世界の株式が一斉にリスクオフ、7月24日が転換点
東南アジア株式新聞 2024年7月25日
日経平均株価は -3.28%
世界の株式が一斉にリスクオフ、7月24日が転換点
世界中の株式市場が7月25日、2日連続で(指数の下落を示す)赤に染まった。
特に下げ幅が大きいのは、米国、日本、そして中国・香港と、時価総額が大きめの株式市場だ。
転換点は7月24日(水)で、この日から世界の株式市場が一斉にリスクオフ相場になった。
きっかけは米国でのハイテク株・EV(電気自動車)株の不安。
アジア、欧州と不安が伝染し、米国市場でそうした銘柄が集中的に売られた。
25日も、アジア時間夕方まで、その流れが続いた。
ハイテク株・EV株が下落を主導し、米国・日本などで大幅安
どうやら昨日(7月24日)が転換点だったと、今朝(25日)、気がついた。
昨日(24日)
6日続落で4万円割れした日経平均株価を含め、アジア株はほぼ全滅。ついでに急な円高(ドル円が 157 ➜ 154)。
欧州株がほぼ全滅。
米国株が大幅安(ハイテク株・EV株が大幅安)。
今日(25日)
日経平均株価(3万8000割れ)を含め、アジア株は全滅。ついでに急な円高(ドル円が 152円台)。
欧州株がほぼ全滅(欧州の午前)。
(今ここまで)
この相場が示唆するのは、高くなりすぎていた米国・日本などの株式市場がピークアウトしたこと(少なくとも一時的には)。
言い換えれば、世界的に株式市場はリスクオフ相場に入った。
7月25日の英BBCの記事:Technology shares drop in US and Asia as AI stocks slide (AI関連株の下落で米国とアジアのテクノロジー株が下落)が、水曜(24日)の米国市場以降の様子を次のように描写している。
水曜日のニューヨーク市場では、S&P 500が2.3%下落、テクノロジー株中心のナスダックが3.6%下落し、1日の下落としては2022年以降で最大となった。ダウ工業株30種平均は1.2%下落した。
下落は、NVIDIA、アルファベット、マイクロソフト、アップル、テスラなどの大手企業株だった。
木曜日には、日本の日経平均株価が3%以上下落し、アジアでの下落を主導した。
テクノロジー企業、特にAI関連の株が、今年の株式市場の上昇の多くを牽引してきた。
AIブームの恩恵を最も受けてきたAIチップ大手NVIDIAの株価は6.8%下落した。過去2週間で同社の価値は約15%下落した。同社は8月末に決算報告を行う予定だ。
(中略)
アジアでは、日本の半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスと東京エレクトロン、韓国のSKハイニックスが株価の大幅下落となった。
きっかけは、一昨日(23日)、米国市場のクローズ後に発表されたグーグル(アルファベット)とテスラの第2四半期決算だった。
グーグルは悪くなかったが、テスラは2期連続減益。
24日に明らかになったのは、市場はどちらについても「高すぎる」と判断したことだった。
まず、アジアで関連銘柄(中国のEV株など)が大きく売られた。
トランプ大統領誕生なら「中国ほかアジアのハイテク製品・自動車へ高関税」の予想も影響しただろう。
続いて、欧州の投資家は全般的に一時退避へ動いた。
そして、米国市場でハイテク株・EV株が売られた。
今年、米国株は史上最高値を更新してきた。
そろそろ高すぎだろ、と思っていた人も多数になっていた頃合いだった。
米国株からの資金引き揚げで、ドルが他の通貨に対して売られている。
日本株も似たようなものだが、独特のメカニズムもある。
円安が進むと輸出企業の利益が増えることを支えに日経平均が高値圏にあった。
急な円高で、逆回転が始まった。
(急激な円高は、ドルの全面安に加え、日銀が今月末に利上げをするという観測が原因とされている。)
株式市場はピークアウトしたからと言って、暴落するとは限らない。
ゆっくりと下落して調整するパターンもある。
今のところ、危ういのは一部の株式市場ーー米国、日本、それに少し前にピークアウト感が出ていた中国・香港ーーだ。
東南アジアや欧州の多くの株式市場は、まだ、大幅安とまでは行っていない。
しかし今、かなり嫌な雰囲気が世界中の株式市場にある。
2008年世界金融危機(リーマンショック)の時は、落ち込んだのは米国と欧州で、高めの成長を維持していた中国経済・市場があったため、最悪の世界大不況とまでは行かなかった。
今回、中国が巨額の不良債権問題を抱えていることは周知の事実で、力強く経済成長する近未来は予想するのが難しい。さて、どうなるか。
トランプ氏が次期大統領になった場合のシナリオ
とはいえ、何の指針もないのでは、投資家もビジネス人も動きようがない。
ハイテク株の調整は、現在の市場環境を前提にしていない。
米国の次期大統領がトランプ氏だと環境激変が予想され、それが株価評価を難しくしている。
マレーシアの The Star が7月24日に掲載した Five scenarios that may happen from Trump 2.0 (トランプ2.0から始まる5つのシナリオ)が興味深い点をまとめている。
投資銀行系リサーチ会社 RHB Research Sdn Bhd のグループチーフエコノミスト代行のバルナバ・ガン(Barnabas Gan)氏の意見記事だ。
5つのシナリオを簡略化して紹介すると、以下のようになる。
シナリオ1:中国の緊張とASEANへの悪影響
トランプ氏が提案した中国からの輸入品、特に新エネルギー車や半導体などの分野に対する関税引き上げは、米中の緊張関係を強化する。この地政学的摩擦は投資家心理を動揺させ、新興市場を犠牲にして先進国株式を優遇するだろう。
シナリオ 2: 政治的圧力に配慮した利下げ
米国のインフレの予測は、現時点では、(トランプ氏が誘発した関税が最終的に中期的に物価上昇につながる可能性はあるものの、)米国のインフレが新年に向けて低下していくのが最も抵抗の少ない道筋だ。
2024年と2025年の米国金利引き下げの影響は米国中心の株式の上昇、米国国債の2~10年スプレッドの強気バイアスなどだ。
シナリオ3:脱ドル化に向けた世界的な動きが強まる
2025年までに新たな貿易通貨の出現が加速する可能性があり、BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は自国通貨に裏付けられた準備通貨の創設を積極的に模索している。
この新たな貿易通貨への潜在的な変化は、特にアジアとASEANで新たな成長と発展の機会を切り開く可能性がある。
シナリオ 4: 地政学的要因による感情の高まり
2 つの重要な問題:
> 米国が台湾に軍事保護の支払いを要求する可能性
> ウクライナへの軍事援助停止のリスク
どちらも、世界的な不確実性を高め、トランプ大統領の任期中に投資家のリスク選好を弱める可能性がある。
シナリオ 5: 世界秩序の分裂
トランプ氏が強調する経済的孤立主義と NATO などの同盟に対する懐疑論は、米国同盟国との政治的分裂を拡大するリスクがあり、世界的に個別の貿易ブロックの形成を促す可能性がある。
どのシナリオも、いろんな市場のボラティリティを高める方向性を示している。
2024年の残りの日々と2025年は、安定成長をめざす長期投資家には忍耐力を試される時期、短期アクティブ投資家にとっては忙しい時期となる。
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