。

パートナー国マレーシアのアンワル首相もサミットを訪れ、インドの首相らと会談を持った。

6月にパートナーになったベトナムの首相も参加した。




7月6日に共同声明「リオデジャネイロ宣言」を発表された。


共同声明について、メディアは以下のように総括した。


AP通信の7月6日(日)の記事

BRICSサミット、関税引き上げを非難、中東情勢の緊張が影

発展途上国連合のBRICSは日曜日、関税引き上げとイランへの攻撃を非難したが、ドナルド・トランプ米大統領の

名前は挙げなかった。

同グループの声明は、イスラエルの中東における軍事行動も批判の対象としたが、加盟国のロシアへの批判は

避け、戦火で荒廃したウクライナへの言及は一度だけだった。

(中略)

BRICSの声明は、米国を間接的に批判する形で、関税引き上げについて「深刻な懸念」を表明し、

「WTO(世界貿易機関)のルールに違反している」と述べた。

 BRICSは、こうした制限は「世界貿易を減少させ、世界のサプライチェーンを混乱させ、不確実性をもたらす恐れがある」と付け加えた。



共同声明でその箇所を確認してみよう。

共同声明(リオデジャネイロ宣言)

包括性と持続可能性のあるガバナンスに向けてグローバルサウスの協力を強化する


(米国の)関税引き上げを非難する箇所は以下:

13. 多角的貿易体制は長らく岐路に立たされてきた。

関税及び非関税措置の無差別な引き上げ、あるいは環境目的を装った保護主義といった貿易制限的行動の蔓延は、

世界貿易の更なる減少、世界サプライチェーンの混乱、国際経済・貿易活動への不確実性導入の脅威となり、

既存の経済格差の拡大や世界経済発展の見通しへの影響を潜在的にもたらす。

我々は、貿易を歪め、WTOルールに整合しない一方的な関税及び非関税措置の増加について深刻な懸念を表明する。


(米国とイスラエルの)イラン攻撃を非難する箇所は以下:

21. 我々は、2025年6月13日以降のイラン・イスラム共和国に対する軍事攻撃を非難する。これは国際法及び

国連憲章に違反するものであり、中東における安全保障状況のその後のエスカレーションについて深刻な懸念を

表明する。

さらに、国際原子力機関(IAEA)の完全な保障措置の下にある民間インフラ及び平和的な原子力施設に対する

意図的な攻撃が、国際法及びIAEAの関連決議に違反していることについても深刻な懸念を表明する。



このような遠回しの米国批判だったが、トランプ大統領はしっかり反応した。

トランプ氏「反米政策に同調なら10%追加関税」 BRICS念頭か - 日本経済新聞




新開発銀行(NDB)理事会が新加盟国を承認、財務相・中銀総裁会議も開催

サミットに並行して、BRICSの機関である新開発銀行(New Development Bank)が理事会を開き、

コロンビアとウズベキスタンを新メンバーとして承認した。


ニュースリリース


2025年7月5日、新開発銀行(NDB)の理事会(BoG)は、ブラジルのリオデジャネイロで第10回年次総会の

ビジネスセッションを開催しました。

テーマは「開発の推進:グローバル・サウスのための多国間開発銀行を通じたイノベーション、協力、

そしてインパクトの促進」でした。

(中略)

