バイデン退場後の米大統領選の混迷、アジア株市場は一時退避が目立つ(7月22日)

東南アジア株式新聞 2024年7月22日

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3437.26

-0.30%

1622.07

-0.88%

7321.98

+0.38%

1317.14

-0.58%

17635.88

+1.25%

バイデン退場後の米大統領選の混迷、アジア株市場は一時退避が目立つ


バイデン現・大統領の米大統領選挙からの離脱は、アジアでは7月22日(月)朝に伝わった。

先週、トランプ優勢の見方が広がり、日本・台湾の株式市場などでは半導体株の大幅下落を経験した。


今週は市場が落ち着きを取り戻し、その後の修正が現れてくるタイミングだった。

だが、民主党側はハリス副大統領を次期大統領候補として、新しい副大統領候補や新しい政策がまだ見えない。

アジアの株式市場では一時退避が目立ち、各市場の主要インデックスは微妙に下落した(香港、インドネシアなど強気を維持した市場もあった)。日本の日経平均株価は464円安(-1.16%)だった。



The New York Times の7月22日0時過ぎの記事:

Investors React to Election Upheaval, Reassessing Their Political Bets(投資家は選挙の混乱に反応し、政治への賭けを再評価中)


世界中の投資家は、バイデン大統領が大統領選から撤退した決断が株式、債券、ドル、その他の市場にどのような影響を与えるかを見極めようとしている。


討論会でのパフォーマンス後、バイデン氏の支持率が下がったため、投資家が共和党の勝利に備える中、いわゆる「トランプトレード」が注目を集めた。民主党の新たな候補者が誕生すれば、投資家が認識している選挙の勝算が変わる可能性があり、トレーダーが戦略を再考する中、ボラティリティが高まると予想する人も多い。

日曜深夜の時間外取引では、S&P500指数の先物がわずかに上昇した。市場が開く前は取引が薄くなることもあるが、米国株式市場にとって今年最悪の週の1つとなった後に、この動きは小さいながらも注目に値する。

(中略)

アジアの市場は月曜日早朝、ほとんど下落した。米国の政治的混乱に加え、投資家は中国指導者による経済政策発表を消化していた。上海と深センの株価は月曜日の取引開始時に下落した。

台湾の主要株価指数は月曜日に急落した。世界の半導体サプライチェーンで中心的な役割を担う台湾は、トランプ氏から「我が国の半導体事業の約100%」を奪っていると非難されている。先進的なコンピューターチップの世界最大手メーカーであるTSMCは、台湾市場で大きなシェアを占めている。


日本の日経平均株価は月曜日に小幅下落した。日本の市場アナリストは、トランプ氏とバンス氏がドル安に共感していることが日本株の重荷になると指摘している。最近、対ドルで約40年ぶりの安値に下落した円は、海外で販売される自動車や製造装置などの日本製品の競争力を高めている。


米国東部の0時は、日本の午後1時。アジア市場の動きをよくまとめている。

今週も、半導体株は要注意だ。


CNBCがアジア時間の午前中に流した記事:

Asia stocks fall as Biden drops presidential bid; inflation and GDP data in focus this week(バイデン氏が大統領選から撤退する中、アジア株が下落、今週はインフレとGDPデータが注目)


アジア太平洋市場では月曜日に、ジョー・バイデン米大統領が大統領選から撤退し、民主党候補としてカマラ・ハリス副大統領を承認したとのニュースが報じられ、株式市場は下落した。

投資家は金曜日に発生した大規模な世界的IT障害の影響も見直す。金曜日、マイクロソフトのWindows OSが稼働するマシンがサイバーセキュリティ企業クラウドストライクが発行したアップデートの不具合によりクラッシュし、同社の株価は11%急落した。

(中略)

