インドネシアEV用電池、韓国LGが撤退、しかしプロジェクトは継続へ
東南アジア株式新聞 2025年4月24日
インドネシアEV用電池、韓国LGが撤退、しかしプロジェクトは継続へ
4月22日に、インドネシアでの電気自動車(EV)用電池プロジェクトから韓国LGエネルギーソリューション(LGES)が撤退するというニュースが流れた。
2022年にLGESが主導的役割を果たしたプロジェクトで、インドネシア国営企業を含めた数社のコンソーシアムで77億ドルもの投資をし、インドネシアに材料調達から完成品まで一貫したEV用電池製造プロセスの拠点を作る計画だ。
国営企業が参加したプロジェクトを途中で投げ出した韓国LGに対し、インドネシア政府がなんらかの罰を与えるのではないかとウォッチしていたが、今のところそんな情報はない。
どうもプロジェクトは継続されるようだ。
日本経済新聞の4月22日の記事:
LG、インドネシア電池材料計画から撤退 EV市場減速で投資見合わず - 日本経済新聞
韓国の電池大手LGエネルギーソリューションは、インドネシアでの電気自動車(EV)向け電池材料の生産計画から撤退すると明らかにした。世界的にEV市場が減速しており、十分な投資リターンが見込めないと判断した。
撤退を決めたのは、インドネシアでニッケル鉱山や製錬所、前駆体などの材料工場を立ち上げる計画。LGエネが2022年4月に発表した。LGエネは声明で「市場の状況や投資環境など様々な事項を考慮し最終的に撤回する」とした。
同社を中心に、インドネシアの国営ニッケル鉱山会社アネカ・タンバンなどでつくるコンソーシアムで投資する計画だった。韓国の聯合ニュースによると、投資額は77億ドル(約1兆800億円)を見込んでいた。
LGES撤退を受けてのインドネシアからの情報を探していると、以下のような記事を見つけた。
プロジェクトの参加メンバーは韓国、中国、インドネシアの企業群だ。
エネルギー・コモディティの英情報メディア Argus の4月22日の記事:
South Korea's LGES exits Indonesia's $8.4bn EV project | Latest Market News
この巨大プロジェクトは2019年から計画されていた。LGES、LGケミカル、LXインターナショナル、ポスコ・フューチャーMなど複数の韓国企業で構成されるLGコンソーシアム、中国の大手コバルト精錬会社でニッケル・コバルト・マンガン前駆体生産者のファーユー(華友)、インドネシア国営の鉱業会社アネカ・タンバン(アンタム)、そしてコンソーシアム・インドネシア・バッテリーが関与している。
コンソーシアムは、「タイタン・プロジェクト(Titan Project)」というインドネシア政府の事業の重要部分を担っているらしい。
国営アンタラ通信の4月22日の記事:
LGの撤退はインドネシアのEVバッテリー目標の達成を遅らせる可能性がある:アスペビンド
LG's withdrawal can delay Indonesia's EV battery goal: Aspebindo - ANTARA News
インドネシア・エネルギー・鉱物・石炭供給協会(Aspebindo)のファトゥル・ヌグロホ副会長は、LGが「タイタン・プロジェクト」から撤退したことで、インドネシアが電気自動車(EV)用バッテリーのハブとなるという目標達成が遅れる可能性があると述べた。
ヌグロホ副会長は火曜日、この場で「LGエナジーソリューション(LGES)とインドネシア・バッテリー・コーポレーション(IBC)の共同事業であったタイタン・プロジェクトの中止により、ニッケルベースのEV用バッテリーの生産目標達成が遅れる」と述べた。
この記事によると、タイタン・プロジェクトは、EV用バッテリーの「エンドツーエンド・バリューチェーン」の構築に取り組んできた。原材料調達から前駆体製造、正極材料、そしてバッテリーセル製造に至るまでの全プロセスを網羅することを目指していた。
つまりは、世界最大のニッケル生産国であるインドネシアにおける国家バッテリー・エコシステム開発の基盤となることが期待されていた。
LGESの撤退により、ニッケルを高品質の電池材料に加工するために必要な技術移転が遅れる可能性がある。
インドネシア政府は最近、アップルやグーグルが約束した投資計画を履行しないという理由でそれら米国企業の最新製品のインドネシア市場での販売を禁止した。
そのくらいの制裁を韓国LGに与える可能性があると思うのだが・・・。
インドネシアの Tempo の4月23日の記事:
バリル・ラハダリア・エネルギー鉱物資源大臣は、LGエナジーソリューションがインドネシアの電気自動車(EV)プロジェクトから撤退したことについてコメントした。
バリル大臣によると、韓国企業の撤退に代わり、中国からの新たな投資パートナーがプロジェクトに参画する。
「このグランドパッケージの開発は、概念的には変更ありません。インフラと生産計画は当初のロードマップ通り継続されます。LGは今後関与せず、ファーユー(Huayou)が後任となります」と、バリル大臣は2025年4月23日(水)の書面声明で述べた。
大臣は、インドネシアの国民や企業関係者に対し、LGESがEV投資から撤退することについて心配する必要はないと強調した、という。
また、この記事では、LGESについても書いている。
LGエナジーソリューションの幹部は、「市場環境と投資環境を鑑み、プロジェクトからの撤退を決定しました」と述べた。
しかし、LGエナジーソリューションは、現代自動車グループとの合弁会社であるヒュンダイLGインドネシア・グリーンパワー(HLIグリーンパワー)のバッテリー工場を含め、インドネシアでの事業は継続すると付け加えた。
LGESがインドネシアで行っている他の事業を継続しているため、インドネシア政府が制裁を見送ったということだろうか。
「中国からの新たな投資パートナーがプロジェクトに参画する」と大臣が言っている。
技術面のLGSEが抜けた部分はファーユーが担当し、資金面では中国企業を増やして対処する、ということだろうか。
タイタン・プロジェクトについては今後も注目していきたい。
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