グリーン投資戦略を打ち出したマレーシア、投資誘致で脱炭素と産業競争力向上を狙う
東南アジア株式新聞 2024年7月18日
グリーン投資戦略を打ち出したマレーシア、投資誘致で脱炭素と産業競争力向上を狙う
マレーシア政府は7月15日、「グリーン投資戦略」(Green Investment Strategy)の実施を決めた。
すでに実行中のエネルギー移行ロードマップと新産業マスタープランに沿って、再生エネルギーやグリーン・モビリティなど7つのコア分野に投資を誘致する。
国内外から投資を呼び込むことによって、自国の脱炭素化と産業競争力の強化を狙っている。
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アンワル首相のX投稿(7月15日) |
アンワル・イブラヒム首相が7月15日にX(旧Twitter)に投稿した文章:
「本日、2024年第5回国家投資評議会(MPN)会議の中で、マレーシアを主要な地域グリーン投資先およびハブにするという重点に沿ってグリーン投資を増やすための戦略計画に関連するいくつかの研究結果が取り上げられました。
この取り組みは、国家エネルギー移行ロードマップ(NETR)および新産業マスタープラン2030(NIMP 2030)で設定されているように、2050年という早い時期にネットゼロ炭素排出目標を実現する上で非常に重要です。
私は、エネルギー移行とグリーン投資をより効果的、秩序正しく、体系的に実施することが、優先的なグリーン投資先としてのマレーシアのイメージ、評判、魅力を高めるために非常に必要であると述べました。
会議では、国の競争力を向上させるための取り組みとして、行動計画の評価と合意も行われました。
Sayugia 氏によると、この取り組みにより、IMD が発行する世界競争力レポートにおけるマレーシアの地位が向上することが期待されています。
MADANI 政府は非常に楽観的で、マレーシアは競争力を高め、国民の幸福のために持続可能な経済成長を達成できると考えています。」
少し説明する。
「マレーシアを主要な地域グリーン投資先およびハブにするという重点に沿ってグリーン投資を増やすための戦略計画」が、グリーン投資戦略だ。
国家エネルギー移行ロードマップ(NETR):マレーシアエネルギーシステムを化石燃料ベースからより環境に優しく低炭素なシステムに移行する工程表。
新産業マスタープラン2030(NIMP 2030):マレーシアの経済的地位の向上を目指す産業育成計画。
MADANIは、アンワル政権のスローガンだ。MADANIは、keMampanan(持続可能性)、kesejAhteraan(繁栄)、Daya cipta(革新)、hormAt(尊敬)、keyakiNan(信頼)、Ihsan(思いやり)というコアバリューの頭文字をとったもの。主に国内の良好な統治、持続可能な開発、および民族を意味する。
さて、グリーン投資戦略という行動計画名はよいとして、詳細はまだ明らかになっていない。
現地のニュースによると、再生エネルギー、グリーン・モビリティ、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)などを含む7つのコア分野への投資を確保すること、グリーンテクノロジー分野への外国直接投資を活用すること、グリーン投資エコシステムを改善すること、などの特徴がある。
(詳細が公表された時点で記事に追加したい)
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ザフルル大臣のX投稿(7月15日) |
ザフルル投資貿易産業省(MITI)大臣のX投稿:
「国家グリーン投資戦略は、国家の社会経済的持続可能性を促進します。
首相が議長を務める国家投資評議会(MPN)第5/2024号会議は、マレーシアにグリーン投資を誘致し、持続可能な社会経済的発展を促進するために、グリーン投資戦略を実施することを決定しました。
この戦略の実施により、エネルギー転換とグリーン投資がより効果的、秩序正しく、体系的に実施されることが示されると確信しています。
主な目標の1つは、目標#NIMP2030とNETRを達成するために、マレーシアへ投資を誘致し投資額をほぼ8倍にすることです。」
8倍の具体的金額も不明だが、参考になる情報はある。
New Strait Times の4月15日の記事:
Malaysia's "green" investments surge more than three-fold to over US$1bil: Survey
(マレーシアの「グリーン」投資が3倍以上に急増、10億ドル超に:調査)
マレーシアでは昨年、グリーン投資が前年比326%増の10億3000万ドルに急増した。
ベイン・アンド・カンパニー、グリーン投資グループ GenZero、スタンダード・チャータード銀行、テマセクが共同で発行した「東南アジアのグリーン経済2024年報告書:変化の兆し」(Southeast Asia's Green Economy 2024 Report/Moving the needle)によると、これは東南アジアのグリーン投資総額の16%を占めた。
報告書は、昨年も引き続き電力、特に再生可能エネルギーがグリーン投資の主要焦点であったが、主にマレーシアとシンガポールのエネルギー効率規制の影響でグリーンデータセンターへの投資が著しく増加したことを強調した。
例えば、GDSホールディングスBhdはヌサジャヤ・テックパークのデータセンターに2億8000万ドルを投資しており、YTLパワー・インターナショナルBhdはクライに2億5000万ドルのデータセンターを建設中である。
報告書が対象にしたASEAN諸国の中では、マレーシアは、シンガポールに次いで、グリーン投資や脱炭素の取り組みを評価したグリーン経済指数が高い。
3位のインドネシアと同様、産油国でもあるマレーシアにとって、脱化石燃料は大きな課題だ。
そして、エネルギー移行が実現すれば、大きく産業構造を変えることにもなる。
外資頼みの側面はあるが、グリーン投資戦略はまさにマレーシアの国家戦略にふさわしいと思う。
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