今週、投資家は韓国と米国のGDPデータ、および地域全体の工場活動データに注目するだろう。韓国と米国は木曜日に第2四半期のGDP速報値を発表する。

今週のその他の経済データには、それぞれ金曜日と火曜日に発表される米国とシンガポールのインフレ率がある。


月曜日の時点では、アジア市場は米大統領選の混迷を消化しきれなかった、というのが本当の所だろう。

先週、トランプ優勢で半導体株が低下した後、反トランプ票を取り込みやすい民主党候補の登場により、トランプ優勢とは言えなくなった。


カマラ・ハリスは、父がジャマイカ出身、母がインド出身の新しい移民の家系から出てきた。トランプが中南米とアジアからの新しい移民を攻撃すれば、ハリスは反トランプの意見を代表しやすい。

問題は、副大統領候補と政策だ。バイデンなら現路線維持だっただろうが、ハリスと副大統領候補はトランプに勝てるよう政策を軌道修正してくることが予想される。

8月3日追記:
8月2日、カマラ・ハリス氏が正式に民主党大統領候補となった。

アジアの株式市場ではこのところ米国の利下げタイミングが大きな材料となっている。

それに加えて、大統領選の混迷で、投資家の様子見気分が強まった。



マレーシアの The Star は7月22日、独立シンクタンクである社会経済研究センター(Socio-Economic Research Centre)のエグゼクティブディレクター、Lee Heng Guie の長文寄稿を掲載した。

Trump 2.0 – more pain than gain(トランプ2.0 – 得るものより苦痛が大)


世界経済や地政学的対立など幅広く分析を加えているが、マレーシアに関する部分だけ(それでも長いが)日本語訳した。

今日見かけた記事の中では、マレーシアの今後の進路についてはっきりした主張をしていたためだ。


マレーシアへの影響の可能性

米国はマレーシアの主要貿易相手国(2023年の総シェア9.5%で第3位、輸出シェア11.3%、輸入シェア7.3%)、投資相手国(2023年末時点での外国直接投資 FDI 残高のシェアで第3位、2023年に承認された米国の製造業投資は合計181億リンギット=外国投資承認総額の14.1%)の1つである。


現在、マレーシアは世界第6位の半導体輸出国であり、チップパッケージング、アセンブリ、テストサービスの世界市場の13%を占めている。

マレーシアは世界のハイテク産業で極めて重要な役割を果たしており、米国の技術需要を支える半導体部品の25%を供給している。

インテル、インフィニオン、アマゾンウェブサービスなどの大企業は、マレーシアの最先端の生産能力を拡大するためにさらに数十億ドルを投資している。


マレーシアは米国主導のインド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity, IPEF)にも積極的に参加しており、貿易、サプライチェーン、持続可能な慣行、汚職対策支援における地域経済統合と協力への取り組みをアピールしている。


米中の貿易と技術の競争は、継続的な貿易転換を通じてマレーシアに利益をもたらすだけではない。トランプ政権が2018年から2019年にかけて中国に貿易関税を課した際、2018年から2022年にかけてマレーシアから米国への輸入は年間7.7%増加した。

マレーシアは、中国+1および台湾+1戦略の下での調達とサプライチェーンの再構成のホットスポットであり続けている。


マレーシアの国家半導体戦略は、集積回路設計、先進パッケージングおよび製造装置への国内直接投資(DDI)と、ウエハー工場および製造装置へのFDIを含め、少なくとも5,000億リンギットの投資を誘致することを目指しており、新工場の開設や既存の製造活動の拡大を検討している外国の多国籍企業の強い関心を刺激するだろう。


全体として、マレーシアは、経済基盤の強化、必要な構造改革の実施、好ましい投資環境の維持、そしてFDIとDDIの両方を推進するための産業およびビジネスエコシステムの強化に重点を置き、この機会を捉えるために迅速に行動する必要がある。

これには、半導体、人工知能、デジタル化、データセンター、再生可能エネルギー、航空宇宙、スマート農業、食糧安全保障などのハイテクおよびクリーンテクノロジーの分野が含まれる。



Lee 氏の主張は、米中競争の中で(半導体などハイテク分野の)サプライチェーン分散先としての地位をマレーシアが取りに行く好機と捉え、行動せよ、ということだ。



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