企業研究|バントリス・エナジー(Vantris Energy Berhad、Bursa:5218)旧サプラ・エナジー
企業研究|バントリス・エナジー(Vantris Energy Berhad、Bursa:5218)
旧・サプラ・エナジー(Sapura Energy Berhad)
マレーシアの石油・ガス開発関連の総合サービス会社
1975年に設立されたサプラ・テレコムズ(Sapura Telecommunications Berhad)が前身
2012年に、Kencana Petroleum Berhadとの合併により、現在の会社に
ペトロナスなどから仕事受け、探鉱・生産、エンジニアリング・建設、および操業・保守を行う
2010年代後半から経営難が続いている
政府系ファンドPNBが40%所有の大株主
2025年8月1日に、バントリス・エナジーに社名変更
東南アジア株式新聞 2025年10月8日
第2四半期(7月31日まで)はEBITDA黒字化、しかしリンギ高で純損失拡大
9月29日の発表:
バントリス・エナジー、2026年度第2四半期の業績改善を報告
Revenue: RM1.06 billion
EBITDA: RM47 million
LATAMI: RM231 million
Unrestricted cash balance: RM2.0 billion
Group Order Book: RM7.1 billion
Vantris Energy Berhad およびその子会社(当社グループ)は本日、2025年7月31日を期末とする第2四半期
(2026年度第2四半期)の業績を発表し、EBITDAが黒字に回復したことを示した。
また、Vantris Energyは9月26日、グループの事業再編における重要な節目となる事業再編発効日(RED)を
達成したことを発表した。
2026年度第2四半期、当社グループのEBITDAは4,700万リンギとなり、前四半期(2026年度第1四半期)の
2億7,500万リンギの損失から改善した。
当四半期の売上高は10億6,000万リンギとなり、2026年度第1四半期の8億100万リンギから増加した。
利益の回復は、複数の掘削リグが新規契約を開始したことなど、掘削部門の貢献強化が主な要因だ。
オペレーション&メンテナンス(O&M)部門は堅調な業績を維持し、
エンジニアリング&建設(E&C)部門は緩やかな回復基調にある。
また、ブラジルの合弁会社Seagems Solutions Ltdaが牽引し、船舶の稼働率向上とチャーター料金の改善により、
合弁会社および関連会社からの利益貢献も改善しました。
当四半期の税引後・少数株主損益控除後損失(LATAMI)は2億3,100万リンギとなり、2026年度第1四半期の4億7,800万リンギの損失から縮小した。
この業績は、主に未実現の為替差損2億3,900万リンギの影響を大きく受けた。対リンギの米ドル安による。
9月26日の再編発効日(RED)は、グループの再建計画の正式な実施日。
財務相の傘下企業マレーシア・デベロップメント・ホールディングス(MDH)から金融支援を受けて、
包括的な債務再編により、旧サプラは借入金を約108億リンギから56億リンギに削減した。
REDから90日以内に、マレーシアの石油・ガス・エコシステムベンダーを含む優先無担保債権者への
未払金の決済を進める。
社名変更、バントリス・エナジーに
8月1日の発表:
SAPURA ENERGY BERHAD IS NOW OFFICIALLY VANTRIS ENERGY BERHAD
Sapura Energy Berhad(SEB)は、企業変革におけるこれまでの努力を反映するため、
正式に社名をVantris Energy Berhad(Vantris Energy)に変更しました。
これは、2025年7月30日に開催された臨時株主総会における株主の承認を受けたものです。
同日に開催された別の臨時株主総会において、株主は当社の財務および事業再生に向けた重要なステップとなる、
当社の事業再編計画(PRP)も圧倒的多数で承認しました。
新社名は、マレーシア企業委員会による社名変更に関する設立証明書の発行を受け、2025年8月1日に発効します。
「Van」は「vanguard」。
「Tri」は、3つのコアバリュー、3つの原則、そして3つの事業の柱。
「S」は、ブランドプロミスの「Solutions Delivered Safely」。
東南アジア株式新聞 2025年7月1日
2026年度第1四半期(4月末まで)赤字に転落、今後の業績改善を予想
サプラ・エナジーは前期、黒字復帰したのだが、4月末までの四半期で赤字に転落した。
会社側は今後の業績改善を予想している。
6月30日発表:
SEB、2026年度第1四半期決算発表:
予測可能な損失により利益は減少、第2四半期からの回復見込み
Sapura Energy Berhad(SEB)およびその子会社は本日、2025年4月30日を期末とする第1四半期
(2026年度第1四半期)の業績を発表した。
当該四半期において、グループは売上高8億100万リンギット、
利子・税金・減価償却前損失(LBITDA)2億7,500万リンギット、
税引後損失(LATAMI)4億7,800万リンギットを計上した。
2026年度第1四半期の業績は、主にアンゴラにおける困難なエンジニアリング&建設(E&C)プロジェクトに
