トランプ相互関税が4月5日発効、反撃かディールか、迫られる選択

 

東南アジア株式新聞 2025年4月3日

トランプ相互関税が4月5日発効、反撃かディールか、迫られる選択

昨日、「ダーティ15」と通称された「相互関税」対象国・地域について書いたが、実際には、トランプ政権は57か国・地域を特定してそれぞれ別の税率を課した。

東南アジアのカンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマーは40%台の高い関税が課された。

タイとインドネシアは30%台、マレーシアとブルネイは、日本と同じ、24%だった。

特定されなかった国・地域については最低税率10%となっている。


アジアの株式市場では、大幅下落が第1日目の反応となった。

3日の日経平均株価は前日比989円94銭(2.8%)安の3万4735円93銭で取引を終えた。

今年これまで一人勝ちの好成績を続けてきた香港ハンセン指数でさえ、1.52%安だった。

東南アジアの各市場も売り優勢で、市場代表指数は軒並み下げた。


相互関税は、4月5日に一律10%が発効、9日に57特定国・地域の税率が発効する。


中国は反撃の意思を表明し、米中関税戦争の様相を呈してきた。

だが、多くの国は米国とのディール(取引)を選びそうだ。



  
米ホワイトハウス公式サイトの相互関税発表
米ホワイトハウス公式サイトの相互関税発表


米ホワイトハウスの4月2日(東アジア時間3日朝)の発表:

相互関税による輸入規制、米国の年間の物品貿易赤字が大規模かつ継続的に増加している原因の貿易慣行是正のため

Regulating Imports with a Reciprocal Tariff to Rectify Trade Practices that Contribute to Large and Persistent Annual United States Goods Trade Deficits

(前略)

私、アメリカ合衆国大統領ドナルド・J・トランプは、二国間貿易関係における相互性の欠如、異なる関税率と非関税障壁、そして米国の年間物品貿易赤字が長期化していることからもわかるように、国内賃金と消費を抑制する米国の貿易相手国の経済政策などの根本的状況が、米国の国家安全保障と経済に対する異常かつ並外れた脅威となっていると認識している。この脅威の源は、主要貿易相手国の国内経済政策と世界貿易システムの構造的不均衡という、米国外に全部または大部分ある。私は、この脅威に関して国家非常事態を宣言する。

(中略)

第 2 項:相互関税政策。米国の政策は、本命令に別段の定めがない限り、すべての貿易相手国からのすべての輸入品に追加の従価税を課すことによって、世界貿易の流れのバランスを取り戻すことだ。すべての貿易相手国からのすべての輸入品に対する追加の従価税は 10 パーセントから開始し、その後すぐに、この命令の付属表 I に列挙されている貿易相手国に対する追加の従価税は、この命令の付属表 I に規定されている税率で増額される。これらの追加の従価税は、上記の基本的な条件が満たされ、解決され、または緩和されたと私が判断するまで適用される。

(以下略)




付属の税率表:

ANNEX I Countries and Territories Reciprocal Tariff, Adjusted Algeria 30% Angola 32% Bangladesh 37% Bosnia and Herzegovina 36% B


アジアの主な国・地域の税率

国・地域

相互関税率(%)

中国

34

(+20対中関税)

カンボジア

49

ラオス

48

ベトナム

46

ミャンマー

45

タイ

37

インドネシア

32

台湾

32

インド

27

韓国

26

日本

24

マレーシア

24

ブルネイ

24

フィリピン

18

シンガポール

10

最低税率




反撃か、ディールかーー選択する国々


CNNの4月3日の記事:

中国はトランプ大統領の「脅迫的な」関税に対抗すると誓う、世界貿易戦争が激化

China vows to counter Trump’s ‘bullying’ tariffs as global trade war escalates | CNN Business

中国は、ドナルド・トランプ大統領が米国の1世紀にわたる世界貿易政策の抜本的な見直しの一環として、米国への輸出品に新たな大型関税を課すと発表したことを受けて、反撃すると誓った。

トランプ大統領は水曜日、米国への中国からの輸入品すべてに54%の関税を課すと発表した。これは、両国関係の大幅なリセットを推し進め、世界最大の2つの経済大国間の貿易戦争を激化させる動きだ。

