企業研究|ジャーディン・マセソン(Jardine Matheson Holdings Limited、SGX:J36)
東南アジア株式新聞 2025年6月1日
企業研究|ジャーディン・マセソン
(Jardine Matheson Holdings Limited、SGX:J36)
香港を拠点(本社はバミューダ)とする複合企業
1832年に清(中国)の広州で設立、現在のオーナーはケズウィック(Keswick)家
ロンドンとシンガポールに上場
グループ企業:不動産開発のホンコンランド、高級ホテルのマンダリンオリエンタル・グループ、など多数
マンダリンオリエンタルは日本では、東京が稼働中のほか、瀬戸内(高松、直島)が建設中
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JMH株の1年間(SGX公式アプリより) |
5月29日の発表:
リンカーン・パンが2025年12月1日付けでジョン・ウィットの後任として最高経営責任者に
アーディン・マセソン・ホールディングス・リミテッドは本日、
リンカーン・パン氏を2025年12月1日付で最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表しました。
同氏は、11月末に退任するジョン・ウィット氏の後任となります。
リンカーン氏は、アジア太平洋地域最大の総合オルタナティブ投資会社であるPAGから入社します。
PAGでは、プライベート・エクイティ部門のパートナー兼共同責任者を務め、
グループ経営委員会のメンバーでもあります。
以前は、ウィリス・タワーズワトソンでグレーター・チャイナ担当CEOを務め、
アドバンテッジ・パートナーズとGEキャピタルで役員職を歴任し、
マッキンゼー・アンド・カンパニーにも勤務していました。
同社のCEOとして「初の中国国籍者」と報じたメディアもあったが、
多くは「PEファンド出身者」であることを重視して報じられた。
リンカーン氏の経歴では、PEも目立つが、経営コンサルタント歴もあり、幅広い業種を投資と経営の観点から見られることが評価されたのだろう。
東南アジア株式新聞 2025年3月11日
2024年度業績:収益、基礎純利益(一時的要因除く)とも前年比1%減
3月10日の発表:
ジャーディン・マセソン 2024年度業績
再焦点を定め、堅調な業績
基礎純利益は14億7千万米ドルで11%減(ホンコンランドの減損を除くと1%減)
Jardine Cycle & Carriage (JC&C) における JM の株式増加により、アストラの記録的な貢献(+6.7%)
DFIリテールの力強い回復は、Zhongshengの利益減少によって相殺された
ホンコンランドの新戦略、DFIとJC&Cにおけるポートフォリオの簡素化、マンダリンオリエンタルにおけるJMの株式を増加 (+7.8%)
グループ純借入金は 11億ドル減の73億ドル(レバレッジは1%減の14%)
親会社のフリーキャッシュフローは12%増の8億7500万米ドル
年間配当は1株当たり2.25ドルに据え置き
2024年度(12月末まで)単位:百万米ドル
収益:35,779(1%減)
基礎純利益:1,471(11%減)
この業績報告に主要なグループ企業の戦略進捗が記載されているので、以下に日本語訳した。
原文はもっと詳細な情報を記載している。
グループ企業の動向をざっと見たい人は、プレゼン資料に完結にまとめられている。
アストラの戦略進捗
東南アジアでは、アストラは戦略的に付加価値を生む長期計画の作成に重点を置くのと同時に、高い成長を秘めている新たな分野での機会を積極的に追求し、既存の中核事業のオーガニック成長のため投資を継続している。
アストラは、インドネシア最大の私立病院の一つであるジャカルタのHeartology Cardiovascular Hospitalの95.8%の株式を買収することでヘルスケア分野への投資を拡大した。
また、南スマトラで大規模な地熱プロジェクトを所有するPT Supreme Energy Rantau Dedap (‘SERD)の実質的な持ち分を23.7%まで増やし、石炭から再生可能エネルギーへの移行に向けた公約も前進させた。
ホンコンランドの戦略進捗
