シンガポール株が好調、3600の壁越えも見えてきた(2024年7月11日)
東南アジア株式新聞 2024年7月11日
シンガポール株が好調、3600の壁超えも見えてきた
シンガポール株式市場(SGX)が最近、好調だ。
7月11日、STI指数は3連騰して3475.06で終えた。
地元経済メディアの報道では、今回の上昇は3大銀行株(DBS、OCBC、UOB)の上昇が牽引した(11日に力強かったのはDBSだけだったけども)。
STI指数は、世界金融危機前の2007年10月に3900台を記録したことがあるので、史上最高値まではまだ距離がある。
しかし、年内に、2018年5月の高値3641に到達する可能性は見えてきた。
このところボラティリティが低めでアクティブ投資家にとってものたりないシンガポール株式市場だったが、3600の壁を超えて上昇できれば、魅力的な市場となるだろう。
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STI指数の1週間(SGX公式アプリより) |
The Strait Times の7月11日の記事:
Singapore stock rally likely to continue as dividend plays shine
(シンガポール株の上昇が続く見込み、配当銘柄が好調で)
シンガポール – 米国の金利引き下げの可能性が高利回り市場の魅力を高めているため、シンガポール株のここ数年で最高の上昇は続くかもしれない。
米国の金利がピークに達したとの確信が高まっているため、投資家はシンガポールの高利回り不動産投資信託(REIT)や銀行株に流れ込む可能性がある。トレーダーは、米連邦準備制度理事会が9月に政策緩和を開始すると予想している。
(中略)
「シンガポール株式市場の魅力は通貨と配当利回りだ」とフィリップ証券の調査部長ポール・チュー氏は述べた。「世界経済の成長鈍化と金利引き下げの可能性から、投資家はシンガポールのようなベータ値の低い国に資金を回すだろう」
記事は、高配当銘柄と高利回りREITが人気だと言っている。
シンガポールは米ドル・ペッグ政策を採用しているため、米国が金利を下げれば、シンガポールも下げる。
利下げが近いと見て、投資家は今のうちに高利回り株・REITを買っておこうと行動する、という理屈だ。
また、銀行家らの借入金利が下がることは不動産セクターにとってプラス材料でもある。
The Strait Times の7月10日の記事:
Banks catapult STI to 6-year high as Singapore stocks extend gains(銀行がSTIを6年ぶりの高値に押し上げ、シンガポール株の上昇が続く)では、大手銀行株が貢献していると指摘した。
フィリップ証券の調査アナリスト、グレン・サム氏は、同取引所のパフォーマンスは幅広く、上昇は特定のセクターに限ったものではないとし、「この上昇は、すべての企業の決算発表を前に好業績が期待されたためかもしれない」と指摘した。
同氏は、金利の長期的高騰が国内銀行の株価を押し上げており、こうした銀行がSTIの約45%を占めていると付け加えた。
DBS銀行は同業他社に先んじて2%上昇し、52週間の最高値38.17ドルをわずかに下回る38.15ドルとなった。UOBは0.7%上昇して33.10ドル、OCBC銀行は0.5%上昇して史上最高値の15.23ドルを記録した。
シンガポール株(STI指数)は、世界金融危機(リーマンショック)前に最高値を記録した後、危機で1700台まで落ちた。
その後、3000台まで回復して以降、上昇ペースは非常にスローで、アクティブに売買する投資家があまり魅力を感じない株式市場となっていた。
もちろんシンガポール証券取引所(SGX)など関係者は魅力向上に取り組んではきた。
1ヶ月ほど前、CNBCが興味深い記事を投稿していた。
CNBC の6月12日の記事:
Singapore wants to revive its stock market. Could major Asian markets have the answers?
(シンガポールは株式市場の復活を望んでいる。アジアの主要市場にその答えがあるだろうか?)
シンガポールの規制当局は長年、同国の証券取引所の魅力を高めようと努めてきた。
この都市国家の経済規模は香港より大きいかもしれないが、シンガポール証券取引所に上場している企業の時価総額は、その約7分の1である。
5月のSGX証券取引所の証券市場上場総額は、7985億5000万シンガポールドル(5904億7000万米ドル)だった。
一方、香港証券取引所の時価総額は、5月末時点で32兆9000億香港ドル(4兆2100億米ドル)だった。
CNBCが話を聞いたアナリストらは、考えられる解決策としては、投資家との関わりを深めることや、日本や韓国のような「バリューアップ」プログラムを検討することなどが挙げられると述べている。
韓国の事情は詳しくないが、日本では、東京証券取引所が情報開示義務の拡大や「コーポレートガバナンス・コード」の順守を義務付けるなど、上場企業の魅力向上策を採ってきた。
広く見れば、金融庁が関係者(学者・経済団体・運用会社・経営コンサルタントなど)を集めて、投資家・運用者側の行動規範「スチュワードシップ・コード」を作り、同時に東証がCGコードを策定して、15年から実施した。
2つの行動規範により、大きな流れとして、上場企業が株主重視の政策を実行するようになった。
上場企業は、株主から託されたお金(資本コスト)をより大きく上回る事業リターン(成果として高配当)を目指し、それが達成できない場合は、積極的に自社株買いをして一株当たりの価値を上げることなどを実行するようになった。
そんな上場企業の行動が、ほとんど経済成長しない日本で、株式市場が活況である大きな理由となっている。
とは言え、SGX上場企業のROE(株主資本利益率)や配当性向は、東証上場企業よりも高い。
日本は低いレベルから上げてきたのが株式市場活況につながったわけで、SGXがまねをしても大きな改善効果はないだろう。
だが、他のバリューアップ策はありうる。
個人的な意見だが、たとえば、SGXは3大銀行だけで市場を牽引できるような状態なので、他業種の大物(時価総額が大きな上場企業)を増やせたら、魅力はかなり上がりそうだ。
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