インドネシアが優良外国人誘致のためにゴールデンビザを正式開始
東南アジア株式新聞 2024年7月29日
インドネシアが外国人投資家・事業家を誘致するためゴールデンビザを正式開始
7月25日、インドネシアが同国に投資する外国人に長期滞在を許可するゴールデンビザを正式に開始した。
たとえば、会社を設立する予定のない外国人投資家は、現地の銀行に35万米ドル以上預金を持てば、5年間滞在できる。
インドネシアのバリなどのリゾート地に滞在して、証券投資だけの生活する外国人が出てくるかもしれない。
もっとも、同国政府が誘致したいのは、現地での企業設立や実物不動産への投資だ。
近隣の東南アジア諸国との優良外国人獲得競争の一環である。
![]() |
ジョコ大統領のXへの投稿(7月25日) |
7月25日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、X(旧ツイッター)に以下のような内容を投稿した。
本日、私はゴールデン・ビザ・インドネシアを正式に立ち上げ、世界の人々にインドネシアへの投資と就労を呼びかけました。私は、良好な経済成長、政治的安定の維持、人口ボーナスと豊富な天然資源を考慮すると、世界の投資先としてのインドネシアの可能性は非常に大きいと楽観的に考えています。
ゴールデンビザにより、外国人はインドネシアでの投資や就労が容易になります。なお、これは国の特典を提供するにふさわしい良質な旅行者にのみ付与されるため、選考は厳正に行われます。このゴールデンビザを最初に受け取ったのはインドネシア代表チームのシン・テヨン監督だ。私は、ゴールデン・ビザ・インドネシア施設のソーシャル化が大規模に実施され、より多くの投資家や世界中の人材にリーチし、経済協力を促進し、国家間の友好関係を強化できることを願っています。
インドネシアのゴールデンビザは2023年8月に試験的に導入された。
今年2月には新首都ヌサンタラへ投資する外国人事業家について要件を緩和した。
今回は、そんな微調整を経ての正式開始の発表だ。
7月25日の国営アンタラ通信の記事:
Golden Visa affirms Indonesia's strategic position: Minister Laoly
ヤソンナ・ラオリー法務人権相は、ジョコ・ウィドド大統領が最近導入したゴールデンビザ政策は、インドネシアが国際社会の目から見て戦略的立場を固めるのに役立つと述べた。
「ゴールデンビザ政策を通じて、インドネシアは戦略的立場を確固たるものにし、世界的な人物、国際投資家、世界の才能、インドネシア人ディアスポラが来て国の発展に貢献することを歓迎します」と、同相は木曜日に同政策の発表会で述べた。
(中略)
「この政策の実施により、ビジネス関係者や投資家は投資時に安心感と確実性を得ることができるという新たな希望が生まれます」と同相は述べ、ゴールデンビザは良質の旅行者のみを対象としていると付け加えた。
ゴールデンビザについての入国管理局の情報
インドネシア政府・法務人権省・入国管理局の公式サイトも、7月25日にプレスリリースを掲載した。
Golden Visa Resmi Diluncurkan, Presiden RI: Privilese Emas bagi Warga Dunia Berkualitas
(ゴールデンビザが正式に開始、インドネシア共和国大統領:質の高い世界市民への黄金の特権)
(前略)
入国管理局長のシルミー・カリム氏は、ゴールデンビザ保有者はこのタイプのビザからいくつかの特別な特典を享受できると説明。これには、滞在期間の延長(最長10年)、国際空港での優先入国サービスレーン、入国管理局で限定滞在許可(ITAS)を申請する必要がなくなることによる効率性などが含まれる。ゴールデンビザの種類には、個人投資家、法人投資家、元インドネシア国民、元インドネシア国民の子孫、セカンドホーム、グローバル人材、世界的著名人などがある。
