企業研究|ジャーディン・マセソン(Jardine Matheson Holdings Limited、SGX:J36)【更新】

企業研究|ジャーディン・マセソン

(Jardine Matheson Holdings Limited、SGX:J36)

  • 香港を拠点(本社はバミューダ)とする複合企業

  • 1832年に清(中国)の広州で設立、現在のオーナーはケズウィック(Keswick)家

  • ロンドンとシンガポールに上場

  • グループ企業:不動産開発のホンコンランド、高級ホテルのマンダリンオリエンタル・グループ、など多数

  • マンダリンオリエンタルは日本では、東京が稼働中のほか、瀬戸内(高松、直島)が建設中  

  

ジャーディン・マセソン株の1年間(2025年10月20日、SGX公式サイトより)
ジャーディン・マセソン株の1年間(SGX公式サイトより)






東南アジア株式新聞 2025年10月20日

マンダリン・オリエンタルを買収・非上場化へ


The Edge Singapore の10月17日の記事:

Jardine Matheson moves to privatise Mandarin Oriental for US$3.35 per share

ジャーディン・マセソンは、マンダリン・オリエンタルの残り11.96%の株式を1株あたり3.35米ドルで取得する。

これにより、同社の総評価額は約42億米ドル(54億4000万米ドル)となる。

ジャーディン・マセソンの完全子会社であるビッドコ(Bidco)が残りの株式を取得し、

買収はスキーム・アレンジメント(Scheme Agreement)を通じて実施されます。

このスキーム・アレンジメントには、スキーム・バリュー2.75米ドルと、ホテルグループが香港の商業開発事業

であるワン・コーズウェイ・ベイ(OCB)の一部を売却したことによる0.60米ドルの特別配当が含まれる。

この売却価格は、マンダリン・オリエンタルの9月29日の終値2.20米ドルに対して52.3%のプレミアム、

6月30日時点の1株当たり純資産2.18米ドルに対して53.7%のプレミアムが付されている。


​​

10月17日の発表文:マンダリン オリエンタルの現金買収の推奨

に以下の部分がある。


ジャーディン・マセソンによる提案の背景と理由

(前略)

ジャーディン・マセソン取締役会は、マンダリン・オリエンタルとジャーディン・マセソンの双方にとって、

完全な非公開化が有益であると考えています。

マンダリン・オリエンタルの非公開化は、ジャーディン・マセソンの既存の企業構造を簡素化するとともに、

マンダリン・オリエンタルの成長目標達成をより強力に支援することになります。

ジャーディン・マセソン取締役会は、本買収の条件と構造がマンダリン・オリエンタルと独立株主にとって

最善の利益となると考えています。

本買収の目的は、独立株主の皆様に、マンダリン・オリエンタル株式の価値を最大限に実現する機会を提供する

ことです。

本買収が成立しない場合、ジャーディン・マセソンは他の手段を通じてマンダリン・オリエンタルの上場廃止を

目指して引き続き尽力していく予定です。

(以下略)


Mandarin Oriental International Ltd(SGX:M04)

5年間の株価推移    

マンダリン・オリエンタル株の5年間、SGX公式サイトより
SGX公式サイトより




7月31日の発表:

2025年度上半期(6月30日まで)の業績


ハイライト

  • 基礎純利益は45%増の7億9,800万米ドル(恒常為替レート・ベースで11%増)。

ホンコン・ランドの減損は2024年に計上する予定。

  • リンカーン・パン氏がジャーディン・マセソンの新CEOに就任することが発表された。

2025年12月1日から就任予定。

  • ポートフォリオ企業戦略の実行が進展:

    • ホンコン・ランド、ワン・エクスチェンジ・スクエアのフロア売却に伴う資本循環

    • 永輝とロビンソンズ・リテールの持分売却完了によるDFIリテールポートフォリオ簡素化

  • シンガポール・フードの売却を発表

  • ほとんどの事業の業績が改善したものの、アストラの利益貢献が減少したことにより相殺

  • 親会社のフリーキャッシュフローは6%増の5億8,500万米ドル

  • 中間配当は1株当たり0.60米ドルに据え置き




2025上半期(百万米ドル)

