2025年 ASEAN議長国としてのマレーシア

 東南アジア株式新聞 2024年1月3日

2025年 ASEAN議長国としてのマレーシア

持ち回りのASEAN議長国が2025年、マレーシアに回ってきた。

アンワル政権は、2024年初めから議長国としての議題設定などを進めてきており、準備万端で迎えたと言えるだろう。

年間テーマは、「包摂性と持続可能性(Inclusivity and Sustainability)」。

議長としてASEAN内部の経済協力を推進するほか、経済好調で勢いのあるアンワル政権は。外交的な成果や自国経済へのプラスの影響を狙っている。



Malay Mail の1月1日の記事(中身は国営ベルナマ通信):

Malaysia enters 2025 as Asean chair | Malay Mail


マレーシアは、ASEAN議長国に正式に就任した。多国間外交関係の強化、地域協力の強化、より広範な地政学的展望の形成を目的とした一連の国際イベントを主導する準備を整え、順調に2025年の歩みを始めた。

1967年にASEANが設立されて以来、5度目の輪番議長に就任したマレーシアは、変化する世界情勢の中で、地域の平和、安定、繁栄の共有に向けて地域グループを前進させるという決意を固めている。

「包摂性と持続可能性」をテーマに、マレーシアは年間を通じて全国で300を超える重要な会議やプログラムを主催する。

主催国として、マレーシアは特に人工知能(AI)、再生可能エネルギー、観光、ヘルスケアなどの分野で数多くの取り組みも行う。



マレーシアのアンワル政権は、こうした基本プログラムに加えて、外交の面で新たな試みを打ち出す見込みだ。

議長国としての外交

アンワル首相は議長国の間に、外交的な成果を狙っていると目されている。

5月に、ASEAN湾岸協力会議(GCC)プラス中国の首脳会議(summit of the Asean-Gulf Cooperation Council (GCC) Plus China)が予定されている。

この高官級会合は、東南アジア地域と中東湾岸諸国、そして中国の間で、複数の分野にわたる協力と相乗効果の拡大への道を開くことを狙っている。


ASEAN内部の問題もある。

1つは、東ティモールの地位だ。現在は「ASEAN10+東ティモール」のような表現がされるが、東ティモールを正式メンバーとし、「ASEAN11」になるかもしれない。

もう1つは、長きにわたって反政府勢力との内戦状態を抱えているミャンマーへの対応だ。イスラム教徒のロヒンギャ問題もある。

ASEANは加盟国の内政に干渉することはしてこなかったが、ミャンマーは加盟国で唯一の政情不安定国であり、アンワル首相は安定化に向けて何らかのアプローチをすると見られている。


アンワル氏は、元タイ首相のタクシン・シナワット氏をASEAN議長の非公式顧問に任命している。ベテラン政治家のタクシン氏をこうした外交問題についての相談相手にするのだろう。


  
アンワル首相のX投稿(タクシン氏をASEAN担当顧問に)2024年12月27日
アンワル首相のX投稿(タクシン氏をASEAN担当顧問に)


マレーシア経済への効果


Selangor Journal の1月3日の記事(中身は国営ベルナマ通信):

ASEANのイベント開催は経済にプラスになる:ファミ氏発言

Hosting Asean events will help our economy, says Fahmi - Selangor Journal

マレーシアの今年のASEAN議長国としての地位は、経済にプラスの影響を与えると予想されると、コミュニケーションズ大臣のファフミ・ファジル氏は述べた。

統一政府のスポークスマンは、今年5月に開催される予定のASEANサミットを含め、マレーシアが年間を通じて約323のASEAN会議を主催することを強調した。

「このASEAN議長国としての地位は、特にこれらのイベントが開催される州の人々に大きな利益をもたらすでしょう。ホスピタリティ、観光、地元産業などの分野は大きな恩恵を受けるでしょう」と同氏は説明した。


マレーシアが誇るリゾート地、ランカウイ島は、ASEAN関連の大イベント3つの会場として予定されている。

1月1日の New Strait Times によると、ランカウイ開発庁​​(Lada)のCEO、(称号 ダトゥク)ハスリナ・アブドゥル・ハミド氏は、「2025年のASEANロジスティクス事務局(SILA)のコーディネーターとして、Ladaはこの機会を捉えて、代表団にランカウイのユニークな魅力を紹介するつもりです」と、記者会見で述べた。


議長国であることの効果が及ぶのはイベント開催地だけではない。

マレーシア政府は国産の電気自動車(EV)第1号であるプロトン「e.MAS 7」をASEAN議長国の公式自動車に決めた。

アンワル首相らが同車を活用することで、加盟国やASEANが交流する他の地域にマレーシア産EVをアピールしていくと見られる。


議長国マレーシアがASEANをどう導くのか、2025年の東南アジア情勢で注目点の1つだ。



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