ゴールデンビザの申請者は全員、インドネシアへの直接投資を約束する必要がある。入国管理局長が詳述する投資形態は、ゴールデンビザ申請者のプロフィールに基づいて決定される。これには、新会社の設立、資本市場の投資商品や不動産の購入、国営銀行口座への一定額の資金の預け入れなどが含まれる。
(中略)
シルミー氏は、ゴールデンビザを申請するための各申請者の資格は異なると述べた。インドネシアに5年間滞在するには、インドネシアで会社を設立する個人外国人投資家は250万米ドル(約400億ルピア)を投資する必要がある。10年間滞在する場合、必要な投資額は500万米ドル(約810億ルピア)である。
一方、インドネシアに会社を設立し、5年間滞在するためにゴールデンビザを申請する親会社の取締役、委員、または代表者の場合、投資額は2500万米ドル(約4060億ルピア)である。10年間滞在するには、投資額は5000万米ドル(約8130億ルピア)である。
インドネシアで会社を設立する予定のない個人外国人投資家には、異なる規定が適用される。 5年間のゴールデンビザの場合、申請者は35万米ドル(約56億ルピア)の資金を預ける必要があり、この資金はインドネシア国債、上場企業の株式、または貯蓄/預金の購入に使用できます。10年間のゴールデンビザの場合、預ける資金は70万米ドル(約113億ルピア)です。
「ゴールデンビザは、evisa.imigrasi.go.idを通じて、できるだけ簡単にするために努力しているデジタルシステムで実施されます。私たちは、移民総局の電子ビザポータルと銀行サービスを統合するために提携しており、ゴールデンビザ申請者は母国からオンラインで移民保証金を預けることができます。このような迅速で簡単な公共サービスにより、インドネシアはますます先進国になることが期待されます」と移民総局長は締めくくり、手続きが簡単で安心できると強調した。
ビザの詳細は以下の、インドネシア入国管理局サイトで探してみてください。
https://molina.imigrasi.go.id/
![]() |
インドネシア入国管理局のサイト Golden Visa is Available と記載がある |
さて、ゴールデン・ビザは、現地でビジネス・投資活動をする外国人に長期滞在を許すビザのこと。
同種のビザを多くの国(欧米先進国、カリブ海などの観光立国)で採用している。
外国人に、観光だけでなく、ビジネス・投資をして現地でおカネを増やしながら、消費し税金を払ってもらうのが狙いだ。
東南アジアでは、他にゴールデン・ビザという名称のビザはないようだが、近い制度としては、シンガポールの「Global Investor Programme(GIP)」やマレーシアの「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)プログラム」がある。
GIPは250万Sドルの投資が必要だ。
MM2Hは投資額要件はないようだが、預金額・定期収入などに最低ラインを設けている。
インドネシア入国管理局は、ゴールデン・ビザには同国の国際空港の優先入国レーンが使えることなどのメリットがあると言っているが、実際のメリットは、5年、10年といった単位の長期滞在が可能になることで、ビジネスに集中しやすくなることだろう。
「会社を設立する予定のない外国人投資家」はどうだろうか?
現地の銀行に預金する最低額が定められている。5年滞在で、35万米ドル。10年滞在で、70万米ドル。
この種の外国人投資家にとって問題は、投資先だ。
既存の会社または不動産に出資するパターンはまあよい。将来性のある会社や不動産を見つるける自信があるならゴールデン・ビザを取って、投資活動をすればよい。
新首都ヌサンタラでの投資なら他にも優遇措置があるようだし、特にこの種の投資家をインドネシア政府は求めている。
証券投資家にとっては、証券市場や為替レートなど投資環境に魅力があるかどうかのほうが重大だ。
インドネシア株のIDX総合指数は今ひとつ安定した成長力がないし、ルピアは近隣諸国の通貨に比べて頼りない(日本と同じくらいの頻度で為替介入している)。
ただ、10年物インドネシア国債の利回りは6〜7%ある。
関連記事:
コメント
コメントを投稿