インドネシア、繊維など中国製品に高関税の導入へ
東南アジア株式新聞 2024年7月5日
インドネシア、中国製品に高関税の導入へ、衣類・繊維など最大200%
インドネシアが中国製品を含めた輸入品への関税を引き上げようとしている。
欧州連合(EU)が7月4日に中国EVに対する高関税をスタートしたことが大きなニュースになっているが、インドネシアの関税引き上げでも、衣類・繊維・陶磁器など中国製品が多く対象となる。
世界貿易では、中国と米・EUの対立の構図が強化されつつある。
このため中国はグローバル・サウス重視政策で市場確保をめざしている。
その中国の政策にとって、世界4位の人口大国インドネシアは主要な国の一つだ。
インドネシアにとっても中国はかなり重要な国だ。中国は最大の貿易相手国であり、技術や投資の面で協力的な国でもある。
インドネシア政府からは中国との関係悪化を懸念する声はない。
EV(電気自動車)など中国の先端技術製品は積極的に輸入を継続し、軽工業品では国内産業を保護する政策を取ることについて、中国と話がついているのかもしれない。
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| インドネシアの5月の輸出入(同国政府・統計局) |
※ インドネシア政府・統計局のインフォグラフィック
右下の国旗のところ、5月の石油・ガス以外の輸出(1位の中国:4739百万米ドル)と輸入(1位の中国:6051百万米ドル)
まずはインドネシア国内の報道から。
インドネシア国営アンタラ通信の6月29日の記事:
Indonesia to impose up to 200-pct import tariffs on Chinese goods
(インドネシア、中国製品に最大200%の輸入関税を課す予定)
インドネシアは、中国と米国の間で進行中の貿易戦争の影響を緩和するため、中国製品に最大200%の輸入関税をまもなく課す予定だ。
インドネシアのズルキフリ・ハサン貿易大臣は金曜日、関連規制が発効すればこの政策は発効すると述べた。
同大臣は、貿易戦争により中国で供給過剰が生じており、西側諸国は中国製品を拒否し、インドネシアなどの他の市場に輸出先を向けざるを得ないと説明した。
中国製製品への関税は100〜200%の範囲になるとハサン大臣は指摘した。
「米国は輸入陶磁器や衣類に200%の関税を課すことができる。我々も、中小企業や産業が生き残り、繁栄できるよう、そうすることができる」と同大臣は述べた。
アメリカができることはインドネシアにもできる!強気の発言だ。
今回の関税引き上げ政策は、中国製品と競合する地元の産業界からの声に応えたものだ。
たとえば、商工会議所は関税引き上げを含めた地元産業の保護策を政府に求めている。
Jakarta Globeの7月3日(水)の記事:
Kadin Urges Stakeholder Input on 200 Pct Import Duty for Chinese Goods
(インドネシア商工会議所、中国製品への200%輸入関税について関係者の関与を求める)
インドネシア商工会議所(カディン)は、中国製品に対する物議を醸している200%の輸入関税案について立場を表明し、さまざまな反応を引き起こしている。同会議所は、貿易省に対し、政策策定にビジネス関係者、団体、労働組合を関与させるよう求めている。
香港(もちろん中国からの視点)での報道では、中国のグローバル・サウス政策への反対表明と受け取っている。
香港 Asia Timesの7月3日の記事:
Indonesia rebuffs China's Global South trade drive
(インドネシア、中国のグローバル・サウス貿易推進を拒否)
閉鎖的な西側市場から脱却し、南半球諸国との貿易関係を強化して多様化を図る中国の戦略は、インドネシアが中国の労働集約型製品に100~200%の関税を課す意向を発表したことで打撃を受けている。
過去数日間、インドネシアの複数の当局者は、世界で4番目に人口の多い国が、繊維、履物、電子機器、陶磁器、バッグなどの安価な中国製品に反ダンピング関税とセーフガード措置を課す規制を起草中であると述べている。
スリ・ムルヤニ・インドラワティ財務大臣は6月27日、中国製品に対する反ダンピング関税とセーフガード措置(ADDとSM)の適用に関する規則を策定するため、貿易大臣および工業大臣と協力すると述べた。
だが、インドネシアと中国との貿易戦争に発展する雰囲気は、少なくとも、まだない。
冒頭に挙げたアンタラ通信が、貿易大臣の「アメリカができることはインドネシアもできる」主旨の発言を報じたのと同じころ、中国政府系メディアは中国・インドネシアの経済関係の深まりを強調していた。
中国・人民日報系の環球時報(Global Times)の6月27日の記事:
Exclusive: China, Indonesia building robust ties in trade, investment, tourism, official says
(独占:中国とインドネシアは貿易・投資・観光で強固な関係を築いている、当局者が語る)
編集者注:
中国とインドネシアの貿易額は大幅に増加し、現在では年間1,000億ドルを超えている。中国は11年連続でインドネシア最大の貿易相手国であり、8年連続でインドネシアの外国投資の上位3位にランクされている。さらに、新エネルギー車を含む新興産業における両国の協力の見通しは有望だ。文化交流の面では、インドネシアはますます多くの中国人観光客のお気に入りの目的地の1つになっている。
(中略、以下、インドネシアの観光・創造経済大臣、サンディアガ・サラディン・ウノ氏へのインタビュー)
GT: 一部の西側諸国は中国製EVの「過剰生産能力」問題を主張し、中国製EVに追加関税を課すことを決定しました。これに対してどのように対応しますか?
ウノ: 私は中国製EVを試乗しましたが、品質は非常に良好です。現在、インドネシアのEV価格はかなり高いですが、一部の中国メーカーはすでにEVの流通を開始しており、価格を下げるのに役立つ可能性があります。
過剰生産能力の問題に直面しているとは思いません。むしろ、EVエコシステムが両国に利益をもたらす方法に焦点を当てるべきです。一部のメーカーがすでに行っているように、インドネシアに製造能力を確立できれば、インドネシアと中国の双方にとって有利になります。
この記事では、この数倍、ウノ大臣の発言を掲載している。
その他のウノ大臣の発言も、中国との経済関係の強化を主張しており、両国の友好は強固になっていることを印象付けている。
確たる情報はないが、今回の関税引き上げについては、インドネシア政府は中国政府とある程度相談済みなのではないかと思う。
7月6日追記
インドネシア政府は「中国製品ターゲット」の関税引き上げであることをトーンダウンしたいようだ。
Jakarta Globe の7月6日の記事:
Luhut: 200 Pct Import Tariff Not Aimed at China, Under Review
(ルフット大臣:200%関税は中国を狙っていない、まだ検討中)
ルフット・ビンサール・パンジャイタン投資担当大臣は、200%の輸入関税を課すという政府の提案は特に中国を狙ったものではないと述べた。同大臣は、この政策が国内産業のニーズや国際貿易基準に合致しているかどうか、まだ徹底的に検討中であると述べた。
「我々は特定の国、特に中国を狙っているわけではない。すべての措置は我が国の国益に基づいて講じられている」とルフット大臣は金曜日、ジャカルタで公式声明を発表した。

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