ホンコンランドは2024年10月に戦略見直しを完了し、現在は超高級な統合商業施設に重点を置いたアジアのゲートウェイ都市のリーダーになることに注力している。
この転換の一環として、グループは事業の簡素化を優先し、Build-to-sell部門からの投資引き揚げと、統合商業不動産の機会への資本をリサイクルしている。
この新しい戦略(2024年6月に開始)の実施の初期段階には、香港におけるグループのランドマークポートフォリオの再開発が含まれる。この再開発により、セントラル地区を変革し、ライフスタイルとビジネス両面を持つ世界クラスの高級小売店の拠点としての地位を強化する。このプロジェクトには10億ドルの戦略的投資が計画されており、そのうち4億ドルはグループが負担し、残りの6億ドルは高級小売店のテナントにより投資される。
同グループはまた、主力の上海西外灘セントラル事業でも大きな進歩を遂げている。
DFIリテールの戦略進捗
DFIは2024年に新戦略の実施において大きな進歩を遂げた。グループのポートフォリオを簡素化し、バランスシートの負債比率を下げつつ、ヘルスケアを中心とした中核事業、特にビューティー&コンビニエンス事業の成長に再投資する。
この枠組みの下、DFIは2024年6月にインドネシアのヒーロースーパーマーケット事業を、2025年2月に永輝スーパーストアへの投資を処分した。
DFIは、業務効率の向上にも注力した。yuu Rewardsロイヤルティプログラムによりサプライヤーと連携強化するだけでなく、プログラムからの豊富なデータを活用し、店舗運営の強化、市場シェア拡大と事業全体の利益率の向上に取り組んだ。
ジャーディン・パシフィック(JP)の戦略進捗
当社の非上場企業 JPグループでは、ポートフォリオの簡素化とグループのB2C事業立て直しに注力した。次の成長のステージへの基盤を築くためだ。
2023年にグレートビューを売却した後、2024年3月にジャーディン・アビエーションの株式50%を売却、2024年9月にジャーディン・シンドラーは台湾のエレベーター事業を売却した。
ジャーディン・サイクル&キャリッジ(JC&C)の戦略進捗
JC&Cは、負債を返済し、投資の柔軟性を確保するため、積極的なポートフォリオ管理と規律ある資本配分を優先した。 2024年にJC&Cはサイアム・シティ・セメントの株式25.5%を売却し、3億4,400万米ドルの資本をリサイクルした。また投資増強もした。成長を続ける再生可能エネルギー資産を持つ、efrigeration Electrical Engineering Corporation(REE)の持ち分を34.9%から41.4%に増加させた。 REEは高い収益を生み出し、JC&C の持続可能性への取り組みをサポートしている。
ツォンシェン(中升)グループの戦略進捗
中升の2024年の貢献の減少と厳しい市場環境にもかかわらず、同社が強力な市場洞察力と堅実な運営能力を備えていると考えている。中国の主要な自動車ブランドと提携しつつ、中升ブランドのアフターサービスと中古車販売に重点を移してきている。中升はEV分野でも最近有望な進歩を遂げている。中国の新エネルギー車メーカー大手セレス社と提携し、AITO電気自動車の販売およびサービスを提供している。
マンダリンオリエンタルの戦略進捗
マンダリン オリエンタルは、高級ホスピタリティの将来的な成長に大きな可能性を見出している。超高級ホスピタリティとしての魅力と規模をさらに高める絶好のポジションにあり、ブランドを強化し、株主、パートナー、コミュニティに価値を創造する。マンダリンオリエンタルの戦略の重要な要素は、マネジメント事業の発展にあり、不動産資産の売却により得た資金をマネジメント事業の成長に使っている。
同グループは、2033年までに世界中で、ホテル、リゾート、レジデンスのポートフォリオを倍増するという野心的な目標を掲げている。
マンダリン オリエンタルはすでに40軒のホテルの節目を超えた。2024年には、資本効率の向上のため、3億8200万ドルでパリのホテルとリテールシセルを売却し、同時にホテルと新たな長期マネジメント契約を結んだ。
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