「中国はこれに断固反対し、自国の権利と利益を守るために断固とした対抗措置を取る」と中国商務省は木曜日の朝の声明で述べた。


中国の場合、2月に、対中トランプ関税発効とともに、米国からの液化天然ガスや大型エンジン自動車に10 -15%の関税を課した。今度も何か米国からの輸入品に関税で報復するのかもしれない。


だが、中国のようにはっきりと反撃できる国は多くはない。

東南アジアの国はたいてい何らかのディールで米国から関税免除または引き下げを獲得しようと努力することになるだろう。


The Nation Thailand の4月3日の記事:

米国がタイに課す36%輸入関税を心配する必要はない:首相

No need to worry over US imposing 36% import tariff on Thailand: PM

ペートンタン・シナワット首相は、米国がタイの輸入品に36%の関税を課すことについて心配する必要はない、この問題に対処するための措置はすでに講じられていると述べた。これには輸入関税の再構築や交渉チームの結成などが含まれており、交渉は好ましい結果をもたらすと確信している。彼女は、この措置がタイのGDPに影響を与えることはないと断言した。

タイ製品に36%の輸入関税を課すという米国の決定(ASEANで最も高い税率の1つ)に関して、ペートンタン首相は、タイは米国との輸入税構造を調整し、交渉のためのタスクフォースを設立する必要があると説明した。


The Edge Malaysia の4月3日の記事

マレーシアは報復せず、関税について米国と交渉する - マレーシア投資貿易産業省

Malaysia won’t retaliate, will negotiate with US on tariffs — Miti

マレーシアは木曜日、第3位の貿易相手国・米国に対して追加関税で報復するのではなく、交渉すると発表した。

投資貿易産業省(MITI)は、米国が昨夜発表した相互関税を真剣に受け止め、自由で公正な貿易を維持する解決策を模索するため米国当局と積極的に交渉している。マレーシアはまた、米国との貿易関係を強化することにも取り組んでいると同省は述べた。

「このアプローチに沿って、マレーシアは報復関税を検討していない」とMITIは声明で述べた。



The Straits Timesの4月3日の記事:

米国の新たな関税はシンガポールの企業に打撃を与える可能性が高く、半数近くがコスト転嫁すると回答:調査

New US tariffs likely to hurt firms in Singapore, nearly half say they will pass on costs: Survey | The Straits Times

シンガポールの米国商工会議所(AmCham)が実施した速報調査によると、シンガポールで調査対象となった企業のほぼ半数、つまり45%が、米国の新たな関税によるコスト増を顧客に転嫁する計画だという。

その他の企業は、サプライチェーンを多様化して高関税市場への依存を減らすか、適応が遅い競合他社から市場シェアを獲得する機会をつかむことで対応する意向だと、シンガポールのAmChamは4月2日に発表した。

調査対象となった36人の回答者のうち3分の2以上が、既存の貿易措置よりも、米国の輸入品に課税している国に対する潜在的な相互関税を自社のビジネスにとって最大の懸念事項として挙げた。


相互関税への懸念とは、東南アジア地域の経済成長が鈍化することへの心配だろう。

最低関税率を適用されたシンガポールは、むしろ他の国(でのシンガポール企業の事業)のことを心配する立場にあるようだ。



インドネシア国営アンタラ通信は、4月3日、米相互関税に対するプラボウォ政権高官の発言を報道せず、以下のような記事を載せた。

米高率関税の中、インドネシアはBRICSとの貿易を強化すべき:専門家

Indonesia should boost trade with BRICS amid high US tariffs: Expert - ANTARA News

経済学者で資本市場の専門家ハンス・クウィ氏は、米国が複数の国に対して輸入関税を引き上げていることを受けて、インドネシアがBRICS加盟国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)との貿易関係を強化することを推奨した。

同氏は、BRICS加盟国との貿易関係を強化することは、米国が課す高輸入関税の中で新たな代替収入源を見つけるための戦略的な動きであると詳しく述べた。

「インドネシアは、米国による高関税の後、新たな収入源を見つけるためにBRICS諸国との貿易を強化する必要がある」と、クウィ氏は木曜日にANTARAの取材に対し述べた。


インドネシアはこれまで低価格攻勢をかけてくる中国の衣類製品に高関税を課し、米国のアップルやグーグルが投資計画を履行しないとして製品販売を停止するなど、地域大国として独自の関税・貿易政策を行ってきた。

プラボウォ政権が、どんな米相互関税対策を打ち出してくるか注目される。



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