政府系ファンド|インドネシアのダナンタラ(Danantara)[更新]
東南アジア株式新聞 2025年6月8日
政府系ファンド|インドネシアのダナンタラ(Danantara)
インドネシア2番目の政府系ファンド(SWF)
2025年2月24日に運用開始
政府が200億ドル拠出、第一弾として今年、戦略的プロジェクト20件に出資する予定
将来的には、国営企業すべての資産を管理(資産総額は9,000億ドル超)
ダナンタラ、グラブのGoTO買収ディールに参加?
Jakarta Globe の6月7日の記事(中身はジャカルタ発ブルームバーグ電):
Danantara in Talks to Join Grab’s $7B GoTo Deal: Bloomberg
インドネシアの政府系ファンド、ダナンタラは、グラブ・ホールディングスによるGoToグループの70億ドルの買収提案に参加するための初期協議を行っている。この動きは、規制上のハードルを緩和し、国内有数のテクノロジー企業に対する外国企業の支配をめぐる懸念を払拭する可能性がある。
この提案された取引は、インドネシアの規制と政治情勢をうまく乗り切ることができれば、東南アジア最大級のテクノロジー企業統合の一つとなるだろう。
ブルームバーグに事情に詳しい関係者が語った。
ダナンタラがGoToと合併後の新会社の少数株取得に向けて予備協議を開始した、と。
シンガポールに本社を置き東南アジアに幅広く展開するGrabとインドネシアのGoToは
合併に向け交渉しているとたびたび報じられている。
この記事によると、インドネシアの独占禁止法機関KPPUが5月に、独占禁止法違反を防止するため、この取引を綿密に調査すると警告したそうだ。
プラボウォ大統領肝いりの政府系ファンドが新会社に出資する形になれば、インドネシアの法規制をクリアしやすくなる可能性がある。
東南アジア株式新聞 2025年5月20日
国営アンタラ通信の5月19日(月)の記事:
ダナンタラとフューチャー・ファンドがグローバル投資で提携
Danantara, Future Fund partner to boost global investment - ANTARA News
インドネシアの政府系ファンド、ダナンタラは、オーストラリアのフューチャー・ファンドと提携し、グローバルな投資協力を強化しました。
ダナンタラのCEO、ロサン・ルースラニ氏は月曜日のプレス声明で、フューチャー・ファンドがダナンタラの国際政府系ファンドフォーラム(IFSWF)への加盟を支援しており、両機関のより緊密な協力への道筋が開かれていると述べました。
フューチャー・ファンド(Future Fund)はオーストラリアの政府系ファンド(SWF)。
2006年の設立で、2025年第1四半期時点で総額3,070億豪ドル超の資産を運用している。
国際政府系ファンドフォーラム(IFSWF)は、2009年にロンドンに設立された政府系ファンドの運用会社による非営利の国際団体のこと。
現在の会員数は38のSWF。
インドネシアのSWF第1号であるインドネシア投資庁(Indonesia Investment Authority)が既に加盟している他、東南アジアからは、シンガポールのGIC、マレーシアのカザナ・ナショナルも参加している。
国営アンタラ通信の4月15日の記事:
ダナンタラとQIAが40億ドルの共同投資ファンド
Danantara Indonesia, QIA announce $4 billion joint investment fund - ANTARA News
政府系ファンドのダナンタラ・インドネシアとカタール投資庁(QIA)は、インドネシアの経済発展を加速させるためのプロジェクトに投資する40億米ドルのファンドを共同で運用する。
インドネシアとカタールはそれぞれ20億米ドルをこのファンドに拠出し、下流産業、ヘルスケア、再生可能エネルギー、テクノロジー、その他の戦略的セクターへの投資に重点を置く。
4月13日、プラボウォ・スビアント大統領がカタール公式訪問中に、両政府はインドネシアの主要開発分野に重点を置く共同管理の投資ファンドを設立することで合意した。
それが40億ドル共同投資ファンドとなった。
東南アジア株式新聞 2025年3月24日
戦略アドバイスのためのドリーム・チームを発表
3月24日、ジャカルタ発ロイター電:
政府系ファンドのダナンタラ・インドネシアが発表、サックス、ダリオ、元タイ首相タクシンの「ドリームチーム」
インドネシアの新政府系ファンド、ダナンタラは月曜日、戦略を練るための「ドリームチーム」を発表した。チームにはヘッジファンドマネジャーのレイ・ダリオ氏、経済学者のジェフリー・サックス氏、影響力のあるタイの元首相タクシン・シナワット氏の元社長や顧問らが含まれている。
(中略)
ダナンタラの最高投資責任者パンドゥ・シャヒリル氏は任命式で、これらのアドバイザーは金融の不安定化と地政学的要因の激化による世界的なリスクの影響を管理する上での指導を提供すると述べた。
6月5日の発表で、