関連する予測可能な損失と、その他のセグメントにおける活動の低下の影響を受けた。
掘削セグメントは、リグのプロジェクト間の移行に伴い、2026年度第1四半期の活動が低下した。
また、操業・保守(O&M)セグメントの活動は季節要因の影響を受けた。
当グループは、進行中のE&Cプロジェクトからの段階的な収益認識と、新たに獲得した契約に基づく
掘削リグの再配置により、今後の四半期で財務成績が改善すると予想している。
2025会計年度(2025年1月末まで)、6年ぶりに黒字
3月27日の発表:
サプラ・エナジーの2025会計年度、黒字に復帰
Sapura Energy Berhad(SEB)とその子会社は本日、2025年1月31日を期末とする会計年度
(2025会計年度)の監査対象外の通期決算を発表した。
これにより、6年ぶりに黒字転換を果たした。
この業績は、グループの事業運営の強靭性と、事業再編および事業再生への取り組みの成果を示すものであり、
長期的な持続可能性に向けた明確な道筋を示している。
2025会計年度の売上高は47億リンギットで、前会計年度比8.9%(3億8,500万リンギット)増加した。
これは主に、エンジニアリング・建設(E&C)および運用・保守(O&M)セグメントの売上高増加による。
グループは、2025年度に5億2,400万リンギットの利子・税金・減価償却前利益(EBITDA)を記録し、
税引き後および少数株主持分後の利益(PATAMI)は1億9,000万リンギットとなり、
2024年度の5億900万リンギットの税引後および少数株主持分後の損失(LATAMI)から大幅に改善した。
東南アジア株式新聞 2025年3月18日
政府の「投資」という呼び名の救済策で一息つく
最近、マレーシアのメディアはサプラ・エナジーについて騒いでいる。
同社は経営難が続き、借金未払いで、マレーシアの石油・ガス業界の多くの事業者を悩ませてきた。
3月11日に政府系MDHが「投資する」と言うニュースが伝わり、債権者たちは安堵、株価は上昇した。
だが、政府系機関以外だれも投資や融資をしないような企業がいつまで生き残れるのか。
地元マレーシアのメディアでも、そんな意見が報じられている。
日本でも自力で生きていけるのか怪しい企業(東京電力など)に政府が支援し続けている例はあるが、
どこの国でも、経営難の会社は一度法的整理をしたほうが産業界の企業ガバナンスに対する意識を
高めるのに役立つ。
サプラ・エナジーが、政府の誤判断の事例とならなければよいが。
3月11日の発表:
マレーシアの石油・ガスのベンダーSEBが返済資金として最大11億リンギットの投資を確保
サプラ・エナジー・ベルハド(SEB)の取締役会は本日、マレーシア・デベロップメント・ホールディングス
(Malaysia Development Holding Sdn Bhd(MDH)と条件付き資金調達契約(CFA)を締結した、
と発表した。
MDHは償還可能な転換社債(RCLS)を額面価値最大11億リンギットまで当社に提供する。
この投資は、SEBの財務再編の取り組みにおける画期的な出来事であり、
長期的な持続可能性のコミットメントを強化した。
財務大臣の特別目的会社であるMDHは、この契約の目的を、SEBグループがマレーシア国内で事業を展開する
マレーシアのサービスプロバイダーに対して負っている債務決済または支払いに限定した。
マレーシアの石油・ガス業界を支援することを意図している。
この資金援助は、構築に何年もかかった、マレーシアの石油・ガスエコシステムにおける
ベンダーの財務安定性を回復するための重要な一歩となる、
これをきっかけに、現地メディアはサプラ・エナジーのニュースを連日流すようになった。
The Edge Malaysia の3月12日の記事:
サプラ・エナジーの株価は政府の11億リンギット注入後に上昇、BIMB証券は希望の光を見る
経営難に陥っていた石油・ガスサービス会社サプラ・エナジーBhd(KL:SAPNRG)が政府から
10億リンギットを超える救済措置を確保したことを受け、同社の株価は3カ月以上ぶりの高値に上昇した。
BIMB証券のアナリスト、アジム・ファリス・アブ・ラヒム氏はエッジ紙に、
投資サイクルの好転により業界が小休止している時期にこのライフラインは極めて重要だと語った。
債務再編計画が承認され、追加資金も確保されたことから、同社の回復の道筋は明確になったと同氏は述べた。
(中略)
サプラ・エナジー株は水曜日に、2024年11月以来の高値である4.5センまで上昇した。
株価は正午休憩中に4セントで止まり、同社の時価総額は7億3500万リンギットとなった。
負債を抱える同社は水曜日、財務省が一定の条件の下で11億リンギット相当の償還可能転換社債株式を
引き受けることに同意したと発表した。
この資金は、サプラ・エナジーがベンダーに負っている債務の返済にのみ充てられる予定だ。
政府は、単なる救済ではなく「投資」の側面を強調している。
The Edge Malaysia の3月13日の記事:
11億リンギットの資本注入の前提条件として追加のデューデリジェンスを実施へ — 首相
アンワル・イブラヒム首相によると、資金難に陥っているサプラ・エナジー社(KL:SAPNRG)は、
政府による11億リンギットの資本注入と再編の前提条件として、追加のデューデリジェンス手続きを受ける
予定だ。
同氏は、デューデリジェンスの調査結果は証券委員会などの関係執行機関と共有され、