2024上半期(百万米ドル)

増減

%

収益

17,078

17,280

-1

税引き前基礎利益

2,124

1,865

14

株主に帰属する基礎利益

798

550

45




東南アジア株式新聞 2025年6月1日



5月29日の発表:


リンカーン・パンが2025年12月1日付けでジョン・ウィットの後任として最高経営責任者に


アーディン・マセソン・ホールディングス・リミテッドは本日、

リンカーン・パン氏を2025年12月1日付で最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表しました。

同氏は、11月末に退任するジョン・ウィット氏の後任となります。


リンカーン氏は、アジア太平洋地域最大の総合オルタナティブ投資会社であるPAGから入社します。

PAGでは、プライベート・エクイティ部門のパートナー兼共同責任者を務め、

グループ経営委員会のメンバーでもあります。

以前は、ウィリス・タワーズワトソンでグレーター・チャイナ担当CEOを務め、

アドバンテッジ・パートナーズとGEキャピタルで役員職を歴任し、

マッキンゼー・アンド・カンパニーにも勤務していました。


同社のCEOとして「初の中国国籍者」と報じたメディアもあったが、

多くは「PEファンド出身者」であることを重視して報じられた。


リンカーン氏の経歴では、PEも目立つが、経営コンサルタント歴もあり、幅広い業種を投資と経営の

観点から見られることが評価されたのだろう。



東南アジア株式新聞 2025年3月11日

2024年度業績:収益、基礎純利益(一時的要因除く)とも前年比1%減


3月10日の発表:

ジャーディン・マセソン 2024年度業績

再焦点を定め、堅調な業績

  • 基礎純利益は14億7千万米ドルで11%減(ホンコンランドの減損を除くと1%減)

  • Jardine Cycle & Carriage (JC&C) における JM の株式増加により、アストラの記録的な貢献

(+6.7%)

  • DFIリテールの力強い回復は、Zhongshengの利益減少によって相殺された

  • ホンコンランドの新戦略、DFIとJC&Cにおけるポートフォリオの簡素化、

マンダリンオリエンタルにおけるJMの株式を増加 (+7.8%)

  • グループ純借入金は 11億ドル減の73億ドル(レバレッジは1%減の14%)

  • 親会社のフリーキャッシュフローは12%増の8億7500万米ドル

  • 年間配当は1株当たり2.25ドルに据え置き


2024年度(12月末まで)単位:百万米ドル

収益:35,779(1%減)

基礎純利益:1,471(11%減)