レイ・ダリオ氏は非公式アドバイザー(unofficial advisor)であることが明らかになった。
国営アンタラ通信の2月26日の記事:
重要な項目が書かれているので、ほぼ全文を日本語訳した。
ダナンタラ:インドネシアの政府系ファンドについて知っておくべきこと
Danantara: What to know about Indonesia's sovereign wealth fund - ANTARA News
1. ダナンタラは数百兆ルピアを管理する
ダナンタラは当初、非効率で的を絞っていない支出プログラムから調達した300兆ルピア (約200億米ドル) 相当の資金を管理する。
資金は、ニッケル、ボーキサイト、銅の下流プロジェクト、データセンター開発、人工知能 (AI) 開発、石油精製所、石油化学工場など、20以上の国家戦略プロジェクトに転用される。
また、食品およびタンパク質生産プロジェクト、水産養殖、および新エネルギーおよび再生可能エネルギープロジェクトへの資金提供にも使用される。
ダナンタラは最終的に9,000億米ドルを超える資産を管理すると予想されている。
2. 機関の構造
監督者および責任者:
プラボウォ・スビアント大統領
諮問委員会:
スシロ・バンバン・ユドヨノ
ジョコ・ウィドド
監督委員会:
委員長: エリック・トヒル [国営企業大臣 (BUMN)]
副委員長: ムリアマン・D・ハダド
監督委員会メンバー:
スリ・ムリヤニ・インドラワティ (財務大臣)
トニー・ブレア (元英国首相)
執行機関:
最高経営責任者: ロサン・P・ルースラニ (投資・下流大臣、投資調整委員会委員長)
最高執行責任者: ドニー・オスカリア (BUMN 副大臣)
最高投資責任者: パンドゥ・パトリア・シャフリル
3. ダナンタラの起源
気候・エネルギー担当大統領特使ハシム・ジョジョハディクスモ氏は、ダナンタラの構想は40年前に彼とプラボウォ大統領の父であるスエミトロ・ジョジョハディクスモ氏によって考案されたと述べた。
スエミトロ氏は経済学者で、1952~1953年(ウィロポ内閣)および1955~1956年(ブルハヌディン・ハラハップ内閣)に財務大臣を務めた。
スエミトロ氏は、経済発展を支援するために国家資産を専門的に管理する機関の必要性を感じていた。しかし、彼の構想が実現したのは40年後のことである。
4. ダナンタラ設立の影響
金融サービス庁(OJK)は、ダナンタラの設立は国営銀行協会(ヒンバラ)の加盟銀行のサービスの質や顧客貯蓄の安全性には影響しないと述べた。
「ダナンタラの設立は、銀行業務やサービスの質、銀行の公的貯蓄の安全性を低下させるものではありません」と、OJKの銀行監督担当最高責任者、ディアン・エディアナ・レイ氏は述べた。
ダナンタラを通じて資産が統合されるヒンバラ加盟銀行は、マンディリ銀行、インドネシア・ラヤット銀行(BRI)、インドネシア・ネガラ銀行(BNI)の3行である。
レイ氏は、ヒンバラの3銀行は引き続き適用規制を遵守して業務を行い、慎重さと優れた企業統治の原則を堅持すると述べた。
東南アジア株式新聞 2025年2月25日
インドネシア政府は2月24日、政府系ファンドのダナンタラを設立すると発表した。
名称は、「Daya Anagata Nusantara(インドネシア列島の力)」、略して Danantara。
新ファンドの国家政策・財政への効果は今後数年間の活動を見るしかないが、国の資産の大半を1つのファンドにまとめて運用するという壮大なプロジェクトとなる。
ファンド自体の財政規律がうまく働くのか、すでに問題視されている。
国の予算と別に動くわけだから、日本の財政投融資と似て、実態が見えにくくなる可能性は十分にある。
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プラボウォ大統領のX投稿(2月24日) |
2月24日のプラボウォ大統領のX投稿(全文の和訳)
今日は節目の日です。約80年が経過した今こそ、私たちの世代が、インドネシアの富が最適に管理され、その恩恵が国民の福祉の向上に真に感じられるよう、国の創始者や先人たちのビジョンを実現する時です。
ダナンタラは単なる投資管理会社ではありません。さらに、ダナンタラは、高い透明性と説明責任の基準をもってインドネシアの富の管理を最適化できる国家開発機関にならなければなりません。
国有企業(BUMN)が最高水準と最良のガバナンスのもとで運営される新たな時代を迎えています。BUMNは、規律、慎重さ、そして良好なガバナンスと責任ある経営への取り組みを維持しながら、イノベーション、大きなビジョン、透明性、技術の進歩を優先する必要があります。
ダナンタラは、BUMN を最適化するための戦略的かつ効率的なソリューションです。ダナンタラは、BUMNの配当金を長期的な成長と雇用創出を促進する産業に投資することで、より先進的で世界的に競争力のあるインドネシアを実現するための重要な柱となるでしょう。
Badan Usaha Milik Negara (BUMN) は、「Badan Usaha=ビジネス組織、Milik Negara=国家に属する」で、国有企業。