いずれかの当事者に対して何らかの措置を講じる必要があるかどうかが判断されるだろうと述べた。
財務大臣を兼務するアンワル氏は、この取り組みは、108億リンギットの負債と15億リンギットの
未払い貿易請求書に対処することを目指した同社の実務指針17の再編の一環として完了した監査プロセス
に加えて行われるものであると述べた。
アンワル首相や同政権の閣僚は「救済ではない」と強調している。
だが、今どきクーポン2%で巨額の資金を貸すことを「投資」と呼ぶのはきわめて難しい。
今のマレーシアなら、安全性の高い投資でも3%〜5%のリターンがある。
サプラにはすでに政府の支援が入っており、大株主は政府系投資会社ペルモダラン・ナショナル社
(PNB)であり、そのトップはアンワル首相だ。
また、マレーシア流の政府の都合で特定の会社を保護する例に見られても仕方がないだろう。
一方で、サプラ・エナジーから仕事を受けているベンダーたちは政府支援を歓迎しているのは事実だ。
The Star の3月15日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
政府によるサプラ・エナジーへの11億リンギット投資は「希望の光」だとベンダーら
政府によるサプラ・エナジー社(SEB)への11億リンギットの投資は、約1,000万リンギット超に上る未払い金
による深刻なキャッシュフローの課題に取り組んでいるベンダーにとって重要なライフラインであり、
地元の石油・ガス・エコシステムに待望の推進力をもたらすものである。
この記事では、サプラに債権を持つ取引業者たち数人の声を拾っている。
キーフィールド・インターナショナル社のCEOモハメド・エルワン・アフマド氏はベルナマ通信に対し、
未払い債務が同社に深刻なキャッシュフロー問題を引き起こしたと語った。
主な原因は、新型コロナウイルス感染症の流行がピークを迎えていた2021年後半にSEBからの支払いが滞った
ことだ。
「支払い義務を果たさなければならず、大変でした。しかし、私たちは歯を食いしばって頑張り、
人員削減に頼らなくて済んだことを嬉しく思っています」
「そして、この支払い不履行のせいでプロジェクトが遅れないように、なんとかやりくりしなければ
ならなかった」と彼は語った。
彼は、関与した金額が膨大で、影響を受けたベンダーの数が多いことを考慮すると、
SEBへの政府の介入は時宜を得たものであり、ベンダーの存続のために必要であったと信じている。
「(今回の資金注入により)サプライチェーン全体において待望の信頼が回復されるだろう。
すべてのサプライヤーはSEBと協力し、地元の石油・ガス産業の発展に貢献し続けるだろう」
と同氏は付け加えた。
キーフィールド・インターナショナルは、石油・ガス開発に関連する船舶のサービス会社だ。
サプラ・エナジーの債権者は貸した金が戻るため、歓迎するのは当然だ。
サプラ・エナジーとの取引で今後も稼げると思っているなら、なおのことだろう。
マレーシア内では、別の見方もある。
The Edge Malaysiaの3月17日の記事;
別の見方: サプラ・エナジー: 次々とお金を無駄にした例
(前略)
Sapura Energy Bhd (KL:SAPNRG) は、基礎が弱い企業にさらに資金を投入しても問題が解決しないという例です。
同社の財務状況は、債権者が債務再編計画を承認したことと政府からの11億リンギットの注入により
大きく改善しているが、新規契約に入札できるほど強力ではない。
ペトロナスのブミプトラ所有企業優遇政策のおかげで国内石油・ガス(O&G)産業の覇者だった
旧サプラ・エナジーが元の姿に戻る可能性は低い。
銀行やベンダーは、支払いを受けられないことを恐れて、取引する前に何度も考えるだろう。
政府が、わずか2%のクーポンを支払う転換社債の形で11億リンギットを注入する理由は、
ブミプトラが大多数を占める企業であるベンダーを救済するためである。
時間が経つにつれて、別のブミプトラ石油・ガス業界のリーダーが出現し、
ベンダーが同じ問題に直面する可能性がある。
地元の石油・ガス業界の企業は甘やかされている。
ほとんどの契約は、ブミプトラが過半数を所有し、資産に投資している企業に与えられる。
この記事によると、サプラ・エナジーは2014年6月の石油危機以来ずっと、経営を安定させるのに苦労しているという。
PNBは、2018年9月に割当増資を引き受け26億7000万リンギットを支払った。サプラの最大の債権者がPNBの優良投資先メイバンクだったため、サプラ救済策と見られた。
また、その頃まで、サプラの経営陣にはマハティール元首相の息子などブミプトラ(マレーシア原住民)系の産業界で有力な人物が参加していたとも書いている。
12月12日の発表:
2024年10月末までの2025年度第3四半期(同社の会計年度は1月末までの1年間)業績
Quarterly rpt on consolidated results for the financial period ended 31 Oct 2024
10月末までの四半期(2025年度第3四半期)で、前年との対比を見ると、
この会社の業績不振がよくわかる。
税引き前利益で見ると、前年は6300万リンギットの利益を出していたのに、
2025年度第3四半期は2億6100万リンギット(約222億5500万円)の赤字になっている。

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