マレーシアのショッピング・モール過剰問題(2024年7月)

 

東南アジア株式新聞 2024年7月27日

マレーシアのショッピング・モール過剰問題(2024年7月)


ショッピングモールが過剰にある問題はマレーシアに限らないだろうが、最近、マレーシアについての記事をいくつか見かけたので紹介する。

当然の話だが、あるエリア内に同じカテゴリの商業施設が過剰にあると、わりと短期間で淘汰が起きる。

それでも、なぜか、新設が止まらない。

  
2024年2月・中国正月セール時のエクスチェンジTRX
2月・中国正月セール時のエクスチェンジTRX

アルジャジーラ(Al Jazeera)の7月15日の長文記事:

Malaysia is building malls like crazy – but shoppers aren’t coming

(マレーシアはショッピングモールを猛烈に建設中、だが、買い物客は来ない)


副題が、Dozens of new malls are under construction in the country even as existing complexes struggle to attract customers.(既存の複合施設が顧客獲得に苦戦している一方で、国内では数十の新しいショッピングモールが建設中だ。)


これだけで、だいたいの内容は想像できるだろう。

とはいえ、パトリック・リー記者が足で稼いだ具体的なエピソードがわりとおもしろい

興味ある方はアルジャジーラの記事を読んでもらいたい。


少しだけ紹介する。

最近の成功例とそうでない例として挙げられているのは以下。

  • Exchange TRXモールは、11月に95%の稼働率でオープンした。マレーシアで2番目に高いビルであるExchange 106の下にあるこのモールには、オープン以来、多くの飲食店や高級ブランドのアウトレットがあり、常に大勢の客を集めている。


  • 10月初旬にオープンしたパビリオン・ダマンサラ・ハイツの第1フェーズは、最近の週末の訪問では比較的空いていた。下層階には数十人の客がいたが、上層階にはほとんど客がおらず、2024年初頭のオープンを告げる板張りの駐車場の前を人が通る姿が見られた。


リー記者が集めたデータは、過剰モール問題の深刻さを示している。


  • 3月の政府データによると、3,300万人が暮らすマレーシアには、センター、アーケード、ハイパーマーケットなど、2023年末時点で1,000を超えるショッピング複合施設がある。


  • マレーシア・ショッピング・モール協会(the Malaysia Shopping Malls Association)が公表したデータによると、2022年時点で、同協会が数えたモールや小売センターの約40%、合計727が、クアラルンプール大都市圏にのみ存在していた。


  • 国立不動産情報センター(the National Property Information Centre、(NAPIC)によると、113万平方メートル(1200万平方フィート)の小売スペースを持つ「新設」複合施設が少なくとも33あり、さらに少なくとも10の建設が計画されている。


同記事では、業界団体やコンサルタントのコメントを集めているが、過剰問題に解決策はなく、モール間の競争により、ときには撤退する施設が出てくる状態が続くようだ。



ローカルのニュース投稿サイトも、ショッピング・モール過剰問題を取り上げている。

SAYSの7月18日の記事:

Shopping Complex Once Dubbed As 'Ghost Mall' To Close Down This Month After 4 Years


かつて「ゴーストモール」と呼ばれたサイバージャヤのショッピングモール、マラカットモールは、4年間の営業を経て7月31日に営業を終了する。

7月17日、同モールの創設者ファジル・ハシム氏はフェイスブックへの投稿で、マラカット・モールは新たなビジネスモデルを模索するため閉店すると述べた。


The Rakyat Post (TRP)の5月27日の記事:

177 Shopping Malls In Klang Valley But Are They All Doing Well? This List Says No


クランバレーにある175のショッピングモールすべてを訪問し、ランキング付けしたツイッターユーザーのSlainthayer氏は、新しくオープンした「アパートメントモール」のYou City Retailをリストに加えた。

You City Retail はタマン・サンテックス MRT の隣に位置しており、その成功は MRT 駅と近隣の住宅からの来客数にかかっていると思われる。

You City Retailは、Slainthayerの D ランクのモールに分類されました。これは「モールに何かが欠けていたり、問題があったりするため、悪いモール」に分類されるカテゴリだ。


TRP記事にはショッピング・モール関連の記事のリンクが多数ついており、多くの投稿者(地元ブロガーなど)が感心を持っていることがわかる。

誰もがショッピング・モールが過剰だと思っているのだ。



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