アジアPE、2025年第1四半期は「比較的好調」、第2四半期は米関税政策が暗雲
東南アジア株式新聞 2025年4月26日
アジアPE、2025年第1四半期は「比較的好調」、第2四半期は米関税政策が暗雲
2025年第1四半期のアジアPE(プライベート・エクイティ)市場は、日本でのPE投資が活発だったため、比較的好調なスタートとなった。
第2四半期以降には、米関税政策の影響が暗雲となっている。
たとえば、以下のような事情により、PEファンドの活動は控え気味になる。
上場市場に勢いがなく、投資した案件の出口(イグジット)戦略を描きにくい
同様に、投資候補企業の価値を測定しにくい
だが、東南アジアには強気の市場もあるようだ。
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KPMGのPEレポート |
KPMGの4月25日のレポート:
aspac - Q1’25 Pulse of Private Equity
2025年第1四半期、ASPAC PEディールは266件、総額375億ドル
このレポートは以下の内容を書いている。
日本におけるPE投資が2025年第1四半期のASPACの業績を押し上げ
アジア太平洋地域のPE投資家にとって、エネルギーは依然として大きな焦点であり、デジタルインフラが関心領域として浮上
中流階級の増加がアジア太平洋地域におけるPE投資の大きな原動力
継続ファンドの勢力拡大に伴い、ASPACでのイグジット活動はさらに鈍化
375億ドルのうち、計約200億ドルのディールが日本、約40億ドルが中国、約53億ドルがオーストラリアで生じたそうだ。
日本での活発なPE投資のおかげで、「わずか226件の取引件数にもかかわらず、比較的好調な年初スタート」だった。
当四半期の目立ったPE投資は、いずれも日本市場で行われた。
ベインキャピタルによるヨーク・ホールディングスの本社および小売事業の54億ドルの買収、JICキャピタル、三井化学、大日本印刷を含むコンソーシアムによる新光電気工業の非公開化、ベインキャピタルによる田辺三菱製薬の46億ドルの買収だった。
2025年第2四半期に注目すべきトレンド
(前段で「日本はPE活動が大幅に加速する好機」と述べた後)
アジア太平洋地域全体では、地政学的な要因が2025年第2四半期の投資判断を左右すると予想される。特に米国の関税政策は大きな懸念事項であり、常に変化する政策は、明確で安定した予測可能な関税制度を導入し、それに応じて価格設定・評価することよりも、より大きな課題と見られている。
不透明感の高まりを受け、PE投資家は既存のポートフォリオを見直し、潜在的な影響を評価し、緩和戦略を策定している。また、多くのPE投資家は、米国との重要な輸出入に関わる保留中のディールを、より確実性が高まるまで保留にしています。場合によっては、状況が改善するまでイグジット活動を延期する動きもあります。
(以下略)
少し前に発表されたベイン&カンパニーの東南アジアに絞ったPEレポートでは、同地域のPE投資が急回復し、2024年に160億ドルに達した、と言っている。
ベイン&カンパニーの4月11日の発表:
東南アジアのプライベートエクイティ市場、今後さらなる不確実性に備え、2024年に急回復したけれども
東南アジア(SEA)のプライベートエクイティ(PE)市場は2024年に大幅な回復を見せ、取引額は2023年比60%増の160億ドルに達し、アジア太平洋地域の大半の市場とほぼ同水準となった。しかしながら、投資家は今後の不確実性が高まることに備えなければならない。
(中略)
「当社の調査によると、東南アジアの投資家は、出口戦略の難しさ、資金調達の課題、そして質の高いディールフローについて懸念を抱いています」と、ベイン・アンド・カンパニーの東南アジアPEプラクティス責任者であるウスマン・アクタル氏は述べた。「最近発表された関税は、東南アジアにおけるディールメイキングに新たな複雑さをもたらしています。まず、クライアントの皆様は、関税が同地域におけるポートフォリオに及ぼす一次的および二次的な影響を積極的に見極めようとしていることがわかります」
マレーシアのPE業界では、明るい兆しを見ている専門家もいる。
The Star の4月21日の記事:
PE投資における明るい兆し
Bright spots in private equity deals | The Star
米国の関税導入と、それに伴う世界経済の不確実性によって経済情勢は厳しくなっているものの、専門家によると、マレーシアのプライベートエクイティ投資には明るい兆しがあるという。
この記事では、大手銀行や会計事務所などのPE担当者など数人に取材している。
マラヤン・バンキング(メイバンク)のセクター別専門・プライベートエクイティ顧客担当マネージングディレクター、ラジブ・ヴィジェンドラン氏は、StarBizに対し、アジアに特化したプライベートエクイティファンドの「ドライパウダー(手元資金)」は依然として非常に高く、企業のゼネラル・パートナーは依然として資本投入のプレッシャーにさらされていると語った。
ドライパウダーとは、企業やプライベートエクイティファンドが魅力的な投資機会が訪れた際に投入できる手元資金のことを指す。
国内では、Retirement Fund Inc(KWAP)傘下のDana PemacuとKhazanah傘下のDana Impakが新たに設立したファンドも初の投資を予定しており、これらはマレーシアにおけるプライベート・エクイティ活動の強力な推進力となるでしょう。
(中略)
メイバンクは積極的に提案と実行を行っている案件がまだ数多く残っており、2025年もプライベートエクイティ案件にとって好調な年になると予想しています。
昨年のプライベートエクイティ案件の総額は約20億米ドルで、最大の案件はアイランド病院の約42億リンギットでの売却だった。
もう1つ、やや楽観的な意見を引用する。
デロイト マレーシアのM&Aパートナーであるヤップ・コン・メン氏は、関税と地政学的リスクによる不確実性が続くことで、M&Aの件数は減少するだろうと述べた。
それにもかかわらず、メン氏は2025年にはPE案件が増加すると予想しており、特に輸入物資や原材料への依存度がほとんどないか全くなく、国内消費が主な収入源となっている企業との取引が活発になると見ている。
「消費財、工業製品、ヘルスケアといったエバーグリーンセクターでは、引き続きM&A取引が期待できます。
これらのセクターでは、特に地域展開の可能性を秘めた企業など、現地市場で高い競争優位性を持つ企業への投資機会が今後も見込まれるでしょう」とヤップ氏は付け加えた。
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