理事会は、NDBの過去1年間の成果を歓迎し、設立10周年を迎えるにあたり、

NDBが将来的に持続可能な成長の道筋へと進むための指針を示しました。

理事会は、コロンビアとウズベキスタンをNDBの借入加盟国として正式に承認しました。



これにより、NDB加盟国は11か国となった。

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)以外に、バングラデシュ、

UAE(アラブ首長国連邦)、エジプト、アルジェリア、コロンビア、ウズベキスタン。

開発資金を借りたい側の国が多い印象だ。


5日には、BRICS財務相・中央銀行総裁会議が行われ、閣僚文書 が発表された。

「BRICS諸国の経済は世界経済への統合をますます深めており、現在では世界の貿易・投資フローの

約4分の1を占めている。同時に、加盟国は、グローバル化、経済成長、そして生産性の恩恵が

すべての人々に公平に分配されるよう、更なる進展が必要であることを認識している」と、

同文書に書かれた。


グローバルサウスの会議らしい点として、開発志向の枠組みの下で、

新興市場国・発展途上国(EMDE)が債務関連の課題に公正かつ建設的な方法で対処できるよう

支援することを目的として、二国間、多国間、民間の公的債権者と債務者の間の連携を強化する

ことも、文書に盛り込まれた。


また、BRICSは、大規模な民間資本を動員するため、ブレンド・ファイナンス・メカニズム、保証、

グリーンボンド、現地通貨建て金融商品、相互運用可能なタクソノミーなど、

多様な金融手段の活用を促進するとともに、健全性の高い自主的な炭素市場を推進していくという。




インドネシア大統領、ブラジル大統領から歓迎を受ける


インドネシアのプラボウォ大統領は正加盟国として初のサミットに臨んだ。


議長国ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、

「BRICSはバンドン非同盟運動の具体化です。BRICSはバンドンの精神を受け継いでいます」と

BRICS首脳会議の全体会議で述べ、インドネシアの参加を歓迎した。(インドネシア国営アンタラ通信)


インドネシア大統領のX投稿(7月7日):

ブラジル連邦共和国大統領@LulaOficialが主催者となった第17回BRICSサミットに、

他の加盟国の高官数名とともに出席。

「より包摂的で持続可能なガバナンスのためのグローバル・サウス協力の強化」というテーマの下、

私と加盟国の首脳は、現在直面している様々な地球規模の課題について意見交換を行うとともに、

将来的にグローバルサウス諸国の役割と連帯を強化するための共同戦略を策定しました。

(以下略)

  
プラボウォ大統領のX投稿(2025年7月7日)
プラボウォ大統領のX投稿(7月7日)


国営アンタラ通信は7月7日、以下の記事を書いた。

プラボウォ大統領、BRICSに南南経済協定の発足を促す

第17回BRICSサミットにおいて、プラボウォ・スビアント大統領は、BRICS加盟国に対し、

南半球の開発途上国のアクセス改善とグローバルサプライチェーンへのより円滑な統合を可能にするため、

南南経済協定の締結を強く求めた。

アルマナタ・クリスティアワン・ナシル外務次官は、月曜日に当地で配布した声明の中で、この見解を認めた。

ブラジルのリオデジャネイロで開催されたサミットでは、多国間関係、金融、人工知能など、

様々な課題が議論された。

ナシル次官は、「BRICS諸国がグローバルサウス諸国を結束させ、開発途上国が開発に適した状況を

作り出すためには、国際法と強力な多国間システムが必要であることを常に強調していくことが期待される」

と述べた。




マレーシア首相はBRICS域内貿易の強化を訴えた


マレーシアのアンワル首相はビジネス・フォーラムに参加したほか、インドのモディ首相、

ベトナムのファン・ミン・チン首相らとカジュアルな首脳会談も行った。


ビジネス・フォーラムで行ったスピーチの中で、参加国にBRICS域内貿易の強化を訴えた。

「その集団の力によって、私たちは多国間システムのすべてのパートナーと対等な条件で交渉し、

安全に、公平に、そして公正に世界と関わることができる」と述べた。(ベルナマ通信)



Free Malaysia Today の7月7日の記事:

アンワル首相とモディ首相、マレーシアにIITキャンパス設立を協議


アンワル・イブラヒム首相とインドのナレンドラ・モディ首相は、昨日ブラジルで開催されたBRICS首脳会議の

合間に行われた会談で、マレーシアにインド工科大学(IIT)のキャンパスを設立する提案について協議した。

IITはインド最高峰の工学・技術系大学であり、高度なスキルを持つ卒業生を輩出し、イノベーションを促進する

ことで知られている。

また、世界でも常にトップクラスの工学系大学にランクされている。

ベルナマ通信の報道によると、アンワル首相とモディ首相は、IITキャンパスの設置提案を含め、文化、観光、

教育交流を通じた人的関係の強化についても協議した。



マレーシア首相のX投稿(7月7日):

第17回BRICS首脳会議の傍ら、インド首相@narendramodiと短いながらも有意義な内容の会談を行いました。

私たちは、貿易、投資、デジタル技術、防衛などさまざまな分野でマレーシアとインドの戦略的協力を拡大する

大きな可能性を模索しています。

また、デジタル経済、人工知能(AI)、再生可能エネルギー、航空宇宙産業など、マレーシアの将来の分野への

投資に対するインド企業の関心も歓迎します。

また、マレーシアにおけるインド工科大学(IIT)キャンパスの設立提案を含め、文化、観光、教育分野での協力を

通じて、国民同士のつながりを継続的に強化することにも尽力します。

(以下略)
  
アンワル首相のX投稿(2025年7月7日)
アンワル首相のX投稿(7月7日)

 





























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