今のところ、インドネシア政府の発表文を私は見つけられていない。
よくまとまったニュース記事は以下。
CNAの2月24日の記事:
インドネシア、9,000億ドル相当の資産を管理する政府系ファンドを設立、当初予算で20の「戦略的プロジェクト」を開始
インドネシアの新しい政府系ファンドは、国内の国営企業すべての資産(9,000億ドル以上)を管理することを目指しており、プラボウォ・スビアント大統領は、このファンドが今年、20以上の影響力の大きい国家プロジェクトに投資すると述べた。
月曜日(2月24日)のダヤ・アナガタ・ヌサンタラ(ダナンタラ)ファンドの立ち上げに際し、インドネシア当局は、先週CNAがインタビューした人々を含むオブザーバーが提起した透明性と財務監査に関する懸念にも対処しようとした。
東南アジア最大の経済大国インドネシアでは先週、政府がプラボウォ氏の旗艦プログラムである学生向けの無料の栄養価の高い食事の取り組みとダナンタラに資金を提供するための予算を削減した結果、インドネシアの主要都市で学生の抗議運動が相次いだ。
政府は最近、国家予算を削減し、約440億ドルを節約した。そのうち約200億ドルがダナンタラに充てられる。
この記事が引用した、プラボウォ大統領の発言は次のように多い。
「ダナンタラの200億ドル相当の第一弾投資は、ニッケル、ボーキサイト、銅、食料生産、再生可能エネルギー、人工知能、石油精製所、石油化学工場を含む<戦略的プロジェクト>に使用されます」
「これらは、私たちの将来、私たちの回復力、そして私たちの国の独立を決定する分野です」
「インドネシアはダナンタラを成功に導き、新たな雇用を創出するために、外国のパートナーを含むすべての人々と協力する用意があります」
「インドネシアは世界中のすべての友人やパートナーに、インドネシアは協力、ビジネス、投資、繁栄の共有にオープンであるという明確なメッセージを送っています」
「ダナンタラ・インドネシアは、国際協力の拡大を可能にします。私は、すべての世界のパートナーが、新興経済国としてだけでなく、地域の安定と共有の進歩の柱としてインドネシアの可能性を認識してくれることを願っています」
「インドネシアは先進国になる決意を固めており、ダナンタラの設立はその目標に向けた新たな一歩である」
「私たちは、最初の100日間で、非常に慎重な財務規律と責任あるガバナンスでインドネシアの富と資産を管理するというコミットメントをすでに証明しました」
「ダナンタラが成功するかという懸念は、これが我々の歴史における新しい取り組みなので、予想できることです」
「今日、インドネシア国民全員が誇りに思うことができます。運用資産総額が 9,000 億ドルを超えるダナンタラ・インドネシアは、世界最大の政府系ファンドの 1 つとなるからです」
CNAの記事は、透明性に関する疑問についても書いている。
ダナンタラを率いるのは、ロサン・ルースラニ投資・川下育成大臣。監査役会会長は、国営企業大臣のエリック・トヒル氏。いずれもプラボウォ大統領の側近だ。それだけでも、大統領の思うがままという印象がある。
「現地の研究者らはCNAに対し、国の監査役会(BPK)と金融開発監督庁(BPKP)は、プラボウォ氏の連合であるアドバンス・インドネシア連合が多数を占める議会の承認を得てのみダナンタラを監査できると語った。」
それに対し、ロサン氏は、「この国では法律の免除はない」と強調して、ガバナンスに対する懸念を一蹴したという。
国内からの意見についてもう1つ記事を紹介する。
Indonesia Business Post の2月25日の記事:
エレクトロニクス部門のレイオフが続く中、ダナンタラの立ち上げに労働組合が懸念
Unions concerned over Danantara launch amid layoffs in Electronics sector | Indonesia Business Post
労働党とインドネシア労働組合連合(KSPI)は、ダナンタラ投資管理会社(BPIダナンタラ)の設立を歓迎しているが、その指導部の構成を考えると、インドネシア国民、特に労働者階級に奉仕するという同社の決意には疑問がある。
(中略)
「労働者は、包括法で自分たちの将来を脅かした人々に、苦労して稼いだお金をどうして託せるのか」とイクバル党首は疑問を呈した。
さらに同氏は、エレクトロニクス部門で現在も続く解雇の波を強調し、投資大臣、人材大臣、産業大臣、経済調整大臣を含む政府関係者がこの危機を認識しているかどうかを疑問視した。
同氏は、2025年初頭にはすでにエレクトロニクス部門の何千人もの労働者が職を失っていると指摘した。PTサンケンは1,000人近くの従業員を解雇し、日本への再移転のため操業を停止した。PTヤマハミュージックは工場を中国と日本に移転したため1,000人以上の従業員を解雇した。ブカシのPTトーカイも数百人の従業員を解雇し、操業を停止した。
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