この業績報告に主要なグループ企業の戦略進捗が記載されているので、以下に日本語訳した。

原文はもっと詳細な情報を記載している。

グループ企業の動向をざっと見たい人は、プレゼン資料に完結にまとめられている。


アストラの戦略進捗

東南アジアでは、アストラは戦略的に付加価値を生む長期計画の作成に重点を置くのと同時に、

高い成長を秘めている新たな分野での機会を積極的に追求し、既存の中核事業のオーガニック成長のため投資を

継続している。

アストラは、インドネシア最大の私立病院の一つであるジャカルタのHeartology Cardiovascular Hospitalの95.8%

の株式を買収することでヘルスケア分野への投資を拡大した。

また、南スマトラで大規模な地熱プロジェクトを所有するPT Supreme Energy Rantau Dedap (‘SERD)の

実質的な持ち分を23.7%まで増やし、石炭から再生可能エネルギーへの移行に向けた公約も前進させた。


ホンコンランドの戦略進捗

ホンコンランドは2024年10月に戦略見直しを完了し、現在は超高級な統合商業施設に重点を置いたアジアの

ゲートウェイ都市のリーダーになることに注力している。

この転換の一環として、グループは事業の簡素化を優先し、Build-to-sell部門からの投資引き揚げと、

統合商業不動産の機会への資本をリサイクルしている。

この新しい戦略(2024年6月に開始)の実施の初期段階には、香港におけるグループの

ランドマークポートフォリオの再開発が含まれる。

この再開発により、セントラル地区を変革し、ライフスタイルとビジネス両面を持つ世界クラスの高級小売店の

拠点としての地位を強化する。このプロジェクトには10​​億ドルの戦略的投資が計画されており、

そのうち4億ドルはグループが負担し、残りの6億ドルは高級小売店のテナントにより投資される。

同グループはまた、主力の上海西外灘セントラル事業でも大きな進歩を遂げている。


DFIリテールの戦略進捗

DFIは2024年に新戦略の実施において大きな進歩を遂げた。グループのポートフォリオを簡素化し、

バランスシートの負債比率を下げつつ、ヘルスケアを中心とした中核事業、特にビューティー&コンビニエンス

事業の成長に再投資する。

この枠組みの下、DFIは2024年6月にインドネシアのヒーロースーパーマーケット事業を、

2025年2月に永輝スーパーストアへの投資を処分した。

DFIは、業務効率の向上にも注力した。yuu Rewardsロイヤルティプログラムによりサプライヤーと連携強化する

だけでなく、プログラムからの豊富なデータを活用し、店舗運営の強化、市場シェア拡大と事業全体の

利益率の向上に取り組んだ。


ジャーディン・パシフィック(JP)の戦略進捗

当社の非上場企業 JPグループでは、ポートフォリオの簡素化とグループのB2C事業立て直しに注力した。

次の成長のステージへの基盤を築くためだ。

2023年にグレートビューを売却した後、2024年3月にジャーディン・アビエーションの株式50%を売却、

2024年9月にジャーディン・シンドラーは台湾のエレベーター事業を売却した。


ジャーディン・サイクル&キャリッジ(JC&C)の戦略進捗

JC&Cは、負債を返済し、投資の柔軟性を確保するため、積極的なポートフォリオ管理と規律ある資本配分を

優先した。 2024年にJC&Cはサイアム・シティ・セメントの株式25.5%を売却し、3億4,400万米ドルの資本を

リサイクルした。

また投資増強もした。成長を続ける再生可能エネルギー資産を持つ、efrigeration Electrical Engineering Corporation

(REE)の持ち分を34.9%から41.4%に増加させた。 

REEは高い収益を生み出し、JC&C の持続可能性への取り組みをサポートしている。


ツォンシェン(中升)グループの戦略進捗

中升の2024年の貢献の減少と厳しい市場環境にもかかわらず、同社が強力な市場洞察力と堅実な運営能力を

備えていると考えている。

中国の主要な自動車ブランドと提携しつつ、中升ブランドのアフターサービスと中古車販売に重点を移して

きている。中升はEV分野でも最近有望な進歩を遂げている。

中国の新エネルギー車メーカー大手セレス社と提携し、AITO電気自動車の販売およびサービスを提供している。


マンダリンオリエンタルの戦略進捗

マンダリン オリエンタルは、高級ホスピタリティの将来的な成長に大きな可能性を見出している。

超高級ホスピタリティとしての魅力と規模をさらに高める絶好のポジションにあり、ブランドを強化し、

株主、パートナー、コミュニティに価値を創造する。

マンダリンオリエンタルの戦略の重要な要素は、マネジメント事業の発展にあり、不動産資産の売却により

得た資金をマネジメント事業の成長に使っている。

同グループは、2033年までに世界中で、ホテル、リゾート、レジデンスのポートフォリオを倍増するという

野心的な目標を掲げている。

マンダリン オリエンタルはすでに40軒のホテルの節目を超えた。2024年には、資本効率の向上のため、

3億8200万ドルでパリのホテルとリテールシセルを売却し、同時にホテルと新たな長期マネジメント契約を

結んだ。



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